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第八話 ▶FUTURE FOUR。恋のカウンセリング!相手は神様?!◀

何も出来ないまま、ただ涙を流す。




第八話 ▶FUTURE FOUR。恋のカウンセリング!相手は神様?!◀




愛子とみかさは人のない場所を探して、町の中のあばら家へ向った。割れた瓶と吸い殻があちこちに捨てられていた。


二人はガラスの欠片をあちらこちら避けてやっと切り株にたどり着いた。切り株に座った二人は色んな話をした。


「みかささんはCD、売出した?」

「何とか彼かんとか、妄想帝国の目を忍んで。」

「すっごい!銀河の町にも売って欲しい!」


愛子は瞳を輝かせた。けど、みかさの顔は捨てられた新聞のように皺んでいた。


「それは、出来ないと思う。」

「え、なんで?」

「外の皆、この町のこと大嫌いだからな。」

「そ、そんな…。どうして?」

「地球を捨てた神様と一緒に、女帝・デリュージョンを祭っているからだ。」

「…その話、本当、なの?」

「ああ。だから銀河の町から総理が出たりするんだ。」

「なら、私のお父さんは…。」

「父ちゃん?」

「こらっ、手前ら!」


あそこから霧を掻き分け、神様が登場した。神様は牙を噛んで、目をむいていた。誰が見ても、『怒っている』とすぐわかるほど。


「どこまで俺の邪魔をするつもりだ!」

「違っ!俺はただ、ストローク・プロミネンスを探してるだけだ!」

「ストローク・プロミネンス…?」


みかさの話を聞いた神様はぴたっと足を止めた。彼の顔にはショックの跡が残っていた。


「そうだ。父ちゃんがカブッタカゲになって、俺を殺そうとした時、あっと言う間に父ちゃんを殺して、俺達を救った英雄なんだ!」

「そんなわけ…ねえんだよ!」


神様は食いしばった。唇から、血が流れた。神様の白目が、街灯で閃いた。


「ストローク・プロミネンスはもう変身出来ねえ。お前を助けたはずがねえ!」

「なんだって?」


時間を数え、謎を抱く。混乱してるのは、誰よりも神様だった。


「お前、何か知ってるのか?」

「神様!ストローク・プロミネンスって誰?教えて!」

「黙れ!」

「でも…!」

「その名を穢すやつは許さん!」


獣が唸るような声だった。嗄れ声をだす神様が、何故か、悲しく見えた。


「手前!ストローク・プロミネンスを見た所は何処だ!」

「オ、オランダの屋外ステージ…。」

「あいつ、絶対許さん!」


神様はすぐオランダに向った。それを六つの瞳が、呆然と見ていた。四つは愛子とみかさの瞳で、二つは、木の後に身を隠れていた、ウィルヘルミーナだった。


(な、なんすっか、今の話は!)


息さえ逃せないため、ウィルヘルミーナは両手で口を塞いでいた。


(マジプロは、運動場の戦士の名のはずっす。ならばあの二人が、戦士なんすっか?)


散歩に来ただけなのに、人力に余る話を、大きな秘密を聞いてしまったのだ。


「…帰ろっか。」

「はあ?」

「今はそうしかない。精一杯寝て、明日考えましょう!」

「あ、ああ。なのにお前さ…。」

「何?」


みかさの勘違いだったかも知れない。でも、あの時の愛子は、何故か悲しく見えた。泣きたくなくて無理して頑張ってる、子供見たいに。隠した気持をばれたくなくて、目を逸らしてしまう、片思いの女の子見たいに。


「…何でも、ない。」


気づかなかったふりをしながら、みかさは口を噤んだ。そして愛子をそっと追ってあげた。二人の足音さえ消えた後、ウィルヘルミーナは、身震いしながら、木の後から出てきた。足がぶるぶる震えて、歩く事さえ精一杯だった。


