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第十六話 ▶FUTURE EIGHT。交わる思い、神様に届け!◀

きっと、気持だけは同じ。




第十六話 ▶FUTURE EIGHT。交わる思い、神様に届け!◀




暗くて真っ先さえ見えない夜、大きな木の下。神様は幸せだった過去を思いだし、今を嘆いて、未来を怖がっていた。


「どうすりゃいいんだ…。」


歯を食いしばり、拳を握ったら、頬を伝う涙が一粒。悔しくて木を撃っても、何にも答えは出ない。変わらない。


「どうすりゃあいつの側に要られるんだ!」

「そんなに戻りたいのか、あの方の側へ。」

「ヘイト?」


三幹部の一人・ヘイトが眼鏡を外した。何時のまに来たのかは、そんなことは気にしなかった。大事なのは今、女帝・デリュージョンの見方が神様と合うため人間界まできた事であった。


「ヘイト、聞いてくれ!俺はただ、あいつのために…。」

「あの方がお前の力を望んでいる。」

「デ、デリュージョンが?」


信じられなかった。女帝・デリュージョンは今まで神様を裏切り者扱いした。なのに今更力が要るだと言う訳がなかった。でも神様は、女帝・デリュージョンに呼ばれたことだけで、嬉しくて、仕方なくて、そんなことまで考える余裕が無かった。ただ、女帝・デリュージョンの側にいられる。それが大事だった。


「でも、お前の力で果たして出来るのか…。」

「なんでもやるさ!」


神様の叫びが響いた。


「あいつのためなら、この命が尽きるまでだ!」

「なるほど、それがお前の覚悟か。」

「ああ、だから何でも任せろ!」

「この町の戦士達を殺せ。」


神様は驚いて、口を開いても言葉が出なかった。


「おい、ちょっと待てよ!クラッシュ、いや、出来愛子はあいつの…!」

「やはり、お前には無理か。」

「ち、ちがうんだ!」


ポータルを開いたヘイトを神様が引き留めた。ポータルの中へ向かうヘイトは意地悪し笑いをしていた。まるで、神様が引き留める事を待っていたように。


「ならこれを使え。」

「それは…?」

「イリュージョン・フィールドだ。使えばマジプロ達の力を弱めることが出来る。」


ヘイトが神様に黒いキューブを渡した。


「明後日の夜まで、マジプロ達を殺せ。そしてまた話そう。」

「約束を破るな。」

「お前こそ。」


神様は切なくポータルの中を見た。女帝・デリュージョンに断れてから、神様は妄想帝国へ許されたことが無かった。


「明後日まで、あいつは頼んだぜ。」


ヘイトは答えなかった。答える必要が無いと思った。だって、明後日になったら、神様は自滅しているはずだから。


「戻ったのかい?」


帰ってきたヘイトをフィルムが迎えた。


「神のやつは?」

「簡単に騙した。」

「まあ、誰よりデリュージョン様を従ったやつだから。でも、あんな嘘に騙されるとは思わなった。可哀想に。」


ヘイトは何も言えなかった。でも、そのねばねばする笑いを見たフィルムは、ヘイトが自分の話を聞いていることを気付いた。


「でも、デリュージョン様、怒らないかな?」

「何故そう思う。」

「随分地球の神とは仲よかったんじゃ。何よりお前、デリュージョン様の望みだって自分の望みいいやがって。」

「あの方のためだ。デリュージョン様に地球の神は似合わない。」

「お前もさ。」


彼をすれ違い、フィルムは肩をそびやかした。ヘイトはそのまま、口を結んでしまった。怒ったわけではなかった。ただ、切なく見えた。


一方、ウィルヘルミーナは夜空を見上げ、ため息を吐いていた。神様は敵。地球を捨てた裏切り者であった。でも、そうだからって、もう好きになってしまった心を取り消すことは出来なかった。


「どうすればいいっすか、この想い。」


始めて出来た友達の愛子とみかさのためにも、きっと神様は倒すべき。でも、心はどっちも消したくないと叫んでいた。エリミネートの名に恥ずかしいぐらい。


「あの時、一人ぼっちだった自分をこの町に含めたのは神様の言葉っす。だから、ちゃんと話せば、わかってくれるかも知らないっす。」


言葉には力がある。強い願いと真なる心がぶつかりあって、人は変わる。それを誰かは奇跡と呼んだ。


「自分、神様も幸せになって欲しいっす。だから頑張るっす!」


全ての生き物の幸せを望み、ウィルヘルミーナは眠りについた。明日、どんな辛さと出会うか、わからないまま。


ウィルヘルミーナはいつも朝早く起きた。散歩はしたいが、人たちの視線が怖い。けれど、朝なら人がいない。見られることもない。だから、無理やりに早起きした。


(今日も晴れたっすね!気持いいっす!)


