第21話 ホクロ姉妹
能無し夫婦には、海辺の古屋を買い与えた。
今後のことも考えて、一帯に「子供たちを食い物にしたうえ破産して、都落ちしてきた夫婦」で、
「そんな親でも、子供たちがなけなしの金を出し合って、親に家を買ってやった」という事実を流布させた。
二度と金を借りられないように手を打って、当座に必要なものと、釣り船と釣具を持たせて縁を切った。
時々、死んでないか確かめるだけの間柄だ。
これらの支度をするだけでミッツ商会に避難しておいた金も尽きてしまったから、金のなる木である
ケットの娘たちは大歓迎だ。
予想通りのワガママ娘で、転移してきた瞬間から文句の言いっぱなし。
ケットが、あたしに預けたのも納得だ。
二人は双子で、姉の目元のホクロさえなければ見分けがつかない。
兄たちも、区別がつかないらしい。
それを利用して、いたずらの限りを尽くしてきたって感じだ。
あたしの目から見て、ホクロは、付けボクロだ。
わざと目立つ位置(目元・口元)につけて、付けているほうが「姉」としている。
男には通じても、過去にメルリルとその手の化粧術を駆使して遊んだあたしの目は誤魔化されない。
どうせ、「一日ごとに交代しよう」とか取り決めをしているだろう。
ただの農作業員と経営者では、労働時間、労働内容、食事、休憩時間・・・ありとあらゆるものが、違う。
そんな甘い取り決めが、いつまでもつか楽しみだ。
きつい農作業を当てられた妹が、ずっと「姉」として経営を学びたいと、姉を羨まない訳がない。
家政の者が呼びに来たので行くと、引っかいたり張り倒したり、お互いの髪を引き抜かんばかりの大喧嘩だった。
一週間はもつだろうと思っていたら、五日目にはこの騒ぎ。
根性なさすぎ。
よく見れば、どちらの目元にもホクロがある。
ギャーギャー怒鳴りあって、「私が姉よ」と見苦しいったらない。
あたしは親には恵まれなかったけど、兄弟には恵まれている。
ケットの娘たちを見ていて、そのありがたさを噛み締めた。




