7. 繋がる世界
前回の投稿を終えてからプライベートで諸々あり、投稿がだいぶ遅くなってしまいましたm(_ _)m。
これから、完結まで投稿を続けていくので、引き続きよろしくお願いします!これから、ユキオの成長や冒険、生い立ちの秘密など少しづつ明らかになっていきます。
翌日、ユキオは実験に使ってるラノベを隅から隅まで調べて、シエルからもらった石の使い方を考えていた。その鈍く七色に輝く石は魔法結晶というらしいが、ダイヤモンドの指輪がキラキラと輝いているように丸い石が内面の結晶構造を見せるように輝いていて、宝石のようにも見えた。
その内部構造を調べようと石をジッと見つめてみるのだが、キラキラした輝きが眩くてなかなか見る事が出来ずにいたところ、一瞬意識がその中のある一点に集中した瞬間、石の中にユキオの自我、意識と言っても良いものが吸い込まれたように、結晶の中から石の周囲を見るような感覚を覚えた。
そこには、様々なエネルギー体とも呼べるような塊が結晶格子の中に散りばめられており、一つ一つに意識を向ける度に、そのエネルギー体の属性、水とか気とか大地とかの精霊の存在というものが感じられた。どれくらい時間が経ったか分からないくらいが、周囲の結晶格子のエネルギー体を見終わったと思ったら、元の自分に意識が戻っていた。
「どういう現象か分からないけど、次元窓の生成に似てるな。意識を集中させて思念波を送り込むと、石の中のエネルギー体と同調できるみたいだ。そうすると、シエルが言わんとしていたのは、欲しい事象を取り出すエネルギー体に同調して、増幅されたエネルギーを石から取り出して力の根源にすれば良いのだな。」
と、独り言のような事を呟いて納得したユキオだった。もう一つ気になったのは、石の中にいた時少し懐かしい感じがしたのだが、どこで感じたのか中々思い出せないでいた。
「そういえば、昔遊びに行ったおじいちゃんの家の物置でも同じような感覚を覚えたような。」
魔法結晶を次元窓の装置に組み込み、こっちの世界と異世界を繋げるために必要な足りない部品を作って、思念波を同調させて起動する練習をしばらくしていたら、1週間程で行き来できるようになっていた。そうやって、何度か行き来の練習をしてたところ、魔法結晶のある変化に気がついた。最初にシエルから石をもらった時に石の中に入ったような感覚を覚えたのだが、その時のようにもう一度石に意識を集中してみると、結晶格子の中に新しいエネルギー属性を持った格子点が見えた。さらに意識を集中してみると、それは何とユキオが作った次元窓の属性を持っていた。
「次元窓が完成して完全に魔法結晶と同調できるようになると、魔法結晶に取り込まれたのか・・・?いやコピーのようでもあるな・・・?」
その現象を不思議に思いながら次元窓の調整を行なっていると、次元窓全体がモヤのように薄くなり、それが、石の中に吸い込まれていった。もう一度石の中に意識を集中させると、先ほどよりより鮮明に次元窓の形態が結晶格子の中にエネルギー体として取り込まれているのが分かり、それが、ユキオの意識、思念波によって自由に起動出来るようになっているのに気がついた。
「なんと、そういう事だったのか!」
ユキオは、思わず驚きの声をあげ、その魔法結晶の本当の意味、それが持つ力に気がついたのだった。つまりそれは、ルシルが言っていたような単なる思念を増幅する装置ではなくて、思念波の記憶媒体でもあり、思念波を操るための高次元から来るエネルギーを取り出す出力装置の役割を持っていた。
「ルシルの言っていた意味がやっとわかったぞ。」
ユキオは、魔法結晶の使い方を調べるために読んでいたラノベをパラパラとめくり、魔法結晶と思われる石を説明しているページを見て、それと同じようにその石を一部として支持出来るような長い杖を作った。
「これは、まさしく魔法使いが持っている杖だな。なるほど、これはそういう意味があったんだな。」
ユキオは杖を振るように操作して、何やら呪文のような言葉を口づさみ、水を出したり、炎を出したら、土の塊を出したり、それらを飛ばすような事までやってみた。
「それにしても、創造の世界である異世界になぜこのような石が存在するのだろう?」
ユキオは不思議に思いながらも、新たに出来るようになった技、それは魔法と言っても良い現象なのだが、思いつく限り色々試してみるのだった。そうやって試しているうちに、技の属性、水とか火とか土とかによって、ルシルに感じた時の同じような精霊の存在を感じるようになっていった。
「属性によってエネルギーの形態が異なり、それらを思念波によって操作するうちに、それぞれのエネルギーに人格のようなものが加わり、それによって精霊のように感じるんだな。」
何か納得したように呟いて、練習を繰り返すのだった。
カガリが時々ユキオの様子を見に来ていたのだが、来るたびに新しい技、魔法を覚えてるユキオを見て、驚いていた。自分でも出来ないものかと、見よう見真似で杖を振って見ているのだが、いまだにユキオのようには出来ていなかった。
「この石は、俺の思念波に同調させているから、カガリは別の石で調整する必要があるんじゃないかな。」
「そうなの?ちょっとは、技が発動するから魔法が使えてるのだと思ったのだけど。」
「それは、カガリと俺の思念波の共通点が・・・、多少はあるからじゃないか・・・。」
ユキオは少し顔を赤らめてそう言ったが、実は、昔付き合っていたせいで、正確には身体を重ねる事によって無意識に行なっていたエネルギー循環によって、お互いのエネルギーの性質が似通ったものになっていたからだという事に気づいていた。それは、初めて次元窓を起動させた時のエンタングルメントで気がついていた事でもあったのだが。
「何、顔を赤くしているのよ!久しぶりに私に会って、スケベな事でも考えていたの?」
「そんな事はないけどね。ちょっと、昔の事を思い出しただけだよ。」
ユキオは頭に浮かんだ真実は告げずに、そう言ってはぐらかした。
カガリの魔法の練習に付き合いながら、ユキオ自身の魔法の技術もどんどん上達していった。それこそ、ラノベに出てくるような様々な魔法が使えるようになっていった。大技を試す時は、大学の外れにある少し広い芝生のある場所に行って、人気の少ない時間を見計らって練習しなければならない程だった。その練習をしている時は、何やら小さい雲がこちらを見ている様な気がしているのだが、時々、グレーの雲とも何とも言えないものがあるのにも気づいていた。
かなり魔法が安定して使える様になったところで、次元窓を起動して、ルシルとシエルに会いに行った。今度は、窓から見るだけではなく、窓を通過して異世界に移動したのだった。
「ルシル、シエル、久しぶりだね。やっと、自由に行き来できるようになったよ。」
そう言って、ユキオはカガリと共に、ルシルの部屋に足を運び入れていった。
ルシルはまたもや着替え中で、
「ユキオー!また、着替え中に来たわね!」
と言いつつ、顔を赤くしながら彼らを迎え入れるのだった。
直に見るルシルはとても綺麗な肌をしており、その衣装もコスプレのものとは比べ物にならないくらい精緻で美しいものだった。
「ヤァ、ユキオー、カガリー。おかえり!」
そう言って、シエルも彼らを迎え入れるのだった。
ユキオが持っている魔法の杖を見て、満足げな表情を浮かべながら。