第11話 謎
あたしは、ひとつの謎を追っている。
なぜ、ランのおじ・ユーニスはあそこまでランに尽くすのか?
彼が隠密長をやめたのが、ランが七歳の頃。サンサは九歳で、男が精通によって色気づき始める頃だ。
調べるまでもなく、妄想相手はランだろう。
特に怪我もなく、突然の引退だったというから、サンサからランを守るため・・・という可能性がある。
ただ、燃え尽きただけかもしれないが、若く健康な男の離職理由としてどうだろうか。
今も、すべての事情を兄夫婦から隠して、ランとド田舎暮らしをしている。食堂も、付き合い始めた女も、後に残して。
迷いがあったようには見えなかった。
「だったら、俺が保護者じゃ。兄貴たちには、風来に戻ると言っとく」
ユーニスは、ランの保護者として理想的な存在ではなかった。
彼が引き受けなければ、王家の世話した夫婦が仮親になっていただろう。
頭がいいんだから、自分が保護者になればランが見つかる可能性が高まるのも分かっていたはずだ。
それでも、強引に引き受けたのは何故だろう。自分の能力の方が、王家差し回しの者たちより優れているから?
それだけ?
あたしは四歳までオーレスにいたのに、ランに気づかなかったのはおかしい。というか、ありえない。
ランがオーレスに来たのがそれ以降だったら、あたしは王都にいた。入れ違いだ。
普通の子は、四・五歳までの記憶が曖昧だというからラン自体、オーレス生まれだと思い込んでいるとしたら?
書類上、ランはオーレス生まれになっていた。
あたしは、慎重に調べだした。書類は、ユーニスが細工したとしても、人の記憶はあなどれない。
乙女フィーバーに乗っかって、ランの家の周りに住む三十代以上の住人の話を聞いた結果は、一家四人で引っ越してきたということだった。その後、ユーニスが加わった。どこから越してきたのか聞くと、王都からだという。怪しすぎ。本当はどこから越してきたのか追跡調査していると、メルリルから「待った」が掛かった。
その先を調べると、ユーニスの網に引っかかると言う。
隠すのなら、隠すだけの理由がある。
顔立ちから言って、近い血縁なのは間違いないと思う。
おじなのか、父なのか、兄なのか。
・・・あたしは、ランの父親がユーニスではないかと思っている。
これの裏づけを取るのは難しい。情報操作のプロ相手に、どこまでやれるか分からない。
でも、謎のままにする気はない。
継続調査中だ。