やっとおうちに帰ってきたウィルヘルミーナは、彼女のこと心配し、病院に行こうとする両親を引き留めて、部屋のベッドに腹這いになった。


(出来さんと木村さんっすね。二人とも、なかなか強いイメージを持ってるっす。)


みかさは言うこともない。愛子まで心に刻んだ理由は、新学期、つまり三月の出会いの所為だった。


ウィルヘルミーナは小学生の時、赤い髪の所為で苛められた。他の子達は皆この町を誇りに思い、自慢たらしい手柄顔をしていた。そんな子供達に外国人のお父さんの髪を持ってるウィルヘルミーナは獲物に過ぎなかった。


(中学生になった自分、二度とこんなこと繰り返さないと誓ったっす。そして愛される方法、友達を作る方法を見つけたっす。それは…。)


ウィルヘルミーナは枕を掴んだ。握った拳から始まった皺が、枕に広がった。


(…『カウンセリング』っす。)


ウィルヘルミーナは頭のいい子だった。カウンセリングの本を何冊読み、すぐカウンセリングの博士になった。恋愛相談から進路相談まで、ウィルヘルミーナが出来ない事はなかった。


ウィルヘルミーナは上手なカウンセラーだった。でも何故か、相談が終わったら、皆ウィルヘルミーナをまた捨て、自分の友に、家族に戻った。


一人ずつ、友になる可能性がなくなる。相談しなかった子、探しにくいになる。そのうち、最後までウィルヘルミーナと相談しなかった一人。それが愛子だった。


(ある日の自分、出来さんに聞いたっす。『相談したい事あるっすか』と。でも、その答えは…。)


ウィルヘルミーナは目を閉じた。閉じた瞼の上、宇宙と星々が映した。


(あの時のショック、すごかったっす。)


寝返りをうった。枕を抱いた。それでも寝られないのは、寂しいから。


(声、かけたいっす…。)


その時、神様はオランダでストローク・プロミネンスを探していた。


「何処だ、あの偽物はっ!」


屋外ステージに近づいた神様は強い力の跡を感じた。優しい香りが、鼻先をくすぐった。


「これは…!」


神様は空から下りてきた。信じられなかったが、金色に煌めく時間の欠片、それは確かにストロークの跡だった。


「本当に、ここにいたのか…?」


神様は太陽を見上げた。でも、自然は何の答えもくれなかった。


また太陽は登り、町を照らした。散歩するため家を出てきたウィルヘルミーナは丘を登った。そこには捨てられた家が一つあった。燃え尽きたように、真っ暗な木造住宅が。


この木造住宅を、国語の下手なウィルヘルミーナは『焼け家』と呼んだ。ここは何故か誰も来なかった。まるで住んでいた人がすべてなくなったように。


(ここに来たら、何故かすっきりっす。自分、一人ぼっちのこと、随分楽しむようになったかもっす…。)


ウィルヘルミーナは焼け家の壁に寄りかかり、景色を眺めていた。寒い風を感じたのは、その時だった。顔をあげたウィルヘルミーナは瞬間くぎづけになった。あるはずのないデッカゲが、ウィルヘルミーナを見下ろしていたからだ。


じわりじわりと寄ってくるデッカゲを見て、ウィルヘルミーナはなにも出来なかった。ただ、呆然として、死を待つだけ。


「どけぇ!」


その時、赤い髪の男がウィルヘルミーナの前に現れた。一瞬でデッカゲを倒した彼は、ウィルヘルミーナを振り向いた。


(あの人は、神様っす…!)


神様を見たウィルヘルミーナは、凍り付いたように、動けなかった。だって昨日、愛子とみかさを睨み付けた姿が忘れられなかったから。


(じ、自分、酷い目に合うかもっす…!)


