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第2話 王様の執事は超強いです

遅くなりました。すいません

ああ、良かった。


「何私は関係ありませんみたいな顔してるんですか?貴方も一緒に宮殿まで行くんですのよ?」

「へ?」


あ、これ師匠の時と同じだ。

めんどくさそうなイベントだわ。直感がこれでもかってぐらい鳴ってるわ。あー終わりだわ。詰んだわー。


「いや、待ってください。今から、俺用事あっ───────────」


自称第二皇女が胸のペンダントを引き千切り、手を天にかざす。

紫紺色のペンダントは点滅しながら光り続けている。


「ループ・バック」


魔法の一節のような文言を唱えた後、ペンダントの光は地面に広がっていき、魔法陣が出来上がる。

光で出来た魔法陣が紫紺色に染まってゆき、俺たちの体を包み込んでいく。


「始動」


光は眩しく光り輝く。


「うおっ、眩しっ!」




───────────



目を開ける。

目の前には美しい純白の宮殿がある。周りは綺麗に同じサイズでカットされた木々が数十本も並んでおり、まさしく王様の(ガーデン)を称するに相応しいほど大きい。

後ろには、門だろうか?屏だろうか?ゆうに10mは縦にある赤茶色のレンガで造られているであろう壁ができている。

宮殿付近という、皇族かその関係者しか入れない場所に入っていいのだろうか、という一抹の不安が頭によぎったがそんな物もう消えてしまった。

一般庶民とは何もかもが違い、思わずボーッとしてしまう。

だがそんな、少し気の抜けているレギトと真逆で、とてつもなく焦っていることが一目瞭然で見て取れる老爺が走りながら近寄ってくる。


「おぉーい!!だいじょーぶかー!?緊急用のペンダントの光が見えたぞ!!怪我してないか!?生きてるかーー!!クラシスー!!」


ドラゴンの咆哮と同じぐらい大きな声を張り上げヘクラシス皇女の名前を呼ぶ。

第二皇女と聞いて第一皇女と差別でもされてるのかな?みたいな疑問があったが、あの声を聞けばそんな悩みは自分の勝手な王様に対する妄想と共に消えて無くなる。


「ゼェハァゼェハァ。どうだ?大丈夫か?何があった!?」


豊満な腹が縦や横に大きく揺れている。バルンバルンと音が鳴りそうだ。そして、日頃の運動不足が祟ったのか、ウッ腰が。腰がぁぁぁぁ!なんて言っている。


「お父様。そんなに慌てなくても私は大丈夫です。傷も彼のお陰で擦り傷だけです。この彼、えーと...あ、お名前まだ聞いてませんでしたね。すみません、教えてもらえますか?」

「レギト。レギト・ヴィヴァントです。一般庶民故、作法礼儀に疎いのでご勘弁を。」


そう言って王と皇女に向けて頭を下げる。

流石に王の御前だ。王の娘に無礼をはたらけば、俺の首はすぐに吹っ飛ぶだろう。

あんなに修行したんだ。こんな些細なことで殺されるのは御免だ。まぁ、俺の今の力だったら切り抜ける事は容易いだろうが師匠の望みが叶わなくなってしまう可能性もあるのでね……


「ハッハッハ。そんな気を使わなくても大丈夫ですよ。リラ~ックス、リラ~ックス。今は娘を助けられた一人の好好爺として話しかけているのですから。」


まるで仮面を付け替えたようにコロッと表情を変化させる。

これが普段の顔なのか、それとも一、父親としての最大の感謝からくる顔なのか、判別はつかない。

だが、俺から見た感じは裏に何か抱えてるような、ドス黒いような何かを感じる気もする。


「さて、何があったか説明してくれますかな?へクラシス。」


王はクラルスの少し砂がついているドレスをチラリと一度視認すると、事態の理解をする為に娘に状況説明を求める。

第二皇女が誘拐未遂の事件に遭ったのだ。もしかしたらこの国の威厳に関わる問題かもしれない。


「はい、お父様。この者、レギト・ヴィヴァントは私を盗賊から助けてくださいました。」


少し説明が雑すぎるようにも感じるがあながち間違っていない説明なので、状況説明には十分だろう。


「盗賊?お前の馬車には護衛の衛兵を5名ほど派遣させていたはずだったのでは?」


え、そうだったの?魔素が全く感じれなかったな。もしかして既に死んでたのかな?

うーん......気配遮断の効果が付与されてたし、奇襲されたら確かに致命傷を負ってもおかしくないかなぁ。


「全員瞬殺でした。相手は気配遮断の隠密マントのような物を羽織っており、一人一人奇襲されて死んでゆき、私だけは何とか命からがら、助けられました。」


あ、やっぱり死んでたんだ。遺体の埋葬をした方がよかったかな?まぁ放置してれば勝手に自然に還るから大丈夫か。


「ん?隠密マントを付けていたのであろう?その盗賊は。ならどうやってその者は盗賊を倒したのだ?」


至極真っ当な疑問だ。隠密マントは文字道理、隠密するためのマントだ。隠密の為のマント被っていてバレてしまっては何のために被ったのかが分からない。


「そう!それが、このレギトが、まるで居場所を予め知っていたような動作であっさり倒してしまったのです。」


ああ、普通の人からはそう見えるのか。

うーん……勘だと言って誤魔化すか?いや、見物人も居ることだし、難しそうだなぁ。


「本当ですか?レギト殿。」


あー……言い訳は無理かな。

いや、ホントの事を話しても信じられるとは限らない。

そうだ!その一途の希望に縋ろう!!


