表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あをノもり  作者: 小野島ごろう
11/125

水無月5

「かーこ、危ないよ。傘を川に入れちゃだめだよ」


 祢子は、少し離れたところから必死に呼びかけた。


 かーこは黙って、自分のつま先を眺めている。



「ねえ、かーこ、こっちにおいでよ。一生のお願いだから」

 もしもかーこが川に流されたら。


 気をもみながら、祢子は叫んだ。



 かーこがのろのろと振り返ると、ゆっくりゆっくり、祢子の横に戻って来た。

 祢子はほっとした。


「なーに泣いてんの。じょうだんに決まってるじゃん。ばっかみたい」


 それから二人は、黙って並んで歩いた。

 ごうごうと水音だけが鳴っていた。




「祢子、見てて」

 また少し行くと、かーこが急に走り出した。


「待って、かーこ」


 かーこは、何かを見つけた猟犬のように一目散に走って行く。

 足の長いかーこは走るのも速い。


 見る間に目標に接近すると、

「アル中、アル中、」

 大声で囃したてながら走り去った。



「かーこ……」


 かーこの後ろ姿は、もう豆粒ほどになった。


 祢子は、絶望した。


 かーこはなんであんなにいじわるするんだろう。ひどい。かーこなんて、かーこなんて。



 あの財布事件から、おじさんに会わないように、びくびくしながら気をつけてきたのに。

 何もかもおしまいだ。



 祢子は、のろのろ歩いた。


 のろのろ歩いている間に、おじさんがどこかに行かないかな。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