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第二十六話 ≪PRESENT FIVE。告白(2)≫

「なんで俺があいつと戦わなければいけないんだよ!」


愛子を先に行かせた後、三人はそれぞれ幹部と対峙した。このトーナメント表にみかさはかなり不満を抱いたそうだ。


「俺はあいつをぶっ潰したいぞ。」

「なんでだ?」

「決まってんだろ。父ちゃんのかたきを打つためだ!」

「くだらん。」


足掻いてる被食者を見下ろすように、ヘイトの視線は冷えている。強者が弱者笑うようで、狼が子羊を噛みちぎるような目線。主君は神のように、他は虫のように。その視線がかなり不愉快で、みかさは顔をしかめた。


「はいはい、わかった。」


むかついて、イラっとくる。むしゃくしゃする気持を押して、インターセプトは髪をかきあげた。


「こいつを倒した後、お前を踏み躙ってやる。」

「へえ。」

「無視すんな!」


胸の中から何かが沸き上がる。自分を制御できなくなったインターセプトはそのままヘイトに飛びかかった。だが、目標につく前、ハザードがインターセプトを立ちふさがって、反撃を食らわした。


「よそ見する余裕があるのか!」

「ちっ!」


舌打したインターセプトはハザードの攻撃をかわすため一歩後ろへ下がった。傷口から流れる血をざっと拭って、インターセプトはハザードを睨んだ。


「インターセプト!」

「あら、どこ見てるのかしら。」

「うっ!」


フィルムはエリミネートの首を掴み、空へ飛び上がった。雲を凌いだ頃、フィルムはエリミネートを捕まえていた手を放した。そのまま落されたエリミネートはドーム屋根にぶつかる前、体をかわして安全に着地した。


「ここでちょっと、話し合おうか。お茶でもどう?」


にやにやと笑うフィルムは、なぜか危ない雰囲気。


「で、残ったのは手前だけか。」


もうこりごりな悪縁にため息をつく暇もなく、二人は拳を交えた。二人ども、恋のライバルに負ける趣味はなかった。


「誰があいつにふさわしいか勝負だ。」


屋根の上で立ち上がったエリミネートは辺りを見回した。鋭い三日月が空を刺す、草も生えない荒れ地。生き物は何一つ見えない。


「ここに連れてきた理由、聞かせてもらうっす。」

「サービスかな。だって私、これからあんたの恥を全てさらすから。」

「なにを言ってるっすか?」

「私は別にいいけど、あんた、そんな格好を見られたら恥ずかしくない?」

「意味、ピンと来ないっす。」


フィルムが手を上げると、エリミネートのまわりに映画フィルムが現れた。無数のフィルムは、ウィルヘルミーナの片思いをはっきり示した。


「これって…!」

「私には人の痛みが見える。まるでパノラマのように。」


どんどん迫ってくる映画フィルムはウィルヘルミーナの辛い笑顔や泣きべそで満ちていた。その中に神様の顔は一つもうつってなかった。だって、いつも神様は背を向けていたから。


「あんたの心、ちゃんと腐ってる。」


残酷な言葉をかけるフィルムはぱっと笑っていた。その言葉に気を取られたエリミネートは思わず動きを止めた。その瞬間、まわりの映画フィルムがエリミネートを縛った。


「そんな気持で人を守るとか、笑わせるね。」


舌なめずりするフィルムの姿はまるで、獲物を狙う猛獣のようだった。


「デリュージョンさまは、妹の夢が壊れた時、絶望を抱いた。」

「わからないわけないだろ?」


過去の話を人質にされたら、ご機嫌ななめとなることは人も神様も同じ。だから神様は攻撃をかわしてカウンターパンチを食らわせた。


「妹の夢が叶わなくなった時、全て自分のせいだと思って!」

「なら、いつものように黙っていればよかったではないか!何があってもあの方を守ると決めたのではなかったか!」


ぶつけあった拳と拳は斥力を産み出す。自らの力によって飛ばされた二人は、着地してお互いを睨んだ。


「あの方が喜ぶなら、どんなやつでもいいと思っていた!」

「!」

「僕がどんな思いであの方を諦めたかわかってるのか!」

「お前…。」

「だから許さん。絶対倒す!」


妄想の力は人の闇から生まれる。意識せずにカゲを生んだ者は、すぐ闇に食べられる。だからこそ、弱気は負けとなる。


「くっ!」


それは、もはや敗北したと同じ。


「お前らマジプロの目的は正義を尽くすこと。だが、正義は人それぞれだ。俺たちにとっては、この帝国が故郷。居場所を守るのは、お前らの正義ではないのか?」


インターセプトがぴたっと止まった。そのうち、ハザードは拳を握り締めた。


「なら、俺たちを認めろ!その正義により、俺たちと共存しろ!」

「きゃああ!」

「それとも認めろ、お前らの正義はただの偽善に過ぎないことを!」


防御しようとした時はとっくに遅れていた。ぶっ飛ばされたインターセプトは壁に突っ込まれた。手を握ったり開いたりしたハザードはインターセプトを振り向いた。


「結局、お前らの正義はここまでか。」

「…ああ、そうだな。よく言ってくれたじゃねぇ。」


崩れたコンクリート壁の中で、インターセプトは咳をするように笑い、笑うながら咳をした。本当はどっちだったのかはわからない。目を腕で塞いでいたインターセプトは表情を見せなかったから。


