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8. この世の理

ここから段々と魔法の本質と、現実世界と異世界の関係の話に移っていきます。新たに敵対する組織の存在も見えてきて、ユキオとカガリの冒険の旅が深淵へと入っていきます。

「誰だ、お前達は!」


シエルとの話が終わって異世界から戻ってきたユキオは、研究室の中に人影がいるのを見つけそう叫んだ。カガリを自分の背後に追いやり、杖を持って身構えると、中の内何人かが襲いかかってきた。


「バン!ギャン!」


杖を振って襲いかかってきた連中に水鉄砲、いや、ウォーターボールを放つと、その二人はひっくり返ってその場に倒れた。すぐさま、二発目を放とうと構え直していると、倒れた連中の後ろの方で様子を伺っていた別の仲間が、倒れた連中のところに駆け寄って来て、担いで後ろに引き下がっていった。


その間を利用してユキオは研究室の様子を伺うと、研究資料が床に散らばり、いくつかの実験道具が解体され何やら箱に詰まれようとしていた。


「お前ら!泥棒だな。どこからやってきた。目的は何だ!」


ユキオがそう叫ぶも、その連中は、即座に倒れた仲間を抱き起こすと、そのまま、ドアから逃げて行こうとした。


「逃すか!」


と、ウォーターボールを放ったのだが、今度はそれが何かに遮られて、バシャと入り口付近に落ち水溜りを作るだけだった。反撃があるかもと身構えたユキオだったが、何もなく、盗みに入ってきた連中は逃げて行ってしまった。


戦闘前の、ルシルとシエルに会いに行ったところまでに時間を戻すと・・・。


ユキオが魔法の杖を持ってカガリと一緒に異世界に移動すると、そこにはシエルもいた。


「魔法結晶の真実に辿り着けたみたいだね」


杖を間近に見つめながらシエルがそうユキオに話を向けた。


「真実って結晶格子に絡んでるエネルギー属性のこと?」


「まぁそれもあるけど、その結晶格子とエネルギー属性と思念波と、それらがどう関係しているかというのが大事で・・・」


ユキオが答えた後、シエルが説明をはじめたのだが、長くなりそうな内容だったので、ユキオがそこで遮って、


「そこはわかってるよ。杖を見れば一目瞭然だろ?それより、なんでシエルがこの石を持っているか教えてよ。異世界って、我々の現実世界から見れば仮想世界なのに、なんでこんな知恵が詰まっているのさ。現実世界にはこんな知識ないよ。」


ユキオがそう話題を変えると、シエルは淡々とその歴史を語りはじめた。話はとても壮大で長大な原初の精霊の話からはじまり、ユキオ達のいる現実世界とシエルやルシルのいる異世界の関係、そして、なぜそれらが存在するのかという話であった。


簡単に要約すると、異世界は現実世界と全く別の存在ではなく、一つの高次元世界を別々の高次元面から観察して次元縮小されたそれぞれの世界に過ぎなくて、元々可能性として存在していた観察面が、ラノベの執筆で描かれた世界観としてその読者の思念波により増幅されるような形で具体的に形成されたもので、パラレルワールドという概念に近いものであった。この場合のパラレルワールドは、並行して存在する世界ではなくて、多面的世界に近いものではあるが。

したがって、世界が存在する高次元世界の高次元階層を通してお互いに行き来できる訳なのだけど、その世界が可能性として無数に存在するので、どこに行くか決める、どこから観測するか決めるのに、思念波で同調する必要があるということであった。

魔法結晶というのは、その高次元世界の構造の一部がコピーされたもので、結晶格子がそれぞれの固定化されたエネルギー同調点という事になるのであった。高次元の世界には原初の精霊とよばれる、高次元中に存在する今の世界を創造した存在があって、その意識が、ユキオのいる世界には薄く、シエルのいる世界には濃く存在していて、シエルの世界観として精霊が関わる高次元の知恵が残っていたというのである。


「興味深いけど、理解するのには中々難しい世界観だね。」


ユキオはそう言いながら、ふむふむと頷きながら話を聞いていた。


「ユキオの大お爺さんと同じこと言うね。」


シエルがそう言うと、ユキオが、


「今、何て言った!?」


と聞き返した。


「ユキオの祖先も、異世界に来た事があるって意味だよ。僕は原初の精霊に繋がりがあって、まあ子孫に相当するのだけど、その精霊意識から、ユキオの祖先が異世界に来た時のことも知っているんだよ。」


驚くユキオの表情に応えるように、シエルはそう説明した。


「カガリの大お婆さんもその時一緒にいたよ。今で言う巫女のような人だったかな。カガリが魔法の習得早かったのは、そのおかげでもあると思うよ」


「ええっ!今、何て言った!?」


いきなり自分の話になって、ルシルと遊んでいたカガリは、驚いてシエルの方に振り向くのであった。


「ユキオとカガリは、元々縁があって今ここにいるってことだよ」


シエルはそう言って、原初の精霊の残存意識から得られる映像をユキオとカガリに見せはじめた。それは、シエルが語った壮大で長大なストーリーが、まるでドキュメンタリー映画でも見ているように展開されていて、二人の祖先が出会って異世界に移り住んで、暮らしている様子や精霊達との会話、二人の生活の様子が描かれていた。


「頭が混乱してきたので、一旦元の世界に戻るよ。」


ユキオはそう言うと、魔法結晶を使って次元窓を創造して、カガリと一緒に元の研究室に戻って行った。


最初の異世界探検の物語は残り2話となります。世界観を説明するのにかなりの章を使いましたが、次の物語につながらるプロローグとしてこの物語のエンディングを飾るつもりです。

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