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第四話 ▶FUTURE TWO。いきなりラスボスですか?◀

彼女への思いは、皆同じ。




第四話 ▶FUTURE TWO。いきなりラスボスですか?◀




「女帝・デリュージョン…?」


なんだか肝がひやりとする名前に、愛子の体が震えてきた。それも気にせず、神様は浮かれたまま愛子をしっかりと抱いて前に進むだけであった。


「それって、誰?」

「行ってみればわかるさ!」

「ちょ、なにそれ!私超怖いんですけど!」

「大丈夫。彼女はマジプロなんかよりずっと優しいんだ。」

「マジプロより、優しい?」

「ああ、勿論さ。」


瞬間神様が見せた暖かな顔を愛子は忘れられなかった。とても大切な人を思うように柔らかで、幸せで、けど、どこかつらそうな顔。見るだけで心折れそうな気持になっちゃうその微笑み。


「ねえ、神様ってあの方と親しい?」

「言葉じゃ伝えられないほど、かな。」


答えと同時にまぶたがそっと瞳を半分ぐらい隠した。その切なそうな目付きが胸を躓いた。


「救うってどうゆう意味?」

「女帝・デリュージョンは…。」


口蓋垂を超えて過去を飲み込む音が聞こえてくる。口の中でしばらく言葉をかんで刻んだ神様は出来るほど痛まなく言葉を醸し出した。


「…影の中自分の痛みを隠してしまった。」

「そんな!」

「あの馬鹿はな、今でもあの頃に立ち止まって、心から泣いている。」


神様は胸に抱いた愛子を見て作り笑いを見せた。苦い笑顔は今にも肌から流れそうにギリギリだった。心が溶ければ、涙が滲んで流れ落ちてしまうのだろうか。馬鹿という単語から無数の感情が伝わってきた。


「ひどい、ひどすぎる…!いったい誰がそんなことを!」

「マジプロ。」

「え?」


耳を疑った。今聞いた単語が自分が知っているマジプロではないだろう。自分をなだめすかしたが、見上げた神様の顔は堅固だった。


「あいつらが裏切ったんだ。銀河の町の皆を。」


神様は話を続けた。アリエナイカゲとの最後の戦い、残された銀河の町の人々はすべてのマジプロから捨てられ、家族を、夢を、居場所をなくしたと。そのあいだにも、ほかの町はマジプロたちに守られていたと。


「そんな…。」

「だから銀河の町の長老は、ほかの町との交流を断絶し、すべての扉を閉じた。」

「それじゃ、今までカゲが私たちの町を狙わなかったのも、その話と関係ありますか?」

「ああ。女帝・デリュージョンは銀河の町が大好きだった。自分の手で壊すなんて、出来るわけない。」


今まで大人達は、マジプロや女帝・デリュージョンについて真面目な話をしてくれなかったから、ショックは何倍、パニックいっぱい。愛子は、先までゆなを攻撃してきた女帝・デリュージョンの幹部を思う。そして、神様の話すマジプロと比べる。


『どっちが悪いか、わからない。どっちも悪そうだもん。でも…。』


愛子は思う。スマイリーマジプロがゆなを倒そうとしたのは、ゆなの弟のため、ゆなの大切な家族のため。結局、ゆなのため。だからこそ誰も責められないこの瞬間を、神様は責めたいのなら、愛子は問いかける。『愛する者の闇落ちを見守ることが神様の選びですか』と。


『私、悪いマジプロには絶対なれないから。信じてくればいいな。』


なんだか、一人ぼっちの戦いをする神様の背中が、小さく見えた。今のはきっと、見間違いではないだろう。なぜか、撫で撫でしてあげたい気持いっぱい。


「こっちさ。」

「そ-。」

「はやく、はやく!」


神様のお姫様だっこから降りたすぐ後だった。一言も言えず、神様は愛子の手を言葉通り引っ張った。ほんの少し、休む時間さえなくて、あの時までは愛子もなんの文句言えずただ神様を追っていた。


「ねえ、神様。」

「忙しいから用事は10秒以内に。」

「酷すぎっ!」

「2秒すぎたぜ。」

「減ってる?」

「言えないなら-。」

「今から会う人は!」


突然、神様の足音が止った。振り向く彼のステップに、蝙蝠達が驚いて羽ばたく。忌まわしい道標に愛子は眉を顰める。


「どなた、ですか?」

「先いったんだろう?マジプロなんかより遥か気高く、尊く、麗しくて-。」

「いや、そんなことじゃなくて!」

「じゃ、なんだよ、お前が知りたい事って。」

「だから、あの、その、勘違い、のはずですけど。」


月さえ見えていない、真っ暗な空を見る。星々はどこに隠れてしまったのであろう。身を委ねないその初々しい決意に結局負けるのは愛子であった。


「まさか…。」


通路ははじめから出口なんか見えない。まるで侵入者を追い払うために作られたよう。迷路みたいな道を良くも進んでいく者がいくら神様だといっても、ここ、どう見ても悪者たちのベースメント。


