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第五話 『PAST THREE。世界線。』

言葉さえ思い切り伝えられない。




第五話 『PAST THREE。世界線。』




「お願いします、どうか未来を変える方法を教えてください!」

「神様の口から出た言葉を取り返す方法なんて、儂も聞いたことない。」

「でも、なにか方法はあるはずです!」

「神様の言葉は意志を持つ。すでに未来になってしまったのじゃ。」


愛香は唇をかんだ。昨日、神様から聞いた言葉にショックを受け、すぐみなみを訪れたが、答えは「方法がない。」ということだけだった。


「神の言葉は未来になり、神の夢は予言になる。」


みなみはそう言ってお茶を入れた。皺ばんだ首でお茶が飲まれる姿を見ていた愛香は、悔やみを押せずに立ち上がった。


「もういいです!私一人で探すから!」


彼女の所為ではないとわかってる。でも怒るのは仕方ない。


外には神様が愛香を待っていた。ドアの後に潜まっていた神様は愛香を見て飛び出した。


「愛香、知らんぷりしないで。頼むから。」


神になる者は生れつき。その高い目線で全てを見下す姿は皇者の物。鏤めたクラウンを頂いて、気乗りのない声で万物の命を司る。


だが、あの頃、神様はただ、初恋を味わっている普通の男の子であった。


「愛香、なあ、あぁいぃかぁ-。」


その芳しい名を何度口吟んでも返事はない。それが苦しくて神様は髪の毛をかきむしる。


「どうしたら僕を見てくれるんだ…。」


足をばたつかせながら、神様は何日を悩んだ。それを見逃せなかった長老は結局密かに神様に近づいた。


「どうかしました?」

「ああ、婆じゃない!ちょうど良かった。なあ、俺さ、相談したい事があるんだ。」

「フフ。」

「…なにが面白い。」

「神様が高が人間の儂に相談を持ち込むなんて…。」

「俺は真剣なんだ!愛香の為ならこれ以上、いや、俺のプライド全てを捨ててもいい!」


みなみは真面目な瞳に少し戸惑いが宿った。けどすぐ感情の海を沈ませた。


「愛香、あの子は家族をとても大事にする子です。もしや家族の悪口を聞いたら…。」

「…容赦がないな。」

「申し訳ございません。」


南が頭を下げた。ため息ついた神様は頭を掻いた。


「仕方ない。正攻法でいく。」

「どうやりますか?」

「あの寝言とか何とかいう愛香の妹にちゃんと誤る。そうしたら、愛香も許してくれるはずさ。」

「良案です。成長しましたね。でも、問題はそれでは…。」


みなみが言い切る前、神様の跡は、もう、消えていた。


「…ありません。」


雲さえ残っていない青空に、みなみはため息を。神様に、どうか何も起こらないように、祈るつもりだったが、その神様の為の祈りを、神様に捧げるのは、なんだか、可笑しくて、作り笑いをした。


「誤り?まあ、受けて立つ!」

「いや、それ、こんな時に使う表現じゃ…?」


鋭い質問に愛音は、本の少しの間、目をそらした。すぐ現実に戻った瞳は果てしない煌めきを発した。


「とにかく、愛香姉と仲直りしたいと?」

「あ、ああ。」


掌を返す愛音に神様は慌てたが、もう頼れる所は愛音しかなかったので、仕方なく、愛音の言葉に耳を傾けた。


「愛香姉はファッションリーダーが大好きだよ。」

「マジかよ…?」

「うん、うん!」


ならば、と言った神様が目を輝かせた。


「お前、最近の流行、知ってるのか?」

「勿論。」


いつのまに準備しておいたか、愛音はランドセルから大きなファッション雑誌を取り出した。


「このマガジン、貸してあげる。」

「サンキュー!お前、形より良い生き物だな?」

「言い過ぎだね、あんた。」

「わりぃな。俺、特に人間だけ優れる生き物とか思わなくてさ。」

「なに、それ。」

「まあ、お前にはわかってもらえなくて良い。じゃ、な。」


神様は風が吹くようなスピードでポータルの中へ消え去った。神様が消えた後、愛音は独り言をつぶやいた。


「簡単に騙されて、神も大したものではないね。」


その後現れた神様はいつものローブではないシャツとジーパンを着ていた。ブルージーンズにはポケベルまでつけて、なるべくしゃれ者になりきっていた。


「よし!愛香、喜んでくれるかな?」


大好きな女の子に持てたい、それはすべての男の子の願い。だから神様は今だけ、ただの少年、神君のまま、素直に嬉しそうな顔をしていた。


まあ、うまくいかなかったけれど。


「愛香!」


神様は目をキラキラして愛香を見た。でも、愛香はなにも言えなかった。ただ前だけを見つめて、行く道を歩きだす。


こんなやり方に、愛香も心が晴れるわけない。でも、神様の話は絶対的。そのまま予言になってしまうのである。どのような話も神様が口にしたら、未来に固まるんだ。それが世界の法則であった。


