第13話 起こらなかったこと
ミミコが来た。
あたしがサンサと婚約したのを聞きつけたらしい。
友達ヅラして、サンサが愛しているのは妹で、汚らわしい男だと言う。
それくらい知ってる。
「サンサを支えられると思うの」
ミミコは絶句していた。ミミコにとって、愛とは求められることなんだろう。
サンサは両親を追っ払ってくれた。
あたしが耐えられなくなる前に、両親を説得して王都に帰してくれた。
何かをしてしまわずに済んだ事を感謝している。
それ以上、サンサに求めるものはない。
ボンクラが見ていたせいで、滞った仕事を片付けるのは腹立たしいのとうれしいのとで混乱してしまう。
成長が落ち込んだのを怒る一方、両親の無能っぷりに笑いが止まらない。
農園はあたしのものだ。
すこしの情報で動く完璧な盾もある。成人を待つまでもないかも知れない。
メルリルとのやりとりで、彼女にも見合いの話が舞い込んできて、対応に苦慮しているという。
あちらは国益が関わるオオゴトだし、兼ね合いが難しいだろう。
ランからは、ド田舎の不便さも箒職人のマッコウがいることで帳消しだという手紙が来た。
伝書鳩として契約した使い魔のナンゴーが、メルリルとランを定期的にまわって手紙を集めてくれている。
ランには、サンサ宛ての手紙を書いてもらわないと。
契約の対価を払うのに親友を使うのは嫌だけど、サンサにきれるカードがこれだけだったのだから仕方ない。
問題は、ランに上手く真実をはぐらかした手紙が書けるかということだ。
指導が必要かも知れない。




