如月4
祢子は三学期に、念願の図書委員になっていた。
もう一人の図書委員は、そりかわくんだ。
図書委員の仕事や委員会の後には、ついでに何か本を借りて帰る。
そりかわくんも、本を借りる。
祢子が『アンの娘リラ』を借りている時に、そりかわくんが借りている本をちらっと見たら、『三銃士』の上巻だった。
ずいぶんと分厚い。意外と読書家なんだ。
祢子は、そりかわくんに話しかけた。
「ねえ、それ、おもしろい? 『三銃士』って、なに? 銃を持った人が三人?」
「読む前だからわからない」
そりかわくんはそっけない。
「それはそうだけど。おもしろかったら教えてね。読んでみたいから」
「……気が向いたらな」
「わたしのは……たぶん、男子は読まないかもしれないね」
アンの娘のことなんて、男子にとってはおもしろくないだろう。
「べつに」
そりかわくんは、ちょっと気分を悪くしたような声を出した。
「べつに、男子だから女子だから、こういうのを読むべきだとか、そんなの読んではおかしい、ってのは、そっちのほうがおかしいよ。
読みたいものを読めばいいんだ」
「そうよね!」
祢子はちょっと感動した。
「わたしも、そう思う!」
そりかわくんは、ちょっと身を引いて、そっぽを向いた。
男子でも気が合えば友だちになれるのだ。
こずえちゃんもいい友だちだけど、ちょっと違う感じの友だち。
祢子はうきうきした。