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4. 異世界の物語

4. 異世界の物語

あっ気に取られながらも少しずつ冷静さを取り戻したユキオは、エルフと精霊に声をかけてみた。


「君たちの名前はー?」


すると、エルフが窓の外でクルクルと回りながら、


「ボクはルシルだよ」

「君たちの世界ではエルフ族って呼ばれている種族であの街に住んでるんだ」

「こっちはシエル。ボクの友達で魔法を使う時に手伝ってくれる精霊だよ」


すると、シエルと呼ばれた精霊が、


「ワタシは、シエルよ」

「エルフ族を見守っている精霊で、今はルシルと一緒であなたの事はずっと見てたわ」


「俺の事を見てた?」

「君たちは俺の世界が見えるのかい?」


ユキオがそう答えると、シエルがこれまでのいきさつを話し始めてた。


「私たちの世界。あなた達からすると異世界になるのだけど、この元になった本を読んだユキオの世界の人達が色んな事を想像するでしょ。この本は特に人気があったようで、その想像した思念が波動となって重なりあってどんどん強くなって、ユキオの世界にも影響を及ぼしはじめたの。そうすると、ユキオの世界にもいる私の親戚のようなものたちとも繋がりが少しずつ出来てきて、エネルギー体としては存在できたのね。そこに、ユキオの観測しようとする思念波が重なって現実世界に事象として現れる事が出来る様になったって事。事象として継続させるには何らかのエネルギー供給が必要だったのだけど、ユキオがその方程式を完成させて、固定化する事に成功したという訳。今はまだ窓をとおしてだけどね。」


ユキオは、一体何を言っているんだという顔をしてシエルを見返したが、だんだんとシエルの言っている事が理解できて、なるほどと頷いていた。


「つまり、エネルギー体としてもやの用に存在していた異世界が、観測する事によってエネルギーが固定化されて現実化したという事だな。その固定化には一定のエネルギーが必要でそれを供給する仕組みがあの方程式で、固定化に成功したということか。


「まあ、そんなとこね。もっと、詳しくは、わたしの師匠に教えてもらうといいわ」


シエルはもの知りげに答えた。


この人達何を言っているのと横で見ていたルシルと、それにカガリもだが、そんな難しい話よりもっと現実世界や異世界の事を知りたい様子だった。


「そんな事より、この異世界の事をもっと知りたいんだってばぁ」


カガリが割って入ると、ルシルも頷いて、


「早く、こっちにおおいでよー」


と話していたのだが、窓はユキオやカガリが通り抜けられるほど大きくはなく、マゴマゴするだけだった。


「しょうがないなー」


とルシルが何やら呪文を唱えると、その窓が動き始めた。


「まだ通り抜けられないようだし、とりあえず動かせるようにしたから、異世界を案内するよ」


列車の窓から景色を眺めるように、ゆっくりと窓の中の景色が動いていく。景色は最初に見ていた草原からだんだんと街へと続く道に移ったようで、街の入り口にある門が先に見えていた。


窓から見える街の様子は、ラノベそのものだった。

入り口には門番がいて外部からやってくる人間や荷物を検閲して、壁内にやっかいなものが入ってこないように見張っていた。ルシルは住人用の門に向かい門番に挨拶して中に入ると、そこにはまず馬車置き場や馬の厩舎、乗合馬車のようなものの乗り場、それに待合所のような建物にはこれから冒険に出かけるのだろうか、皮や金属の鎧を身につけた勇ましい男女が、剣や弓矢のような武具を携えて何やら話し込んでいるのが見えた。


道を歩いている人・・・人もいるのだが、猫耳、犬耳、尻尾、ウロコ、トンガった耳、など様々な容姿の住人が歩いて街の中心部に向かって歩いていた。街の中心と思われる場所には高い塔がそびえ立っており、それが一目で王宮の一部なんだとわかるような威厳を放っていた。微かに分かるモヤのようなものが何重にも重なって塔にまとわりついていて、荘厳な雰囲気と畏怖の念を感じさせるような雰囲気を醸し出していた。


中心に向かっているのかと思っていたが、中に向かっていくうちに塔が左手に見えるようになりだんだんと右の方にそれた。と思ったら、ルシルのように手足が長くほっそりとした体型に、薄くて白い透明感のある肌、そこに、絹のような薄くて白い衣服を身に纏ったエルフがたくさんいる広場に出た。

皆同じような背格好だが、髪飾りや耳飾りをつけていたり、綺麗に縁取られた華やかな色の下地に紋章が入った小尾のような布地をタスキのように肩からかけていたり、腰から前掛けのように装飾した布を垂らしているものなど、華やかだがケバケバしくはない感じで着飾っている。それによって、それぞれの人の見分けがつきやすいようになっていた。


「随分と綺麗な出立の人ばっかりだね」


ユキオが何気なくつぶやくと、


「今日はあるイベントがあってね。皆んな広場に集まってきているんだ」


とルシルが答えた。


「着ている衣装や飾りでその人の家が分かるようになっているんだけど・・・」


と、ルシルが説明を始めようとした時、広場の端の方から、これまた煌びやかな衣装を身に纏い、化粧で目鼻立ちをはっきりとさせた7人ほどの美少女エルフが出てきた。広場の真ん中までステップを踏んだり、くるくる回ったりしながら中心のステージ上の台に並んだかと思うと、ダンスをしながら歌いはじめた。


「なんかどっかで見たことのあるような踊りだねー」


カガリがそう呟くのを聞きながら、ユキオもその通りだなと頷いていた。

身の丈が揃った美少女が、キレのある見た目にも美しいダンスをしているのだから見とれないはずはない。歌声やメロディーも心地よいサウンドに乗っかり、数曲歌ってその幕は閉じた。


「これから僕もステージがあるし、今日はここまでにしとこうか〜」


とルシルが言うと、ユキオは既に何時間も窓から異世界を覗いていたのに気づき、


「そうだね。また今度ゆっくりと話をしよー」


とユキオが返した。

窓に供給しているエネルギー源を閉じようとユキオが操作を始めようとした時、シエルが、


「今度からはこのパラメータを方程式に追加してみて。僕らと直接繋がれるようになるから」


と、いくつかのパラメータが書かれた紙をユキオに見せた。ユキオはそれをメモして、


「じゃ〜、またね」


と挨拶をして窓を閉じた。


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