第15話 差し押さえ
ふつうに農園の権利を買い戻すのでは、寄生虫を駆除できない。
代理人を立ててミッツ商会というダミー会社を作り、そこに散らばった権利を買い集めさせた。
一般の人はあまり知らないだろうけど、カルアは精霊が宿る木だと言われている。
ただカルアの種を植えても、芽は出ない。カルアと通じ合える人がいて、ようやく発芽するのだ。
カルア農園は、畝の数でわかる。
まず一畝から始まり、農園が代替わりするとき、畑を一畝分耕す。
農園が次代の者の手に移ることを畑で宣言し、精霊が後継者を認めれば、次の朝には一畝分の新しい芽が生える。反対に、後継者が気に入らなければ、一畝分の木が枯れる。
何代目で畝の数がいくつかが、農園の成功の指標になるのだ。
祖父母から、ダンとトワイスに移ったとき、木が枯れた。これらのことを世間話に混ぜて、どんどん枯れて農園の価値がなくなる危険を匂わせると、カルア農園経営の難しさを知った権利者達と、適正価格で売買契約が成立した。
浮いた分は堅い投資にまわし、微々たるものだけど、確実な収入源を確保した。
次に裁判官を買収して(あとで、メルリルにちくった)、農園の差し押さえ手続きをした。
ミッツ商会を通じて、農園の差し押さえを実行。
あっという間に、あたしたちは親の散財によって住む家を無くしたかわいそうな子供たちになった。
厳しい差し押さえで、バック一個分の私物以外は何も持ち出せなかったから、近所の農家の納屋の一角にお情けで置いてもらった。農園は、従業員が継続雇用されているので何とかなる。
あとはメルリルによって、ワイロ裁判官が弾劾されるのを待つだけだ。
裁判官の仕事が検証されたら、あたしたちの元に農園が戻ってくる。
対外的には半分だけど、実質的にはすべての権利があたしたちのものになるのだ。
その日まで日雇い仕事で食いつなぐ。
悪い噂ほどおいしく、すばやい。
我が子の財産まで食いつぶしたことは、すぐに知れ渡っただろう。
上流でもっとも嫌われるのは破産だ。
あたしがダンとトワイスに下した罰は、家族を捨てて選んだ世界からの絶縁。
今頃、ミッツ商会や、出入りの商人の差し押さえで身ひとつになっているはず。
自業自得だ。
まかり間違えば、あたしたちも破産していた。
彼らは、自己責任で何とかすればいい。あたしたちには、もう関係のない人達だ。