「けどさ俺、正義とかしらん。俺は自分勝手に生きてるから。」

「なんだと?」

「俺は俺のために生きる。俺のために戦う。だから、恩返ししてみせる。」


服を払って立ち上がったインターセプトは目を閉じて拳を握り締めた。拳から燃え上がる青い炎がハザードの目に刻まれた。


「ようやく決めた俺の道を邪魔されたくなねぇ。だから我儘も言い、意地も張る。」

「な、何を言ってるんだ。お前らは地球を、正義のため…!」

「問答無用!」


インターセプトは風のように走り出して、ハザードを蹴飛ばした。彼女が纏った青いオーラは妄想帝国の力を止めて、インターセプトにいつも通りのちからを使えさせてくれた。


「可変する感情はかなり魅力的。だからどん底まで落ちてくる。」


髪をブラッシングしたフィルムの視線は手鏡の中に閉じ込められていた。目を呉れることもなく、フィルムはエリミネートの首を絞めた。


「そしたらすぐ色褪せて、意味を無くす。」

「っ…!」

「考え方の変化、夢や目的の変化、心境の変化。その全てがあなたから過去の意味を奪う。」


髪をなでつけるフィルムはヘアブラシをくるくる回しながらエリミネートを見つめた。彼女は過去の痛みに絡まれたまま、沈んでいくはず。


「そして、今までの道を振り向いた時、今までやってきた事が間違えたと気づいた時、今までの自分を否定する。」

「意味、あるっす。決して無意味じゃないっす!」

「無理矢理な意味づけは止めろ!」


激しい感情の流れに飲まれたフィルムは突然大声をあげた。でもエリミネートは自分の信じる道を諦めなかった。今まで歩いてきた道の意味を、今に繋がる過去と未来へ繋がる今を、やっと気づいたばかりだから。


「歩いてきた道が間違えたとしても、それも全て自分す!」

「はあ?振られたことも?」

「そうっす。自分、神様を好きになってよかったと思うっす!その感情は自分の誇りっす!」


エリミネートは赤いオーラに包まれた。エリミネートが体をねじると、彼女を縛っていた苦しい思い出が消えた。


「マジプロ、エリミネート・ザ・スレット!」


フィルムはエリミネートの頭の上に生まれた赤いエネルギーの求を見てあざ笑った。


「なぁに、ただそれだけ?」

「まだまだっす!」


気合いを入れたエリミネートは拳で自らの攻撃を破れた。


「なに?!」


数百に分けた攻撃にフィルムは驚愕した。その間、舞い上がったエリミネートは全てのエネルギーをサッカーのように一々蹴飛ばした。


「くっ!」


フィルムは赤いオーラに押し潰されて、地面まで落ちだ。舞い降りたエリミネートはそっと笑い、よろめきながら、座り込んだ。その時、インターセプトがエリミネートのそばをすれ違った。


「インターセプト!」


刹那の瞬間、二人は視線を交わした。その意味に気づいたインターセプトがそっと頷いた。


「マジプロ、インタセプト・ザ・アタック!」

「防御技か。浄化技も攻撃技も持ってないお前に俺は倒せない!」

「それはどうかな?」


気合をいれたインターセプトの拳が向いたのは、あいにく自分のシールドだった。嘘みたいに落ちるシールドのかけらを見て、ハザードは口を開いた。


「な、何をする気だ…!」


確かにインターセプトは自らの防御技を破った。ただ一つの作品を残した。沈んだ煙の中で少女は青い剣を手にした。


「シールド削って、剣を作ったと?!」


インターセプトは駆け付けて、ハザードのすぐ前の空を切った。青い剣技がハザードをぶっ飛ばした。ちゃんと驚く暇もなかった。


「くあああっ!」


インターセプトは剣の軌跡だけ残して歩き出した。振り向く必要もない。確かなものに理由はいらないから。


「みかさちゃん!」

「やあ、アホ神は?」

「神様はまだっす。探しにいくっすか?」

「当然だろ?」

「やはりみかさちゃんは優しいっす。」

「な、何言ってんだ!もう、意味わかんない!」


一方、神様は徹底的にやられていた。自分は彼女に似合わない。その気持が足止めになって、本気を出せなかった。


「お前のせいでデリュージョンさまの心は再び折れた、この裏切り者!」


拳は目では見えないほど早すぎる。一秒に全身を打つ拳に、神様は後ろへさがった。


「今のお前にはデリュージョンさまに会う資格などない!」

「ああ、確かに。」


辛いため息の先、神様は妙な微笑みを浮かべる。


「それとも俺は、あいつに会いたい!」

「調子に乗るな!」

「乗るんだ、何度も!」


歯を食いしばる神様のまわりに、白いオーラができた。


「あいつに会うまで、ぜってぇ諦めねえ!」


銀色の光が視野が狭くする。突然の爆音がした方へ向いた二人は倒れたヘイトとヘイトの胸ぐらをつかんでる神様を見つけた。


「おい、アホ神!」


拳を握り締め、止めをさそうとした神様が二人を振り向いた。


「なにしてんだよ、早く行こうぜ!」

「神様、急ぐっす!」

「全ては決着をつけてからだ!」

「その決着が、愛香さんより大事なんすか?」


動揺する瞳に告げる忠告。それは、今までの苦しみより大きな衝撃を齎した。


「しっかりするっす。そして今できることをやるっす!」


その言葉は神様を現実へ戻した。今ヘイトを倒しても、彼女は戻ってこない。冷たい現実を自覚した神様は手を下ろして、走り出した。一番愛するものがいる場所へ

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