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第1話 私の欲しいもの

チルの印象が変わってしまうので、かわいいチルが好きな方は読まないことをオススメします。

世の中には、恵まれた人がいる。たとえば私。

家は大きなカルア農園経営。堅実に暮らしているから、けっこうな資産家だ。

兄弟は6人で、10歳離れた(いつ)つ子の兄。そして私は末っ子で女。

甘やかされ放題だ。

兄たちはかっこいいし、私もかわいい系でイケている。

容姿っていうのは、使える。

いたずらをしても(うる)んだ目をして唇を()みしめ、上目遣いでぷるぷる(ふる)えれば完璧。無罪放免だ。

私は頭も良かったので、すぐマスターして、両親・兄たちを翻弄(ほんろう)してやった。

もちろん、いたずらばっかりしていたらバレてしまうから、ここぞという時だけに使ったけどね。

さすがに、兄たちは私がただ可愛い子じゃないって薄々気が付いていたみたいだけど。

私があんまり愛らしかったから両親は、私の将来に野望を持った。

カルア園は立派だったけど王室御用達の農園ではなかったから、私を使ってそれを手に入れようとしたの。

ちょうど王家に同い年の姫君がいたから、彼女が入った花嫁学校に裏口入学させたのだ。

まだ、学生だった兄たちに農園をまかせて、三人で王都に移り住んだ。

学校は、退屈でしかたがなかった。

ただ、しっかりマナーを身につけて先生のお気に入りでいたほうが、いろいろやりやすかったから、成績はトップクラスを保ったけど。

そこでトップだったのは、メルリル姫。

王族のツテがあれば、さらにおもしろいことができる。

私は彼女を観察し、どう攻めようかと、取り巻きの力関係を(はか)っていたら、彼女が気づいた。

彼女も同じ穴の(むじな)だったって訳。

とたん、学校が楽しくなった。

あっというまに、悪友になった。先生の秘密を探り出したり、学校の七不思議を増やしたり減らしたり。

給食が支払った値段に見合わない気がしたので、調査して不正を(あば)いたり。

いい子の仮面の下で、法に触れるようなこともした。

いいこともたっぷりしたけどね。

おもしろいから・したかったからで、自分の喜びのためにしたんだけど、けっこう感謝されたはず。

本当に楽しかったけど、両親が私の嫁ぎ先を物色(ぶっしょく)し出したので終わらせることにした。

いわれるがまま嫁いだら、ひどい目にあう。

舅・姑・小姑に仕切られた家に奴隷奉公なんて冗談じゃない。

辛かったけど食事を減らして、見る間にガリガリの不健康体になった。

育ち盛りで身長が伸びていたからより哀れに見えた。

いまにも死にそうな姿になった娘に、両親は医者を頼った。

(ねら)い通り、転地療養を勧められて生家に戻ることに成功した。

あの子は体が弱いって噂のおかげで、結婚話も流れたし言うことなしの結末だった。

今回は逃れたけど、次はどうなるか。

私はカルア農園を継ぐ決意をした。

兄たちは農園で働くことは()けていても経営はイマイチだったから、すぐ賛成してくれた。

婿をもらえばいいよって。


王都のメルリルとは、文通友達でいろんな噂を仕入れては交換し合っている。

噂のウラを取ってみると陰謀がかくれていたりしていて楽しいのだ。


オーレスに戻って、まずしたことは、メルリルの半分でもいいから面白い子を探すこと。

そして見つけたのが渡辺ランだった。

家は小さいながら流行っている食堂で、小金持ち。天才の兄がひとり。(ただし、変態。)

もと、隠密長のおじ。(食堂の壁の情報コーナーの情報があまりにも正確なので探ってみたんだけど私には分からなかったので、メルリルから教えてもらった。探っていたのはしっかりバレてしまい、きっちり落とし前をつけさせられた。怒らせると怖い人。)

両親はウチと同じくふつう。

元気な、箒が大好きな普通の子。

なにかは分からないけど、()きつけられるものを持っていた。

4歳で王都にいったから、その前に会ったことがあるのかと記憶を探ったけれど覚えていなかった。

王都に行ったからメルリルにも会えたし、将来設計も出来たけど、休暇に帰って来るべきだったと後悔した。

ランには幼馴染の子がいて、彼女を独占していたからだ。

時々でも帰省していたら、ミミコの座にいるのは私だったはずだ。

オーレス学校に入学するまでに、ミミコを排除しなければ。


さぁ、ミミコ、覚悟してね。不相応な椅子に座っているあんたが悪い。


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