だから神様の話の所為で、いつか愛音は影になり、その女帝になるのであった。信じていた神様から聞いた呪いが心を苦しめて、愛香はどうすることも出来なかった。


「愛香、見て!僕、服着替えて見たんだ!愛香の妹にちゃんと誤りもしたよ?」

「…。」

「なあ、愛香、返事してよ…。」

「…。」

「あぁいぃかぁ…!」


神様は悩んだ。今のピンチをどうやって乗り越えられるのか。その時、いつも愛香が持っていた黄色い星のネックレスが目にふれた。


『そう言えば、愛香、ファッションが大好きだって。ならばきっと、ファッションを誉めたら!』


神様は明るく愛香に飛んでいた。道を閉ざす神様を見て愛香は首をかしげる。仕方ない、そう思った愛香は、飛んでいる神を見上げる。


「もう、なによ。」


覇王樹見たいに刺のある言葉であった。どうにかこうにか、話せる事ができて、神君は涙ぐましい。


「あの首飾り!」

「首、飾り?」

「うん、うん!星の首飾りが、愛香にとても似合ってる!」

「…。」


愛香は星の模様の首飾りを見る。胸苦しい事情があるが、今話したくはない。だから静かに、愛香は、神様をすれ違う。


自分を走り過ぎて行く愛香を見ながら神様は辛そうだ。げど、いまやることは決まってる。ただ、愛香を追い掛ける。


「おはよう、会長!」

「おはよう。」

「なんだか最近、元気ないね。大丈夫?」

「私、元気が、ない…?」


愛香は驚いた。最近変わったことはあまりいなかった。あるといっても神様と話さなかったことだけ。それだけで元気ない、と言われるなんて、きっとなにか変だった。


「あの、会長。」

「え?ど、どうかしたの?」

「あそこから神様がずっと愛香だけを見てるよ。」


振り向いた愛香を待っていたのはしょぼくれた滑降をしている神様だった。神様は窓の外からずっと愛香を追い掛けていた。


『神君。』


視線が宙から交わった。二人は何も言えず、お互いを見つめた。


すぐチャイムがなって、愛香は教室へ。神様は外の木の上からずっと愛香を見守った。


『どうしたら、愛香と仲直り出来るかな。』


何十分後、またなったチャイムは休み時間の目印であった。愛香は会長として忙しい日々を過ごしていた。先生のお使いで教員室へ急いだ愛香を眼鏡の女の子か押した。


だが愛香は戦士、避けようとすれば避けられるはずだった。そうしなかったのは、愛香が避けると眼鏡の女の子が傷付いてしまうから。眼鏡の女の子は、愛香の優しい心を利用していた。