ウィルヘルミーナは不図、丘を見上げた。かげろう見たいに、神様はそこにいた。驚いたウィルヘルミーナは神様の元へ急いだ。


「神様!」


自分を追い掛けたウィルヘルミーナを、神様はただ、見下ろした。まるでウィルヘルミーナが来ることを最初からわかっていたようだった。


「大丈夫っすか?心配したっす。」

「心配?おのれが俺を?」

「そんな辛そうな顔見たら、心配になること決まってるっす!」

「嘘だろう。」

「え…。」

「町の人々から苛められ、人嫌いになったおのれに、誰かの心配をする余裕なんかあるわけない。」


波打つように、ウィルヘルミーナの瞳が激しく揺れた。比べて、神様の視線は静かだ。まるで、沈んでしまったように。その視線が切なすぎて、ウィルヘルミーナは、ついに真実を話すことを決める。


「そうっす。自分、自己中で、エゴイストで、自分のことばっかり心配したっす。」


さ迷う心とは違い、言葉が出る。水を得た魚のように、流れて行く。この心はもう、止められない。


「だけど、神様と愛子、みかさちゃんが扉開いてくれたっす。嬉しかったっす。当たり前っす。一人ぼっちは誰もが嫌がるっす。」

「泣かせちゃうな。」

「だから三人のことが心配になるっす。だって、大好きっすから。」

「好きだと?この俺を?」

「はいっす。」

「ふざけんな。」

「嘘じゃないっす!」

「なら、俺のため死んでもらえるか。」

「それは…。」

「出来ないのか?」

「だって、自分…!」

「俺なら出来る。」

「え…?」


神様の呟きが届いたのか。ウィルヘルミーナは目を丸くした。


「おのれは自分勝手な恋をし、それとも自分を守ろうとする。なんて愚かな者だ。」


神様はウィルヘルミーナを責めた。神様への全ての思いが否定されたウィルヘルミーナは唇を噛むしかなかった。


「違う!」


胸苦しい思いに拉げる瞬間、どこかで、友の声が聞こえてきた。クラッシュとインターセプトの参上に誰よりも喜んだのはウィルヘルミーナであった。


「ウィルヘルミーナちゃんの思いは本物だよ!」

「その複雑な気持を、自分を愛するより人に頼ることを決めたお前にはわかるわけないが。」

「おのれ!」

「自分を愛せない者に人を愛する資格はねえ!」


神様はインターセプトの話しに歯を食いしばった。


「命をかけた愛をおのれはしらん。」

「全く言葉が通じねえ。」

「同感だ。」

「ならばわかってくれるまでだ!」

「今日こそ、己れらの未来を奪ってやる!」


神様はポケットに仕舞い込んだキューブを取りだし、空に向けて飛ばした。すると、クラッシュ達の回りが影に飲み込まれた。


「これは…!」

「これこそイリュージョン・フィールド。マジプロの力を半分にする。」

「半分ですって?」

「汚いぜ!」

「構わん。俺は、どうしても奴のそばに立つ。立って見せる!」


神様はクラッシュ達に躍り掛かった。その前をインターセプトが阻んだ。


「インターセプト!」

「何しやがってる、お前も早く変身しろ!」

「は、はいっす!」

「させるか!」


ウィルヘルミーナがカード読みを取り出したが、神様の攻撃を避けるためカードを落としてしまった。神様はエリミネートのカードを踏み躙った。


「カードが!」


壊れたカードを見て、ウィルヘルミーナは座り込んだ。神様はすぐ絶望する心をあざ笑った。瞬間、クラッシュが神様に飛びかかった。神様は逃げもしなかった。ただ、クラッシュの手を掴んだ。マジプロの力が半分になった今、怖がるのは何もなかった。


「弱い。」

「くっ…!」


クラッシュが握られた神様の手から抜け出すため足掻いたが、指一本も動けなかった。神様が暗いエネルギーを集めた。たぶんそれをクラッシュに飛ばす気のようだった。インターセプトが早く神様の腕を蹴った。神様の力が緩んだ時、クラッシュはようやく抜け出した。


「もうやめ…。」


ウィルヘルミーナが神様を止めた。だが、神様は後ろも見ずエネルギーを投げ出した。驚いたクラッシュを置いて、インターセプトが舞い上がった。インターセプトは攻撃を大きなシールドで止めた。