「悪の…。」


愛子の黒い瞳が不安に触れた。揺れる気持が戸惑いになり、絶対出せなかった疑問を今一つ、口にする。


「ボス、ですか?」

「まあ、そうなるかな。」

「い、いきなりラスボス?!」

「心配すんな。お前が役割を果たしたらただの女の子に戻るのさ。」

「ただの、女の、子?」

「ああ、お前のように。」

「そっか…。そうだね。確かに、あんまり緊急事態ではなさそうだったし。だって銀河の町、無事でいてくれたんだもん。」

「…。」


まだ、神様が言えなかった事が一つ。今、銀河の町の以外のすべての町には妄想帝国の手が伸ている。それは小さな少女に出来るとはとてもあり得ない事であった。


「じゃ、急ぎましょう!あの子の元へ。」

「あ、ああ。急がなくてはな。」


でも、世界なんか、今はどうでもいい。神様はただ、すぐ会えるあの子に集中したかった。20年ぶりに会えると信じてる、大切なあの子に。


「出来たな。」


たどり着いた大きなドアの前で二つのスケルトンが礼を言った。それを無視した神様は『クラッシュ・プロミネンス』に変身していない『出来愛子』をだっこしてドアを開いた。


「うっ…。」


マジプロになったばっかりの愛子にも、すごい気配を感じさせる彼女、女帝・デリュージョン。彼女の姿は、思ったより大きくて、情けなかった。頭の上からあふれ出す影はまるで汚水をかぶっている姿であった。


「女帝・デリュージョン!僕だ!」

「カゲルルルルルル…。」


女帝・デリュージョンと呼ばれた何かは神様に近づいた。神様が手を伸ばして彼女の頬に触れると、女帝・デリュージョンの頬に赤みが差した。


『喜んでいる?』


悪のボスに、感情がいるなんて、愛子は信じられなかった。


「この子は銀河の町の子だ。そして君のめ-。」

「ゲルルルル…!」


神様が説明を終える前、女帝・デリュージョンは一歩前に進んだ。それが、その姿が、大きくなった空っぽな目が怖くて、愛子は後じさりをした。瞬間、神様の目が鋭くなって、愛子は動けなくなった。


『もう、おしまい!』

「ゲルルルル?」


愛子をじっと見ていた女帝・デリュージョンは手を振り上げて愛子の横顔を撫で撫でしてくれた。それが、あり得ないぐらい、暖かくて、切なくて、今度は愛子自分が何も出来ずその場で凍り付いた。


