第3話 褒美褒美ほうびぃィィィ!!!
また遅くなっちまった、すまねぇ
パキンッと音をたてて凍る。日があたり、琥珀の虫入りのように、中に執事が入っている。この氷は約1万年は溶けず、火を用いても溶けることはない。特定の魔法しか氷を溶かす事は出来ない。中に入っている身体はゆっくりと凍傷に蝕まれていて、5分程放置してしまうと中の執事は死んでしまうだろう。
「お、おい!おい!カルクル!?」
執事の名前だろうか?
王が必死に呼んでいる。だが、氷塊の中にいる執事には届かない。
今、この場で王に出来ることはない。何も出来ない。
「ね、ねぇ!レギト!!どうなっているんですか!?カルクルはッ!?カルクルはどうなってるんですか!?」
俺の胸ぐらに、飛び掛かるように突っ込んでくる。
顔は少々泣き顔になっており、今にも泣きそうだ。
「だ、大丈夫ですって。自分が今から氷解しますんで。」
体内の魔力を統率し、魔法を放つ準備を始める。
俺の体内を巡魔素は右手に集められる。
右手の周りは熱を帯び、辺りの空気は揺れて見える。
「【永遠を溶かすは火の結晶、輝き、広がり、燃焼せよ、時を亡くして幾万年。死に、肯定され、悪に犯され、紅に染まれ。嘆くは瞬間。其の身をここに顕現せよ】」
「【灼熱の分離】」
執事が凍った時と一緒だ。
カルクルの氷が炎を纏ってゆく。
やがてその火は青色の熱を生み出し、ジュワッという音と共にゆっくり、爆発しないように溶かしてゆく。
辺りに水が生まれる。
「お、おお!おおおお!!!」
王様が語彙力を無くして、感動に震えている。
体の一部はガクガクと震え、目尻には水が溜まっている。
「よかったですね。お父様!」
一方皇女の方は至って冷静な感じを装っているが、こちらもこちらで少し目が紅色に染まっている。
この反応からわかる通り、この人たちからカルクルは非常に大切な存在なのだろう。
それこそクラシスは、生まれたときからの付き合いなのではないだろうか。お爺ちゃんみたいな感じだろう。
表面に付着していた固体の水はどんどん薄くなっている。
そして、ピキッっと表面にヒビが入りバキバキと音をたてて氷はカルクルの身から離れる。
そして全て氷が剥がれ終わったカルクルの体を地に寝かせ、聖属性の初級魔法、回復をかける。
するとカルクルの体から鼓動音が聞こえ、ゴホッゴホッという水を吐き出す音と共に、カルクルの重い瞼が開かれる。
すぐにスクッと立ち上がると少しため息を吐き吐き捨てるように言葉を出す。
「はぁはぁ......ふぅ。ありがとう...ございます...」
ちょっと悔しそうな顔をしているが、そんな顔ができるくらい元気ならもう、大丈夫だろう。
そんな執事をちょっと気にしつつ、王が試合の結果を発表する。
「うむ、完膚なきまでにカルクルの負けだな。さて、褒美をどうしようか」
ほうび、褒美!
やっと褒美だ!
こんな面倒くさい事があってもお釣りが来る。余裕でお釣りが来る!
「さて、レギト。褒美はどうするんだ?」
皇女が問う。
だが、俺の中に迷いの文字はない。
"それ"意外眼中にない。
「魔武闘凱流の学校に、王の子息名義で入学させてもらいたいのです。」
それはグレーズとの約束を守るため。
それは自分が強くなるため。
流石に子息が無理でも、地方の領主ぐらいの名義だったらなんでもいい。
だが、一番最初に最低ラインを見せるより、最高ラインを一度見せてから妥協する方がお願いを聞いてもらいやすい。みたいな研究結果もあるみたいだし、それに従っておく。
「ふむ、王の子息とな。レギト、お前は大切な恩人だ。だが、それは難しい。我々グルシア王国と周辺諸国の2国は代々受け継がれてきた正当な血筋。神の血筋だ。それを偽ることがあってはいけないし、それが途絶えることが起きても駄目だ。それほどまでにこの血筋は尊いものであり、我々がこの国の王をしている理由にもなっておる。」
そう、それは有名な神話。
子供の頃に誰しもが一度は読んだことがあるもの。
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昔々、聖神:グルギリアル様が天地を創造し、海を創造し、森を創造し、この世界の機構を創造した。
だが、それに腹を立てたのは下界、地獄と呼ばれる所に住まう獄者だった。
彼らにとって地界、つまり今我々が住んでいる場所は完全に美しき無が広がるの心地の良い物だった。
やがて、悪神:ハルバルディが地界をもう一度無に帰すという名目で襲撃が起こった。
それに反抗し、我々人間とグルギリアル様は手を合わせ共に悪神を追い払った。
だが、殺される前に悪神が放った呪いがグルギリアル様にあたり、善神対悪神の戦いは両者相打ちで終了した。
グルギリアル様の亡骸からは聖水が流れ落ち、戦いで傷ついた者たちを癒した。
そして、この戦いで長を務めていた者、クラ、サラ、キラの3人は亡骸の血を飲み、この世界の王になった。
また、神グルギルアル様の名前を取り、グルシア王国、ギリゲル王国、アルマル王国の三国ができ、今でも其の血筋は続いている。
地下界大神話
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(多分......)