第一話 私の後悔
私の名前は椎名智明。国内トップレベルの大学に通う、大学3年生だ。
私は常に「最上」であることを心掛けてきた。
勉強だけに限らず、生徒会としての肩書、部活、友人関係。
他人より優位な立場に立つことだけが、自分を肯定できる手段であった。
そうすることでしか、自分を許容することができなかった。
――そんな私には、恐らく一生消すことができないでろう心残りがある。
高校3年の10月、勉強に明け暮れていた私はふと塾の教室から窓の外を眺め、これで高校生活を終わらせていいのだろうか。そう思いを巡らせた私は、恋愛というものに高校生活の間にふれてこなかったことに気が付いた。
どうしよう、このままでは高校生活が終わってしまう。大学に入学してからでも恋愛は出来るかもしれないが、それはおそらく高校生のそれとは本質的に異なるものだ。SNSで時折目にする大学生のツイートから推察するに、恐らく大学生というものはまずサークルというものに入り、酒の力を借りて酔った勢いで誰かれ構わず性交する生き物だ。うらやましい。……違う。それはそれで私も大学入学後に努力してそうなればよいが、それは決して高校生で経験することができる恋愛とは本質的に違うものなのだ!!大学受験は浪人でもすれば何度でも受けなおすことが出来るが、高校生であるのは残り半年もないのだ。やばいやばいやばい。すぐに手を打たなければ手遅れになってしまう。
そう考えた私は気が付いたら塾を飛び出していた。もはや勉強なんてしている場合ではなかったのだ。
必死に残り半年もない高校生活で恋愛をすることを考えた。そして少し肌寒い秋空のもと考えること1時間。私のキャンパスノートには完璧(だと当時は思われた)な計画が出来上がっていた。
本日:部活の後輩をカラオケに誘う
今週中:カラオケからのおしゃれレストランに行く
一週間後:近所の展望台に呼び出し告白する
以後、卒業迄:ラブラブイチャイチャ高校ライフ!
ハッピーハイスクールライフの幕開けだと心が躍った。
さて、計画が決まれば後は実行に移すだけだ。私はさっそく後輩に連絡を取り、カラオケの予約を取り付けたのだった。