「こいつ、本気だ!」

「え?」

「まじ殺す気だ、俺達を!」


インターセプトのシールドが破れた。インターセプトはフィールドの果てまで押し出された。煙のなか、クラッシュが神様を狙った。


「マジプロ!クラッシュ・ザ・シャドウ!」


神様は避けなかった。やっと倒したと思った時、砂嵐の中、神様が出てきた。怪我されないまま、何気なく。


「それは影を剥ぎ取るための攻撃だ。彼奴には通じなかったが…。」


見る者まで辛くする、苦しそうな顔であった。ウィルヘルミーナは目をじっと閉じ、また開けた。


「いつも彼奴、彼奴って、そんなに大事なんですか、デリュージョンが?」


神様の足跡が止まった。ためらう唇が、時間を刻む。果てなく流れる時の中、神様は作り笑いをした。


「ああ、大事さ。俺の未来と引き替えたいぐらい。」


辛そうな過去を思いながら、神様は顔をしかめた。


「彼奴が言った。マジプロの時間を消し去ったら、俺をまた受け入れてくれるって。」


神様は自分の罪深き手を見た。汚れて、穢しても、守りたい。そう思うから、何度も歯を食いしばった。拳を握った。


「俺は彼奴に罪を犯した。己れが何度立ちはだかっても、俺は歩き続ける。俺の罪を償うために!」

「だからって、マジプロの、地球の敵になるまでは…。」

「かまわん!俺の正義は彼奴だ!」

「そんな無茶…。」

「あるんだよ、こんな生き方も!」


神様はウィルヘルミーナを見下ろした。


「特に己れ。」

「え。」

「あったばかりの俺に恋に落ちたと言えるのかい?」

「軽く見るんじゃないっす!」

「愛は相手の全てを受け入れるのだ。痛みも憎しみも同じ。己れ、俺の何をしる。何を受け入れる。」

「自分を勝手にこの町の一員にした貴方っす。それが、格好良くて、堪らないっす!」

「!」


神様はたじろいだ。ウィルヘルミーナの姿から、自分の過去を見たから。驚いた神様の後ろから、真っ赤なカードが光を出した。


「カードが反応してる…。」


壊れたカードが一つになって、ウィルヘルミーナの元へ戻った。ウィルヘルミーナがエリミネートになった瞬間、突然フィールドが崩れ始めた。


「なに?!」


神様も予想できなかったことだった。青ざめた神様が急いでヘイトを呼んだ。ヘイトは、フィールドの外から四人を見ていた。


「あの方はお前までいなくなって欲しがってる。」

「なん、だと?」


顔色なしの神様はショックで口籠った。それを見ているヘイトは大笑いしたかったが、我慢した。これが全部自分の罠だと気付いたら困るから、女帝・デリュージョンの忠実な手下を演じ続けた。


「それが、本当に彼奴の意思なのかい…?」


ヘイトはなにも言えなかった。Yesじゃ嘘になるし、Noとは答えたくなかった。だから、神様の自滅をただ見つめていた。


「そう、なのか…。」


絶望の色が深まった。その濃い色は、恋心と引き替え、だんだん小さくなってきた。


「ならばかまわん。この町のマジプロ達と共に消え去ってやる。それで、彼奴が幸せになれるなら…。」


神様は言葉を継ぐことが出来なかった。エリミネートが、平手で神様の頬を打っただけであった。


「いいっすか?このまま終わってしまえば、貴方はあの人ともう会えなくなるっす!」


神様はボぼうっとエリミネートを見上げた。


「あの人がそんなに大事なら、生きて、生き残って、そしてまた笑いながらこんにちはを言うっす!」

「大事…。」

「そうっす、大事なら、口だけで言わないっす!自分の手で掴み取るっす!」

「そう、俺は彼奴の笑顔が見たい。見るまで、死んでたまるか!」

「やっと、人らしくなったっすね。」


エリミネートは笑いながら手を伸ばした。


「ここから抜け出すっす!」

「でも、どうやって…。」

「力を合わせたら、なんだって出来るんだ!」


インターセプトがクラッシュを助け起こした。


「そう、絆は、奇跡だから!」


インターセプトを支えて、クラッシュは一歩ずつ歩いた。二人は力を尽し、動くことが精一杯だった。


「行くっす。未来へ。」

「未来…。」


未来、それは不思議な力を持つ単語。希望を与える言葉。忘れていた過去の幸せを思い出させる魔法だった。


「じゃ、始まるっす!」


エリミネートが力を集めた。神様も、エネルギーを凝縮させた。


「マジプロ!エリミネート・ザ・スレット!」

「食らえぇえ!」


二つの攻撃が同じ場所を狙った。その力に、フィールドは持ち堪えること出来なかった。壊れたフィールドの中を、エリミネート達は切り抜けた。


「困ったな…。」


それを見ていたヘイトは、顔をしかめた。マジプロを倒せず、むしろ神様まで敵にした、最悪のケースだった。


「でも構わない。これでもう、神の奴はあのお方に近づけない…。」


ヘイトが消えた場所に闇が訪れた。その影は自分さえ飲み込むような、強大な暗闇であった。


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