第17話 これを親と呼べるのか
産んでもらった恩って、いくらだろう?
二人に対する借りって言ったら、産んでもらった事ぐらいしか思いつかない。
何しろあたしには、ダンとトワイスに育ててもらった記憶がない。
物心付いた頃には兄たちが順番で世話してくれていたし、4歳からは学校の寮で、二人に会いに行ったことはあっても、会いに来てくれたことは一度もない。
まだ学生だった兄たちに農園を押し付けて、王都で遊び暮らして自分たちの財産どころか、子供たちの財産まで食いつぶした挙句権利の二重売りの詐欺を働いた。
これで、親って言える?
親失格の二人だけど、完全に縁を切るには信じられない量の書類を調えて裁判所に提出して、面談を経て、
結審を受けなくては認められない。
親権の失効を受けるまでには時間がかかるから、破産したダンとトワイスが金の無心に来たときには、親として扱わなくてはならない。
あたしたちにあんな事したのに、親というだけで受け入れなくちゃならないなんて、間違ってる。
ただ、あたしたちにも弱みがある。
二人が身を持ち崩したそもそもの始まりは、あたしを裏口入学させるために農園の権利を売った事だ。
おかげで、メルリルと知り合えたし、王家御用達にもなれた。
田舎者が刺激的な都会暮らしに溺れて金が尽きた時、二度目だったから、残りの権利を売ることへの罪悪感のハードルが低かったんだろう。プラス要素とマイナス要素が交じり合っているから、そこを突かれると弱い。
けど、詐欺で牢獄行きを救った今なら有利に交渉できる。
二人がきっぱり商売から手を引いて、死ぬまで田舎で暮らすというなら生活費を支給してもいい。
あたしたちを産み出してくれたことへの謝礼としてなら、我慢できる。
ミッツ商会への支払いを優先した上で、農園の収支からあたしたちの生活費を取ったら、たいして残らないけど、
あの二人には十分すぎるぐらいだ。
ことの顛末を恥じて消えてくれるのが一番うれしいけど、ありえないと思う。
きっと、現れるだろう。
何て言って出迎えてやろうか?
嫌味を言って、通じるくらい羞恥心が残っていればいいんだけど。




