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僕だけの映画館

作者: 厨房

息抜きで書きましたので期待しないでください。

今日は久しぶりに映画を観に来ている。

とくに観たい作品があった訳ではなかった。

いや、観に来たというと語弊があるか。

学校からの帰り道、普段通らない

昭和の匂いが漂う横道に入ってみた。

そんな折、ポツポツと小さな水の塊が

身体に触れる。雨だ。

段々と大きく、強くなっていく水の塊に

嫌気がさした僕は近くの古ぼけた小さな映画館に入った。

未だにフィルム映画を放映しているこの映画館は、

賑わいこそなかったが映画好きが集まっているようだった。

雨が止むまで厄介になるつもりだったが

雨は強くなるばかり。

ならばと思い上映時間の近い映画のチケットを購入し、

トイレを済ませるとシアター内に。

中央後ろ側の席に座る。

なにかでここの席が良いと聞いたからだ。

シアター内に自分以外の客はいない。

「貸切か…」

なんだか特をした気分になる。

今だけはたった1人。僕だけの映画館だ。

「チッチッチッチッ」

映写機からフィルムを巻き上げる特徴的な音が響く。

少々荒さの目立つ映像は、初めて観た映画にも関わらず

思い出の中の映像のような懐かしさを感じ、

デジタルの映画とは違った良さがあった。

正直内容はそこまで把握できていない。

それよりもこの映画館の心地よさと映像の懐かしさに

酔いしれていた。

映画館を出ると雨はやみ、夕焼けが空を包んでいた。

いつかまたこの映画館に来てあの感覚を味わおう。

僕はそう決意した。

しかし、次に来た時その映画館は潰れていた。

熱心なファンはいたが、維持・管理費が工面できなかったらしい。

そして、僕が訪れた日が閉館の前日だった。

こんなことなるならあの日の翌日も訪れればよかった。

悔やんでももう遅い。またいつか観たいものだ。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

それから15年後、僕はフィルム映画も上映する映画館を作った。

客もポツポツとおり、あの時の映画館の雰囲気に近づいたと思う。

一日の営業を終え1人でシアター内に入る。

あの日は1日限りの僕だけの映画館だったが、

今、この映画館は僕だけの映画館だ。

実はフィルム映画観たことないんだよな…

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