「な、なんだ、あいつは!」


神様は怒りを抑えられなかった。


「あれ絶対わざと押したんだ。ほら、今でもわらってるんじゃん!」


神様は眼鏡の女の子をよぉく見た。その瞬間、彼女が愛香を屋上から押してしまう未来が目の前に描かれた。それは『予言』。神様が持ってる能の一つであった。


神様の手が震えてきた。倒れてる愛香とそんな愛香を見て笑ってる眼鏡の子が、目の前に、明白に、見えていた。


握り締めた拳に、神様は誓った。


「そんな未来、僕が許すか!」


神様は自然にテレポートし、学校の中へ入り込んだ。廊下にいた皆は空を飛ぶ神様を見てざわめき始めた。


「あの方、神様ではない?」

「どうして学校へ?」


そのざわめきの海を越えて神様は前に進んだ。そして眼鏡の子に近づいた時、彼女の後にポータルを開いた。


「な、なになに?」


慌てる女の子を神様はそっと押した。だんだん小さくなる悲鳴を聞きながら、神様は満足した。


「出来た。世界線に投げ出しちゃったから、その中をさ迷い、いつか自分さえ忘れてしまうんだろう。その前に、人たちの記憶から消してしまえば完璧だな。」


神様は指をパンとならした。慌てていた生徒たち皆、ぼんやりとして自分の居場所へ戻った。


「放課後、愛香に誉められちゃうかも?あ、そうだ。愛香も何もかも忘れてしまったから、最初からちゃんと説明しなくちゃ。」


次のチャイムが鳴った時、予想外のことが起きた。すごく怒った愛香が神様を探しに来たのだ。


「あ、あぁいぃかぁ!僕を探しに来たのかい?」

「当たり前。彼方の出来事を責めるためだわ。」「な、なにを?」

「うちのクラスの委員長がなくなった。なのに誰も覚えてないわ。先生さえも!」

「うっ、愛香はどうして覚えているの?俺のパワー、通じないのかい?」


神様が何度も指をならしたが、愛香の瞳はぼうっとならなかった。むしろそのたびに怒って鋭い輝きをだした。


「やっぱり神君だったわね!」

「そ、それが…。」

「勝手に友を消したら駄目じゃない!」

「仕方なかったもん!あいつ、絶対愛香を傷付ける運命だったから!」

「なんですって?」


愛香はちょっと戸惑った。神様が運命を見たから真実なのか、言ったとき真実になってしまうのか、わからなかったからだ。


「だから愛香、あんなやつ、忘れてしまえば?」

「絶対駄目!」


結局神様とサボった愛香は密かに裏庭に出てきた。神様は世界線へ向うポータルを開いて、愛かと自分の手に赤い糸を結んだ。


「ラビリントスと同じ。こう見たいに糸をどこかに回さなきゃ-。」

「行くわ!」

「え?ええええ?」


気持焦る愛香は言葉聞く前にポータルに飛込んだ。


赤い糸が消え去る。どんどんなくなって行く。


「あ、愛香!」


迷いはなかった。神様はこの世界を諦めることよりも、愛香がなくなることが怖くて、糸を巻くことを止めて、そのまま世界線の中へ飛込んだ。


闇が目の前に広がる。


どこを見ても時間だけ、満ちている。


宙を泳ぐ神様の瞳に恐ろしさが宿る。もし、愛香を探すことが出来なくなったら、自分を許せないかも知れない。


「どこだ!返事しろ!愛香!」


エコーだけが聞こえてくる。なんの気配も感じられない。


食いしばって、涙を厳命に堪えた。パニックになる心を静めた。


「愛香ぁ…。」


でも、時間は滲む、進んで行く。


「神君!こっちこっち!」


どこかで聞こえてきた小さな声。それを神様は聞き逃せなかった。


「愛香ぁぁあ!」


手を振ってる愛香に神様は飛んでいった。眼鏡の委員長を探した愛香は彼女と共にいた。友を探して、怒りも自然に静まったようだった。


「ねえ、私、委員長探したわ!良かったね、神君!」


愛香を探せたのは幸運だった。でも、神様ももう怒った。そのまま飛び出してしまった愛香を神様が逃したらどうなったか。思うだけで、涙流れる。


「さあ、帰りましょう!」

「帰らない。」

「な、なに言ってるの、神君。」

「本当だ。愛香達の世界線、結ぶこと出来なかった。だぁれかの所為でな。」

「もう、そんなこと言わないで。帰ったらデートしてあげるから。」

『会長、私のためにそこまで…!』


委員長は感激した。自分のためここまで助けに来てくれた愛香に、今でも自分を元の世界線へ戻そうとする努力に。これは、いくら戦士でも、愛情がなければ出来ない事であった。