『暖かい…?』


ぼうっと女帝・デリュージョンの手を見ていた愛子はいつのまにか自由に動けようになったことに気づいた。


「どうだ、やさしいんだろう。」

「そう、ですね。まるで、まるで。」


なぜか、言葉が出ない。喉に言葉が詰まって何も言えない。ただ、ただ彼女が愛しくて、眩しくて。


「母のような眼差しだった…。」


愛子がそっと笑うと、女帝・デリュージョンもにっこり笑った。一緒の笑顔は和音になり、響き会う。それを割れたのは神様の拍手であった。


「さあ、そろそろ『あれ』の出番さ!」

「あれって?」

「見せるのさ。俺たちがここに来た真の目的を!」


あのとき、愛子は思った。あの中に誰があろうと、たとえ怪獣があろうと、助けてあげたい。助けなきゃならない。そう決めた愛子は、絶対、やってはやらない事をしてしまう。


「…はい!」


愛子はカードリーダを出にして、またの手にはカードたちを持った。次々スラッシュすると光るカードが彼女の体を包み込む。


「マジプロ!時空超越!」

「カゲェエエエエ!」


クラッシュの変身の光に、女帝・デリュージョンは苦しめた。身をもだえた。時空の嵐を、我慢できなくて、肉片が切り取られた。


「すまない、ちょっとだけ我慢してくれ!」


そんな彼女を似げないように捕まっていたのは神様であった。女帝・デリュージョンは目をくるくる回しながら、裏切られた、と言う感情に燃え付き始めた。


「影の跡を壊せ、クラッシュ・プロミネンス!」


変身が終わっても光は消えず、洞穴の中を包み込んだ。愛子は慌ててどうすればいいかわからなかった。


「ど、どうしてこんな光るの?」

「逆転だ…。」

「え?」

「影の強い場所では、光さえ強くなる!」

「そんな!」

「だめだ、このままじゃ、彼らが来る!」


言葉終えずに、入り口から影が入り込んだ。それは突然扉を少し開けて中への道を開いた。


「くっそ、お前の光が、すべての幹部を起こしたのだ!」

「嘘!」


筋肉モリモリのマッチョマンが扉をぶっ倒して中に入ってきた。


「こらぁ、何をするんだ!」

「ちがっ!これは全部、女帝・デリュージョンのために!」

「うるせぇ!」

「ここにまでマジプロを誘うとはな。」

「あなたは昨日の!」


昨日見た男の幹部もいた。


「てめえ、デリュージョン様のマジプロへのおもいを一番よく知ってるくせにな!」


最後に入ってきたのは真っ赤な女性であった。その三つの幹部たちの集まりにクラッシュたちはますます片隅に追い遣られた。今にも手を伸ばせば届けそうな君なのに。神様は歯を食いしばって、クラッシュにささやいた。


「おい、俺が止める間、お前ははやく女帝・デリュージョンを!」

「は、はい!クラッシュ・プロミネンス、行きます!」


そして守ろうとする者と、取り戻そうとする者たちの戦いが始まった。神様はさすが神様であり、三人の幹部の攻撃を余裕によけた。


問題は、クラッシュの方。苦しんでいる大きい化け物を相手に、楽勝を叫べるはずだったが、クラッシュはなぜか、女帝・デリュージョンをいじめている感情に捕らわれてしまった。


「ねえ、ごめんね。すぐに終わるよ。」


捨てに倒れてる相手を攻撃すると、味が悪いお菓子を食べるよう。でも仕方ない。神様はクラッシュを信じて、あんなに頑張っているから。


「マジプロ…。」


目を閉じて、深呼吸する。


「クラッシュ・ザ・シャドウ!」

「ゲェエエエエエ!」


悲鳴が鳴り響く。悲喜が交々至る。もうすぐ、あの中の少女と会える。そう信じたのも一瞬。愛子は、人生最初、絶望を見た。


影が破れると膿が出す。どうしても期待の女の子は出ない。むしろ彼女の体が切られそう。


「ちょ、待ってよ、話違うじゃ…。」

「ゲル…ル…。」


何か直感したか。神様はそのまま女帝・デリュージョンの前を立ち塞がる。


「うわぁああああ!」

「かっ、神様!」


クラッシュが攻撃を止めて神様に走った時、幹部たちは、神様のおかげでやっと助けられた女帝・デリュージョンの要図を見ていた。


「デリュージョン様!」

「女帝!」


そのうち、クラッシュは神様を支えて女帝・デリュージョンに近づいた。


「ごめんなさい、ごめんなさい!こんなはずじゃなかったのに!」

「手出すな!」

「!」


その場に立ち止まったクラッシュはぼうっと女帝・デリュージョンを見た。倒れている姿が死んでいるみたい。でも、あれがただの化け物ではないとわかる。だから、だから今のクラッシュじゃ堪えない感情が波打つ。


『なによ、これじゃまるで、ひとを殺したみたいじゃ…。』


手が震えてくる。体から力が抜ける。どうなりと立ち上がった女帝・デリュージョンを見ると、やっと焦点が合った。


「なあ、女帝・デリュージョンは?大丈夫?」


神様がよろける。どうしても女帝・デリュージョンの側に行くために。でも、現実はつらかった。女帝・デリュージョンが、直接、ポータルを開いて、二人を地球に飛ばした。


「デリュージョン!」


叫びは悲鳴になり、ある洞穴に残った。


「くっそ…。」


地球には雨が降った。だれかの涙のように。ずっと、止めのなく。


「くっそぉ!」


そのあと何度もテレポートをしてみたが、女帝・デリュージョンの洞穴は神様を受け入れくれなかった。


「すべてお前の所為だ、すべて…!」


神様は愛子の胸ぐらを引っつかんだ。愛子はしきりに咳いた。でも、変わることは、なにもなかった。


「やはりマジプロなんか信じるものではなかった!お前なんかいらねぇ!俺の前から消えされ!」


変身が解かれた愛子はそのまま家に向かった。透明さがってる戦士の服がキラキラと愛子を守ってくれた。


そんな愛子を待っていたお母さんは、何も聞かずに、愛子をぎゅっと、ずっと、抱きしめてくれた。

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