怖くて身が震える経験は、誰も望まない。瞼を閉じた。どくろを巻いた蛇のよう、膝を抱えた。でも、聞こえてきたのは、優しい声だった。


「おい、怖がるな。悪夢はもう終わった。」

「じ、自分、わからないっす。何故助けてくれたっすか?」

「妄想帝国が銀河の町の人を攻撃する事だけは、止めないとな。」

「でも、自分、ハーフっす。名前も、見方も、オランダ人ではないっすか!」

「関係ないんだ。この町で生まれ、この町で育ったら、この町の人間さ。お前をおかしく思うやつは誰もねえ。」

「自分、おかしくない…。」

「じゃ、またな。」

「あ、あの!」


ウィルヘルミーナが声を上げたが、神様はもう消えた後だった。女の子の、一目惚れの瞬間だった。


あの日の登校時間、ウィルヘルミーナは愛子とみかさを見て、はやく近づいた。


「ハローっす。」

「おはよう、ハースタートさん!」

「あの、その…。」


ウィルヘルミーナは、ぐずぐず、なにも言えずに戸惑った。


「なにか?」

「いいえ、なんでもないっす!」


ウィルヘルミーナは結局一人で教室に向った。そんな彼女を見てた愛子とみかさは首を傾げた。


その日、ウィルヘルミーナはずっと二人についてきた。売店にも、運動場にもついてくるウィルヘルミーナはの所為で二人はマジプロの事を話すことができなかった。授業中ちらっとみる事は勿論、下校時間にもついてくるウィルヘルミーナを見て、みかさは爆発した。


「なんだ、お前?俺達に文句があるなら今すぐ言え!」

「ち、違うっす!自分、ただ景色を眺めて…。」

「そんな嘘信じてたまるか!」

「まあ、まあ。」


愛子はみかさを落ち着かせた。その後、ウィルヘルミーナに声をかけた。


「ハースタートさんね?」

「え、は、はいっす。」

「どうかしたの?」

「ええと、それが…。」


心は迷った。ウィルヘルミーナは戸惑った。視線が泳いだ。ウィルヘルミーナは助けを求めていたが、それは、彼女と視線が合ったみかさをもっと怒らせるだけだった。


「やっぱやる気だよな?かかってこい!」

「違う、違う!木村さん、落ち着いて!」

「あ、あの、その…。」


このままじゃ何も伝えられない。そう感じたウィルヘルミーナは急いで本音を吐いた。


「そ、相談にのって欲しいっす!」

「相談?」

「どうして私に?」

「出来さん、覚えてないっすか?自分に言った言葉。」

「え。」

「『相談したいことあるっすか』と聞いた自分に、出来さんは、『色々あるけど、自分で乗り越えなきゃ。』と言ったっす。」

「そうだったっけ?」

「頭いいな、お前。」


みかさが舌打をした。誤解は解けたが、いじいじする人とは元々気が合わなかったから、この瞬間だってウィルヘルミーナは気に入らなかった。


「それに、憧れてたっす!」

「え?!」

「やっぱ、変なやつ。」

「酷いっす!」


先までみかさが言い過ぎだと思った愛子もこの話には同感したかった。でも、ここで『同感』とか言ったらウィルヘルミーナが可哀想だし、ぎこちなく、笑うしかなかった。


「変なやつに変だと言って何が悪い。」

「酷いっす!まじ酷いっす!」

「て言うか『酷い』って言いぐさ?他に言える単語いっぱいあるじゃん。」

「じゃ、オランダ語で話していいっすか?」

「止めてよ、二人とも!ここ、人多いし!」


転校生と苛めの戦いってなかなか興味深くて、二人は完全に見物になっていた。そこに人の視線を集める赤い髪と大きなギターまで視線を集めて、皆輪になって二人の喧嘩を見物していた。