「あ、はい。そうです。チョチョイのちょいって倒しました。」


ここ重要!ここで詳細を喋ってしまうと、信憑性が上がってまうのでね。文言を濁して言う。


「ん?もうちょっと詳細を話してくれると助かるのですか………」


よしよし!このまま濁してしまえば、めんどくさい事から逃げられる!


「え?あー……いや、えっと。」

「ん?本当に貴方が倒したのですかな?」


王は注意深くこちらを観察してくる。


「ふぅ、しょうがない。では、私の執事と一対一の擬似試合をしてもらいましょう。」


一つため息を吐くと指をパチンッっと鳴らし、初老の執事を呼ぶ。


「報酬は……そうですね。貴方がこの執事に勝利した暁には、ある程度の些細な願いを叶えてあげましょう。娘の件のお礼も含めて、ね。」


報酬……つまり、貴族だらけの学校で、劣らない地位を得る事が可能なのでは!?

いいね、いいね。じゃあ、サクッと倒そうかな。それこそ盗賊を倒すみたいに。


「わかりました!じゃあ、すぐやりましょう!!さぁ、やりましょう!」

「ん?何やらすごいやる気になりましたな?まぁ、いいでしょう本気で()ってくれて構いませんよ。」


本気?いやー流石に本気出すのはちょっとな......

この宮殿脆そうだし......

壊して請求来たら怖いしな......


「では、レギト殿。本気でいかせて参ります。」


俺は何も返さない


無言を肯定と捉えた執事は腰に刺していた細剣(レイピア)をチャキッという音と共に鞘から抜き出し、俺の方にめがけ、一直線の最短ルートで迫る。細剣(レイピア)の機動力をフルに活かしたスタンダードな戦い方だが、スタンダートだからこそ対策方法と弱点がわかりやすい。

既に自分の目と鼻の先まで細剣(レイピア)が迫っているが、問題ない。

右手に予め用意していた小さな火球(フラムボール)細剣(レイピア)の側面にぶつけるように、放つ。


こういう機動力を高めた武器は防御するのには適していない。この状態のまま俺の火球を無理に受け止めればこの執事の細剣はすぐに折れてしまうだろう。


だが、そんなことを知らない執事ではない。

老体に鞭を打ち、手首をぐるっと90°回転させると、そこでピタッと止まり、横に小さく細剣を振り綺麗に火球を一刀両断していた。


「へぇ〜!すごいねアレをあの状態から切り伏せてしまうなんて!!」


心からの称賛だ。

今の状態からあの火球を切れる者なんてこの世界に一握りしかいないだろう。


「いやいや、なんのこれしき。しかしその立場から言われると嫌味にしか聞こえませんな。」


少しだけ笑って返答する。

縦に少し生えている白い髭を軽く弄る。

本人は気づいているかわからないが、先程の火球の件から少しだけ、ほんの少しだけ獰猛に笑っている。獲物を定めた猛獣のように。


「じゃあ、次はこっちの番だな。」


どう攻撃すべきか多少悩んだが、悩んだ末に、執事1人だけを凍らせるという結論に落ち着いた。


「いつでも、どこからでもどうぞ。」


執事は余裕そうに細剣をまっすぐ、顔に触れるかどうかの所で持っている。


「それじゃ、えんりょなくッ!!【悠久の時を越えしは、水の結晶。固まり、縮まり、氷結せよ!時を駆けて幾星霜。生まれ、否定され、生まれてこず。氷河に染まれ!。嘆くは幾万年。ここに其の身を顕現せよ】!!」


「ッッッ!!!」


咄嗟に詠唱に反応し回避モーションをとるが、もう遅い。

既に魔法はできている。


「【氷河の永結グレイシャークラスタリング】!!!」


冷気があたりに充満する。

だが、その冷気はすぐに執事の体に吸い寄せられるように集まってゆき、体の全てを凍らしてゆく。

この魔法、氷河の永結グレイシャークラスタリングは対象に対して自然ではほとんど溶けることのない氷を纏わせてしまう魔法だ。回避しようとしても、自動追尾(オートエイム)がついている。


パキンッっと音をたて執事は凍ってしまった。



───────────

上級水魔法

氷河の永結グレイシャークラスタリング



自動追尾(オートエイム)つき。

即時氷解には対となる火属性の上級魔法が必要。

約1万年の時が経てば自然氷解も可能。

この魔法で囚われた対象は凍傷の追加ダメージを負う。

対象者は基本的に1人。


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