エラーリスト その1
今年で三十六を迎え、愛しい妻と、可愛い子ども二人に囲まれ、仕事も業績を伸ばし、それなりの地位を手に入れて一戸建ての住宅を買った。何不自由ない生活。今までの苦労が嘘だったかのように幸せな時間が流れている。
庭で楽しそうに遊ぶ子どもたちを少し離れた所で私は眺めていた。
「あなた、何しているの?」
「ああ、いや、こんなに幸せでいいのかなってさ」
リビングから隣接する窓際の壁にもたれて微笑んでいると、妻がエプロンで手を拭きながら横に立っていた。
「今まで苦労してきたんだから、ちょっとのご褒美くらい貰わないとね」
子どもを優しく見つめながら微笑む彼女もまた愛おしい。私の人生はこの瞬間の為にあったのだと胸を張って言える。高校、大学、就職してから、本当に辛い時も楽しい時も苦楽を共にしてきたパートナーであり、最愛の妻であり親友のような、私にとって特別な存在だ。
「そうそう、あなた、ご飯ができたから子どもたちを連れてきてくれないかしら?」
「おお、もうそんな時間か。呼んでくるよ」
落ち葉を集めて遊んでいる子どもたちの方へと歩き出し、私は声をかけた。
「さ、ごはんが出来たから戻ろう」
「えー、やだー!」
「もうちょっと遊ぶー!」
「だーめ」
落ち葉をクッションに寝転がる二人を一人ずつ両脇に抱え、くすぐったいと笑う子どもの笑顔に心が和んでいく。小さな暴れん坊たちを抱えたまま私はその場でくるくると回ると、より一層子どもたちは嬉々とした。笑いながらも私の腕を振り払おうとする二人をしっかりと抱きかかえリビングへ向かおうとした。
「いやぁ!」
部屋の中から彼女の叫び声にハッとして立ち止まると次に銃声が響き渡った。窓付近に取り付けられたカーテンには真っ赤な花火のような模様が出来上がっていた。私は動けなかった。子どもは依然として笑っている。かさかさと枯れた草の踏みつけられる音を背後に感じて振り向いた時、私の視界は暗転した。
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