「ほ、他の場所へ行こうか。」

「同感っす…。」


逆行する鮭のように人をのぼって教室に戻った。教室での二人は、ちょっとだけ怒りが沈んでいた。多分、お互いを気にしない方が楽だと、気付いたようだった。


「ねえ、相談ってなに?」

「相談、とか、ただの話っす。聞いて欲しいっす。」

「べつに聞きたくないけど。」

「木村さん!」

「わかった。聞けばいいじゃん、聞けば。」


ちょっともじもじしていたウィルヘルミーナは何分後やっと口を開いた。


「自分、小学生の時、いじめだったっす。」

「え?」

「皆、自分を嫌がったっす。」


彼女が打ち明ける話は、かなりショックだったので、二人の目が丸くなった。


「自分、髪も赤いし、名前も口癖も日本人らしくなくて、色々困ったっす。」

「マジかよ、そんなことで。」

「本当かも。だって銀河の町は皆血が繋がってるし、血筋を引くのがすっごく大事だから。」

「ちょっと、今何年だと思ってんの?」

「この町には、過去が溢れてるっす。平成何年になっても、きっと、このままのはずっす。」


赤い髪が夕日に染まった。眩しすぎて、カーテンを閉めた。


「話は色々あるっす。でも一番辛かったのは、泥棒にされた時っす。ある日の自分、一人で教室に残されたっす。昼休みが辛くて寝るふりしたっすが、本当に寝ちゃったっす。でも、誰も起してくれなかったっす。あの日、突然クラスメートが財布をなくし、皆、自分を犯人だと呼んだっす。」


愛子は沈んだ。みかささえ口挟まなかった。その話をただ、静かに聞いてくれた。


「後でわかったっす。あの財布は最初からあの子のランドセルにあったっす。でも、誰もごめんいわなかったっす。あの日から、自分、決めたっす。何かを学んで、玄人になって、皆に必要な者になると、誓ったっす。」


ウィルヘルミーナは恥を晒す事が照れくさかった。明るく笑ったら恥かしくないはずなのに、何故か出来ない。愛子達が滲む。


「自分、カウンセリングに一生をかけたっす。でも、皆カウンセリング受けたら、すぐまた自分を捨てたっす。それでも、こうするしかなかったっす。相談する時は、一瞬でも友達がいる気がしたっす。だから堪えたっす。でも…。」


