教会からの贈り物
廊下をしばらく歩いて入った部屋には、真っ白な服に身を包んだおばあちゃんとおじいちゃんが居た。
2人の服には紫の刺繍がしてあるだけ。
これが教会の制服なのかな?
清潔そうな服を着るのは元の世界と一緒なんだな。
「この度は誠におめでとうございます。
新たな命の誕生、教会を代表して心から嬉しく思います」
「サチェル夫婦!?まさかお祝いに来てくださったのですか!?」
「我が子のためにありがとうございます」
どうやらこの2人は夫婦らしい。
しかも偉い人っぽい。
あんまりこの2人が来ることはないってことなのかな?
「いえいえ、私達も話を聞いた時からこの日を心待ちにしておりましたからな。
産まれたと聞いた時は年甲斐もなくはしゃいでしまいました」
「早く行くために朝の祈りの時間を半分にしようと言ったのに猛反対されましたのよ。
馬車や準備を急がせるくらいならそちらの方がいいとおもわない?」
最初は結構、空気がピリピリしていたから緊張したけど、そんなことは無かったみたい。
2人ともクシャッとしたすごく優しい笑顔を浮かべて私達を見ている。
そのまま席に座ってゆっくりとした時間が流れる。
両親は楽しそうにサチェル夫婦と話しているし、私達はいつの間にか用意されていたベッドに戻されて、傍にはサチェル夫婦から貰ったオルゴールが流れている。
話を聞いていると、この国では子供が産まれた時の教会からの贈り物はオルゴールと決まっているらしい。
子供が産まれた時はオルゴールと共に両親のメロディーを合わせた音楽を贈り、その後は誕生日事に教会に行き、祈りを捧げる。
そうすると子供の経験してきたものによってメロディーが変わるという。
話を聞いていても正直どうしてメロディーが変わるのか全く分からないけれど、そうやってメロディーを親から子へと紡がれていくそうだ。
だからこそ、この世界に1つとして同じものはないらしい。