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あをノもり  作者: 小野島ごろう
23/125

文月6

 黄色いがま口の絵。その横に「どこにあった?」と書いてある。


 祢子はにっと笑った。これは簡単だ。



 紙切れをポケットに入れて、歩きはじめる。




 お地蔵様の小さい祠にはすぐに着いた。

 一応、前にしゃがんで軽く手を合わせてから、祠の中を覗いてみる。


 やっぱり、中じゃないみたい。

 お財布は、裏に落ちていたから。


 立ち上がって裏側にまわると、祠の裏に、白い紙切れが貼ってあった。

 端っこに小さくトドの絵が描いてある。




 さて、次はどこかな。



「水の代わりに車が流れる川を高く渡れ」

 今度は、言葉だけだ。




 車が流れる川?

 祢子は考え込んだ。


 増水した川に、車がゆっくりと流されていく光景を、テレビで見たことがある。


 いや、たぶんそれは関係ない。

 「水の代わりに車が流れる」だから、水は流れていない。車だけが流れる川。

 そして、その上を高く渡る。



 わかった。


 祢子は、近くの歩道橋に向かった。





 この歩道橋は、滅多に渡ったことがない。


 渡った先には、公民館と運動広場がある。

 地域の集会とか、スポーツ大会がある時に、近くの小学生たちと一緒に来たことはあった。




 歩道橋の階段に足をかけ、のぼっていく。


 鉄とコンクリートでできた古い歩道橋は、こんなに晴れた日でもなんとなく湿っぽくて陰気臭い。


 下を車が通るたびに、歩道橋はかすかなうなり声を上げ、全身で震える。


 錆ついた手すりについ触ってしまった。

 手のひらについた嫌な臭いと赤黒い錆かすを落とそうと、祢子は両手を払ったり擦ったりした。



 

 引き返そうか。

 こっちの地域はよく知らないし、迷ったら帰れなくなるかもしれない。




 そう思っているうちに、歩道橋を渡り終えた。



 さて、次のヒントはどこにあるのだろう?


 祢子は気持ちを切り替えて、周りを見回した。



 両脇に雑草が伸びた歩道が、祢子の前後に続いているばかりだ。



 歩道橋を渡ったらすぐに、次のなぞなぞがあるはずだ。

 ないとおかしい。どこに行けばいいのか、わからなくなる。


 今までの感じからすると。

 たぶん、ここら辺かな。



 祢子は振り返り、歩道橋の手すりや欄干の隙間を、念入りに探した。

 何もない。


 歩道橋を何度も行ったり来たりしてみた。

 何もない。



 歩道橋の裏側かも。

 車道に近づいて、首を伸ばして見上げた。



 道路の植え込みや、街路樹の中に目をこらしてみたりもした。




 歩道橋じゃなかったのかな。

 答えを間違ったのかな。



 それとも、ここの歩道橋じゃなくて、もっと向こうの、出来立ての新しい歩道橋?




 太陽がじりじり暑い。汗がだらだら流れてくる。のどがカラカラだ。



 どうしよう。どうしたらいいんだろう。


 もう帰ろうか。帰ってもいいかな。





「姉ちゃん、何してるの?」

 健太の声に、祢子はびっくりして飛び上がった。


「健太? なんでここに?」


「友だちの家に行く途中。姉ちゃんは?」

「ええと、探し物」


 慌てて答えて、健太が使えるかもと思いつく。


 指で小さく四角を作って、

「このくらいの、紙切れ、どこかで見なかった?

ええと、こういうの」



 祢子は、今までの紙切れをポケットから出して、健太に見せた。

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