「したいけど無理は無理だ。もう僕だって手も足もでない。どうせこうなったからには新たな世界線にいくのはどうだい?」

「絶対ごめんです!」


三人は道を探し歩き始めた。出も時が時と時々結ばれてるこの道はああ言う簡単には抜けられなかった。


神様の横顔をよそ見してた愛香は勇気を振り絞った。


「あの、神君。」

「なに?」

「どうして、そんなに悪い予言、しちゃうの?」

「違う!それは、予言もなんでもなかった。僕は、ただ…!」

「ただ?」


騙されたのは生まれて始めだった。大事な人への想いをもてあそばれた。それが、重苦しくて。切なくて。


「わからない。愛香に彼氏がいると聞いて、僕は心折れてしまう見たいだった。だからついに…。」

「ついに?」

「うん、ついに。」

「なら、わざと呪った訳では、ないわね?」

「絶対違う!」

「でも…。」


もう神の口から出た言葉を戻す方法はない。それを知っていたから、愛香は笑えない。


このまま戻れなければ、町には戦士もいなくなる。そのままなら、愛香は愛音を守れない。まさかデッカゲに愛音が襲われ、そして本当に愛音が影の女帝になったりしたら…。


「思いたくもないね…。」


愛香は長いため息をついた。いつまで歩き回すのであろう。このままずっと、迷ってしまうのであろうか。


ピーピー


どこかで、赤ランプが光った。頭随分痛いのにポケベルまで煩くなると、愛香は気分がいらつく。


「ちょっと、誰のポケベル?」

「私のではありません。」

「僕のでも…。」


ピーピー


また、神様のジーパンから赤ランプが光る。それを見た愛香は声を上げた。


「もう、神君のものじゃない。」

「あ、ごめん、僕、愛香に好きになって欲しくておしゃれしてみたけど…。」

「私ファッションなんか大っ嫌いだわ。だからオフにして欲しい!」

「え?でも、あいつは…。」

「今すぐ!」


神様は元気0%のままポケベルを掴んだ。ポケベルになにかに引っ掛けていたことに気付いた神様ははやくポケベルを手のひらに置いた。


「これは、世界線?」


あの時、閉ざされたポータルがポケベルにかかったのであった。神様は開いた口を塞がれなかった。何も言えずぱくぱくする神様をみて愛香と委員長はぱっと笑った。


「じゃ、決まったね、帰りましょう!」


神様がポータルを開いてるうち、愛香はマジプロに変身して、舞い上がった。


神様はあの日、始めて愛香の懐に抱かれた。柔らかくて、優しいかおりが、胸をときめかせた。

「さあ、帰ってきたわ…って、あれ?皆!」


いつのまに来てたんだろう。生徒達が皆ポータルの周りに集まっていた。


「皆、どうしてここに?」

「何となく、誰かが消えた気がして、探していたのよ!」

「やはり二人だったよね!」

「え、私まで忘れちゃってたの?」

「まあ、世界線を開ける唯一な存在である僕までなくなっていたから、この星、大変じゃなかったかな。」

「嘘でしょう?」


二人が話してる間、委員長の周りに沢山の生徒達が集まってきた。


「ねえ、委員長大丈夫?」

「怪我はない?」

「ど、どうして私なんかを先に心配してくれるの?」

「そりゃ当たり前だろう?会長は戦士だから問題なし。むしろお前の方が心配だ。」

「皆…。」


委員長は自分への愛情を感じ、幸そうに笑ってみた。それをじっと見ていた神様は慌てて愛香の襟を取った。


「ねえ、愛香。委員長が愛香を傷付ける未来が消えた!?」

「なんだって?」

「信じられないけど、未来って、変われるものかもしれない。」

「じゃ、愛音も!」


愛香は嬉しすぎて神様を抱いてしまった。神様は息詰まったが、あわせて、その瞬間が永遠ならいいな、と思った。


そして約束のハッピーエンドだと思っていたが…。


「約束守れ!」

「約束って?」

「愛香とデート!」

「ああ、それがあったね…。」


愛香は目を閉じて、腕を組んで葛藤していた。その時、遠くから一人の男の子が来た。


「おい、愛香!」

「なによ、たくお。」

「いつもメリハリがあっていいな。先、神様とハグしたよな?俺も抱いてくれ!」

「あっち行け!」


神様はアッというまに男の子を押してしまった。男の子は壁にぶつかって、そのまま気を失った。


「あら、やっちゃった。」

「フンだ。愛香は僕が守る!」


愛香がじろじろと神様を見た。神様は愛香に怒られる準備をしていた。


「愛香、また友を投げ出して怒った…?」

「べつに。あれぐらい、私だってやるん打もん。私戦士だからね。本気でやっちゃえばあれほどでは終わらないわ。」


神様を見ていた愛香は、ぷっと、笑いだした。


「今週の日曜日に時間ある?」

「え?それって、もしかして?」

「しろ、デート。」

「本当?」

「本当。」

「やった!」


空へ舞い上がる神様を見て愛香はそっと笑った。


「もう、時間まだ教えてなかったのに。」

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