第12話 必要な距離
見合いの釣書が山になった。
ランとのツテをあたしに求めているんだろう。うざったい。
王都でのらくらしていた両親まで戻ってきて、釣書を比べてあーだこーだ言っている。
帰ってこなくていいのに。
両親不在の間、カルア農園はあたしのものだった。
なのに子供だというだけで、支配権は両親に行った。
帳簿を見ることも、注文をチェックすることもできないなんて、あたしの才能の無駄遣いもいいとこ。
二人を王都に戻すためなら、結婚できる。叶うなら長生きしそうにない男がいい。
結婚して跡継ぎの子ができたら、すみやかに死んでくれるような先の短い男がいたら、即結婚するんだけど。
あたしは、未亡人になりたい。
でもそうそう、都合のいい男はいない。とりあえず、利害が合うのを仮の婚約者として契約しよう。婚約期間を長く取って、あたしが成人した暁には農園の権利を奪ってやる。
あたしの経営によって、右肩上がりの成長を続けている農園を、ボンクラの手に置いておくつもりはない。
あたしは、サンサに手紙を書いた。
あたしと婚約してくださいと。
絶対、断らないと分かっていた。
サンサはすぐやってきた。
先は大臣かという男に、両親は狂喜乱舞して迎えている。両親へと残っていたわずかな想いさえ薄れた。
あたしを見れば、ただの契約婚約だと分かるだろうに、娘の幸せより、将来の期待できる婿がうれしいなんて。
両親にうんざりした。
はやく、あたしの目の前から消えて。
でないと、壊してしまいたくなる。




