最終話 あたしが望むもの
あたしがドラゴンに聞いたのは、「いつか、あたしの夢が叶うか」だった。
あたしの生きている間じゃなくてもいい。
いつか、カルアが一般家庭で食べられるぐらい安価になればいいと願っている。
精霊が気に入るような人々か増えれば、世界は平和なはず。
戦争で儲ける商人が多いせいで火種は火事になるけど、長い目で見れば文化も技能を持つ人も失われてしまう。
人が少なくなれば、商品の質も悪くなる。
いいことなしだ。
かと言って、人が増えすぎても良くない。
自然と人工のバランスが取れているのが理想だ。
頑張っているメルリルには悪いけど、国なんか百害あって一利なしだ。
どんなにいい治世の王も公正な裁判官も、百年生きられない。次代が優秀である保証なんてない。
だから、この世界を愛して守ってくれるドラゴンが欲しい。
彼らに、この世界の王や裁判官になって欲しいのだ。あたしは、何千年もひとつの方針が守られ続ければ、
戦争という概念自体が無くなってしまうんじゃないかと考えている。
そんな世界なら、カルアが庶民の食卓に登るに違いない。
ぜひともランに人間の上位種として、この世界生まれのドラゴンを産んで欲しい。
親友の地位を利用してても、必ずジャウラに本懐を遂げてもらうつもりだ。
それであたしの「いつか」が来る。
ドラゴンが視た未来を引き寄せるためにも、ランに教育を施さなくてはならない。
子は親の背を見て育つって言うじゃない?
ましてや、小さな頃に亡くなった母の願いだったらどう?
ここばかりはドラゴンに比べて短い一生なのが効いてくる。
ジャウラが禁止しているせいで、直接ロムに転移することが出来ないから、頼みの綱は手紙だ。
いかに政治的な部分を避けながら、矛盾と不正に対する義憤を育てられるか。
国というものの害を、世界を区切らない未来にどう繋げていこうか。
あたしの望みって小さいけど、世界を変えなきゃ叶わない。
だったら世界に変わってもらうまで。
あたしの腕の見せ所だ。