ウィルヘルミーナが二人を見つめた。


「自分を必要としない出来さんたちにあって、自信なくなったっす。今のままでいいはずないっすと。今までも自分は本物っすか?本当に欲しい物はいったい、なんすか?」


ウィルヘルミーナは涙を流していた。何処へ行けばいいか、戸惑う心に、愛子が手を出してくれた。


「ねえ、ハースタートさん。世界が明日終わったら今、何をしたいの?」

「カウンセリングするっす。」

「どうして?」

「皆が自分に笑って欲しいからっす。」

「答え、出たね。ハースタートさんは、愛されることが、夢だね?」


ウィルヘルミーナは驚いて顔をあげた。そんな事、考えもしなかったから。


「きっといっぱい、いっぱい愛されるよ!だって、ハースタートさんこんなに愛しいもん!」

「は、恥かしいっす…。」

「自信を持つんだ。」

「木村さん?」

「お前がお前を愛さなければ、誰がお前を愛すんだ。」


話を聞いて心が翻ったか。みかさもウィルヘルミーナにアドバイスをした。


出合ったばかりの二人の暖かいアドバイスに、ウィルヘルミーナは涙がこぼれた。ウィルヘルミーナは上を向いて、涙がこぼれないように、笑った。


「ありがとうっす!自分、頑張るっす!」

「その調子さ。」

「じゃ、悩みは解決された?」

「あ、あの、もう一つ、あるっす。」

「なんだ。」

「自分、恋に落ちたっす!」

「えええええ?」


びっくりしていた二人と違い、ウィルヘルミーナは頬を赤く染め、夢見る表情で空を眺めた。


「自分、神様を愛するようになったっす。神様は自分に初めて手をだしてくれたっす。」

「あの裏切り者が?」

「そうっす。ずっと神様が目の前にちらついてるっす。今だってあそこに、いるような…!」

「いや、マジいるけど。」

「え。」


三人は窓に近づいた。窓の外から、神様が二人を睨み付けていた。


「出てこい。そしてお前らの変身カード読みを俺にだせ。」

「神様、いったいどうしたんすか…?」

「そうにはさせねえ!」


みかさがカード読みを取り出した。その姿を見ていた愛子も固く覚悟して、目を閃いた。


「そう、私達は妄想帝国からこの町を守って見せる!」

「じゃ、力ずくで奪うだけだ!」

「いくぜ、出来!」

「うん、木村さん!」


二人の体を光が包んだ。変身した二人は、窓を開けて、空へ飛び出した。


ウィルヘルミーナは、二人のマジプロの姿に驚いて、転がってしまった。まだ、ウィルヘルミーナにはマジプロの二人の姿が珍しいだった。


(逞しい姿っす…。)


二人は舞い上がった。神様も拳を握った。


一方的な戦いだった。神様は目標があって、二人はなかったから。神様は変身カード読みだけ狙った。求め続ける夢にはがいがあって、神様はすぐみかさに近づいた。


「危ない!」


クラッシュが叫んだが、神様の方が速かった。二人は戦いの経験が浅い。そこに比べて、神様は何年も越えてマジプロ達を狙ってきた。戦いにさえならないゲームだった。


「くっ…!」


ついに神様はインターセプトの変身アイテムを奪った。変身が解いたみかさはそのまま空から落ちた。


「木村さん!」


クラッシュがはやくみかさに飛んできた。ぎりぎりにセーフだった。本の少しで、地面に打ち込まれる所だった。


神様はみかさの命なんて考えていなかった。ただ、狙うものに全力だった。それが、悔しかった。


「はあああ!」

「無駄だ。」


神様はクラッシュを見なかった。なら、声を聞いただけで、クラッシュの動きを読んだのか。


神様が手を挙げるとクラッシュは全身がしびれた。神様が手を振ると、クラッシュは墜落した。


「クラッシュ!」


愛子は変身のおかげで死ななかった。ただ、変身が解けただけ。神様は手を挙げると、愛子の体から変身カードとカード読みが出てきた。


(危ないっす、このままじゃ、やられるっす!)


気軽に走らないのは、混乱で満ちた道だから。


ウィルヘルミーナには、誰も敵ではない。助けてくれた神様も、応援してくれた愛子達も、皆、大切なひとであった。


初めて自分をこの町の人だと言ってくれた人と、初めて応援してくれた人。どっちも選べないこの時が、地獄だった。


大体、なんのため戦うのか、わかるわけがない。目の前、『カゲ』と言う明瞭な敵もない。だから、今は止める理由が、名分がない。


(そうだとしても…!)


ウィルヘルミーナは走った。よろけて、倒れて、また起きて。一所懸命階段を下りた。


(自分、あの二人をほっておけないっす…!)

「なに?!」


突然神様のポケットから赤い光がだしてきた。手に持ってる他のカード読みではない、まっかなカード読みが、流れ星のよう、ウィルヘルミーナに飛んできた。


(もう、自分、愛されたいっす、愛したいっす!)


ウィルヘルミーナが変身カード読みを手にする瞬間、神様が叫んだ。


「掴むとしたら、これ以上お前を銀河の町の人だと認ない!」

「!」


ウィルヘルミーナの手が、空でとまった。昔が、目の前に広がった。黒い髪のなか、唯一だった赤い髪。透明人間のように、誰も話しかけてくれなかった教室。皆の幸のなか、一人泣いていた遊び場の少女。


過去の記憶にうずもれたウィルヘルミーナは、もう、何も出来なかった。


そのうち、変身アイテムは神様が奪い取った。


(…はやく逃げよう。また変身アイテムが勝手に動く前に。)


神様はポータルを開いて、そのままにげちゃった。勿論、愛子達の変身アイテムも一緒だった。


「手前…!」


みかさはウィルヘルミーナの胸ぐらをつかんだ。でも、何も言えず、すぐ手を放した。ウィルヘルミーナは、涙を注いでいた。


「大丈夫…。」


愛子は変身の解けたまま、ウィルヘルミーナを、抱いてくれた。自分の母がそうしたように。

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