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「お、おいルカ。お前マリリン中佐とどういう関係だよ……!」
「ほんまや!こないだからちょっと思っとったけど、ただの昔の知り合いやって言うてたやんけ!」
いつの間にか僕の隣に立っていた二人が、小声で僕に訴える。
二人とも狼狽えた様子で顔を真っ赤にしている。
……うん、なにがあった?
「だからマリたんとはただの旧友だよ?」
「いや友達って雰囲気じゃなかっただろ今のは!つ、付き合ってんのかよ…?」
「お前があんな柔らかく微笑むん初めて見たわ……ルカ、もしかしてマリリン中佐のこと好きなんか…?!」
はい?
なんでそうなった?
どう見てもただのガールズトークだっただろ……ってああ、そういえば今、僕男の格好なんだった。
ついいつも二人きりのときの調子で可愛いだの綺麗だの言ってしまったけど、男の姿だと口説いてるように見えなくもないか。
「うふふ、ルカちゃんとは本当にただのお友達よ」
マリたんがおかしそうに笑い声をあげ、ヨルグとブラッドが気まずそうに目を逸らす。
そもそも僕とマリたんって……うん、考えたこともなかったな。
ていうかマリたん、好きな人いるし。
「ところでマリたん、なんでこっちにいるの?」
さっきから疑問だったことを問う。
中央本部基地には寮が二つあって、僕たち新入りや将校位を持たない軍人たちが住まうのがここ、一般棟。
もう一つが、将校クラスの軍人たちが住まう将校棟がある。
言わずもがな、中佐であるマリたんは将校棟だ。
「うふふ、決まってるじゃない。ハントしに来たのよ。今夜どう?ブラッドちゃん」
「ち、ちゃう人当たってください……」
そう言ったマリたんの目はハンターのソレだ。
ギラギラしてる。
対して、ロックオンされたブラッドは、まるで肉食中に怯えるウサギだ。
「やだあ、そんなに怖がらないで?冗談よ。アタシだって嫌がる子を無理やり襲ったりしないわよ?」
「………」
「そんな胡散臭そうな目で見ないでよ~。こないだのは困った様子が可愛くてつい襲っちゃったのよ。ごめんなさいね」
つい、で襲われてたまるか!って顔だが、上官ゆえに強く言えないブラッドがそろそろ可哀想になってきたので助け舟を出してあげることにした。
と、
「まって!もうこんな時間じゃない!アタシもう行かなきゃ!」
急に時計を見て焦りだしたマリたんに、つられて時計をみればあと数分で訓練が始まる時刻。
………。
え?まだ食べ始めたところなんだけど?
「ルカちゃんも気をつけなさいよ!男は狼なんだからっ」
パチン、と手慣れたウインクをして嵐のようにマリたんは去っていった。
実際超肉食の狼、マリたんが言うと説得力あるな……。