(4)
「いや、そんな訳…そんな訳ねぇだろ。」
俺は、ありもしないことを女に言われ、酷く狼狽する。どうして、こんなにうろたえてるんだろうか。
「あの子は…あの子は、自殺するような子じゃなかった。それなのに、あの子は自殺した。死ぬ前日でも、表情一つも変えずに楽しく会話してた…」
「だったら、なおさら他殺じゃないのかよ。」
「あの子の日記よ…読んでみなさい…」
「なんで、アイツの日記を…」
それは、アイツが付けていた日記だ。
『ねぇ、ケンちゃん。私ね、日記書くんだぁ』
『そっか、続けられるように頑張れよ。』
『ヒドいな、ケンちゃん。私、死ぬまで付けるよ。』
『はいはい。がんばれ。』
なんで、コイツが持ってんだ。どうして…
そう思っていたが、その謎はすぐに解けた。
この人…文乃の姉さん彩音さんだった。
「いいから、早く読みなさい。」
俺は日記に視線を落とす。
7/29
今日から、日記を付けまーす。
ケンちゃんからは、無理だ。って言われたけど。
大丈夫。どうせすぐに終わるから。
7/30
今日から夏休み、ケンちゃんは部屋に閉じ籠もって
夏を過ごすらしい。昔のケンちゃんなら、川に行ったりしてたのに…なんか寂しいなぁ。
そこには、文乃がいるかのように感じた。
8/1
今日は、流れ星を見た。じっとするのは苦手だけど、その時だけはじっとできた。なんでだろ?
そういえば、文乃と流れ星を見に行ったよな。
あの時は、文乃が走り出して迷子になったんだっけ。
8/3
今日は、花火を見た。ケンちゃんは、うるさいとかいうけど、わたしはキレイだから好きなんだよなぁ。
もし、けんちゃんとみれたらなぁ。
それから、日記を読んでいくうちに、文乃と話しているかのように感じて、涙が自然に流れていく。
8/14
あした、私は死ぬだろう。これを読んでいる人はいないかもしれないし。いるかもしれない。でも、読んでる人に言いたい。出来れば、ケンちゃんには見せないでほしい。これ見てケンちゃんが好きなのバレちゃうから、見てる人、お願いね。
俺は、日記の続きを探した。だけど、続きはなかった。それはそうだ。14日は、文乃が死んだ日なんだから。でも、それを否定したい気持ちでいっぱいになって、夢中で探していた。
「賢人くん。日記の続きはないの。だから、もう探さないで。あの子は、もういないの…」
「そんな訳ないです。あいつは、文乃は、自殺するようなやつじゃない。絶対生きてる。死んでるわけない。」
「あの子の遺体も確認してるの。だから、もう辞めて、お願いだから。」
「うあああああぁぁぁ、あああぁぁ…」
俺は、日記を抱えながら人目を気にせずに泣いた。




