表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/26

第23話 主人と脱走娘

叩き出した妹は、ツテを頼って父親の元に帰ろうとした。

ケットは娘をうちの農園に送るようにその商人に頼んだらしく、ただ今その商人を案内してまわっている。

迷惑料としては十分だ。

うちの販路の弱い地方への商隊長なので、契約が整えば(もう)け物だし、破談しても顔つなぎとしての成果は残る。

脱走娘は、農作業に戻した。

自分がしたことがどういうことなのか理解しているのかどうかは知らない。

ただ、主人の権力というものを知っただろう。

あたしに付いてまわっていた姉は、妹がしたことの意味も考えずに「しゃべった」ので提出紙とペンを取り上げた。

書いてみれば妹のしたことに気づけたかも知れないのに、情に流されて言いつけに逆らった。

書かないなら、紙もペンもいらない。

妹が脱走中の二日間、しゃべることも書くことも禁じられた姉は、机の隅に置かれたそれらに()えているだろうに、視線を意識して外そうとしている。なかなか精神力が(きた)えられてきたみたいだ。

脱走娘が帰ってきたことだし、解禁してもいいかな。

あたしは、姉に紙とペンを渡し、主人と使用人の正しい距離についての考察をするように宿題を出した。

姉は、飛びつきたいのを抑えて紙とペンを受け取る。

うん。だいぶん内心が顔に出なくなってきた。

どんな状況でも、商売人は付け入る(すき)を与えないように平静を崩してはならない。

妹は姉が楽をしているとふくれているけど、本当のところは逆だ。

姉は、勝手気ままに迷惑をかける妹の分まで責任を背負わされて、主人の苦労をしている。

使用人のヘマは、主人の落ち度になる。

今回のことで、ヘマをしないように育てることが、主人の役目だということが分かっただろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