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食堂に着けば、見慣れた顔を見つけた。



「何やってんねんお前ら。こっちまで声聞こえとったぞ」



呆れたように僕たちを見るのは、僕たちと同じく新入りの軍人ブラッド。



肩まである深緋色の髪はハーフアップにされ、女の子が好きそうな整った甘い顔。


目元にある泣き黒子に、軍服の下のシャツは軽く着崩されて開いた胸元は、

とても同い年だとは思えない色気を醸し出している。



「ほんっと寝起きの寝惚けてるヨルグの可愛さをブラッドにも見てほしい。尊すぎて死ねるから。……いや、やっぱブラッドはだめだ。ヨルグが妊娠しちゃう」


「するわけねーだろ、アホか」



バシッと容赦なく頭を叩かれる。


出会ってまだ一か月しかたってないっていうのに、どんどん僕の扱いがひどくなっていくのを感じる。

出会った当初はもっと優しかったのに。



「ルカは俺のことなんやとおもてんの?」



にっこりと笑うブラッド。


………目が笑ってないんですけど。


だが、これに関しては言わせてもらう。



「歩く十八禁」 


「お前ほんま犯すぞ」



片手で両頬を潰されるように掴まれ、至近距離で睨まれる。


やべえコイツ。目がマジだ。


ギラギラした肉食獣のような目で見られ、背筋がゾクゾクする。



「ヨ、ヨルグ!ヨルグのことは僕が守るから!ブラッド、お前ヨルグになんか変なことしてみろよ?マリたんの部屋にぶっこむからな!」


「俺はヨルグやなくてお前に言うたんやけど?つか、シャレならへんから冗談でも言うなや。なんでお前マリリン中佐と仲良いねん。『マリたん』ってなんやねん、友達か」



マリたん。本名マリリン。階級は中佐。


軍部の中でもまあまあな地位にいるカノジョを『マリたん』なんて愛称で呼ぶのは、僕が王国軍に入る前からの知り合いだからだ。



当然、マリたんには僕が女の子だってことを知っているわけで。


入隊してすぐの頃、偶然にも再会したときは非常に焦ったが、昔助けてあげた貸しがあったため黙っててくれることを条件に貸し借りチャラにしてもらった。


マリたんが律儀なオンナでよかった。




話は戻るが、


見た目は超がつくほどの美女なマリたんをブラッドがここまで怯えるのには理由がある。



マリたんはイケメンが大好物の男だ。 


………そう、いわゆるオネエなのだ。



美女なマリたんの容姿に騙されて、部屋に連れ込まれ食われたマリたん好みのイケメンは数知れず。


すでにマリたんを見た目通りの美女だと思った新入りの軍人たちが数人、食われたとか、食われてないとか。




マリたんに怯えているブラッドもそうだ。


つい数週間前、マリたんに部屋に連れ込まれて押し倒されてたところを、たまたまマリたんの部屋を訪ねた僕が助けてあげたのだ。



「僕がいなかったらブラッドなんか今頃、マリたんに食われてるんだからな!」


「俺はあん時お前が見て見ぬ振りしようとしたこと忘れてへんからな」


「ええ?助けてあげたんじゃん」



やだ、この子。すごく根に持ってる。



なんせブラッドの容姿はマリたんの好みど真ん中だったらしくて、かなり強引に部屋に連れ込まれたらしい。


ブラッドもブラッドで、上官であるマリたんを無下に扱うこともできず、見た目に反してパワータイプのマリたんに力負けし、押し倒されていたところ、ちょうど部屋を訪ねてきた僕とばっちり目が合った。


ベッドに押し倒されていかにも今からおっぱじめます、といった場面に、

数秒間考えたあと、「お邪魔しましたー」と華麗に去ろうとした。


が、ブラッドの涙目での必死の訴えにしゃーなし助けてやった。



これが、ブラッドとの出会いである。


そこからなんとなく、ヨルグもあわせた三人でつるむようになって今に至る。




「マリリン中佐って言えば、あの人本当に男なんだよな?遠目でしか見たことねえけどいまだに信じらんねえよ」



そうヨルグが言うけど、


僕からすればヨルグのほうが信じられないからね?


なんなの?その天使さ。


大天使ヨルグたんがエンジェルすぎて、まだ一か月だっていうのにどこにも嫁に出したくないっていう父性が芽生えてきたんですけどなにか?



「俺もあの日まではそう思ってたわ……」



遠い目をするブラッドは、あの日から筋トレに勤しんでいるんだとか。

よっぽど、力負けして連れ込まれて押し倒されたのがショックだったんだろう。


マリたん、着痩せしてるけど、細マッチョだからなー。

ああ見えてパワータイプだし。




「あら、アタシの話かしら?」



女性のように高くて、それでいて落ち着いた声がして、

正面に座っていたブラッドが僕たちの後ろを見て「ひっ」と声をあげた。


それを見て、僕とヨルグは振り返った。


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