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purity  作者: RK RAMONE
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第5話 〜協調無くして死は栄えず〜

時は風のように過ぎ去り、私も成功と失敗を繰り返し成長していった。

私は8才になりちょうど三年生になっていた。日常の中でも少しずつ変化 が起き始めていた。"K"との別れ、それを境に私は女子達と距離を置くようになり男子達と遊ぶ事が多くなり、私は近所の少年サッカークラブに入 るようになった。男としての力を増すために。もしかしたら、今だから言える事は心の空白を埋めたかったのかもしれない。


サッカークラブへの誘いは、当時仲良くなっていた双子の友達からだった。一卵性双生児だった彼らは顔立ちが本当によく似ていて大人の人達は、見分けがつかなくてよく間違えていたりした。私達子供は見分けがしっかりついて、間違える事なく過ごしていた。ここでは、兄の方をY、弟の方をRと記そう。 2人とも性格はとても似ていて穏やかな性格であったが、2人とも人としての面白みは特出した部分はなく普通な子供だった。私は彼らをよく笑かし ていた。

私はくだらない冗談や奇想天外の言動をうまく巧みに使い分ける事ができるようになっていた。何故なんだろう?寂しかったからなのか、 現実をもっと愉快にしなくてはならなかったのか、わからないが私は喋るのが得意になっていた。私に兄弟はいない、周りの子供達は誰かしら兄か 弟がいた。私はいつも自分の頭の中でもう1人の自分と会話する事しかしていない。壁にボールをぶつけて1人でキャッチボールしているのに近い感 じだ。そんな行為も私は楽しんでいた。星と星がぶつかり合い爆発しそこにまた新たな星が生まれる。


そんな風に私は新たな言葉と喋りを覚えてい た。私は楽園から出始め一歩踏み出そうとしている。

今はもう、神も悪魔も必要ないのかもしれない、石像達もいつのまにか消えていた。


火曜の夜と土曜の夜、確かその日がサッカーの練習日だった気がする。私達はよく走りボールを追いかけては叫びながらサッカーを楽しんでいた。 皆真剣だった。私ですら真剣になった。身体を動かすと気分が良いのだ。興奮して神経が研ぎ澄まされて何よりもない気持ちになり、何も考える必 要がなくなる。そう、何も考える必要がなくなる。運動なんて特に好きでもなく、サッカーなんて知りもしなかった、私が今サッカーを通じて同じ 時間と空間を共有している。それが、素晴らしい事なのか、皮肉な事なのか私にはその時わからなかったが、楽しかったので良かったと思う。 体を動かしながらも私はよく悪態をついた。

「こんなクソボールじゃいくら蹴ったてゴールに入らなねぇよー」双子のYは返事を返す。

「ちゃんと足の甲で蹴らないと入らないぞ。」

至極真っ当な意見であった。私は反省せず悪態を続ける。

「いや、俺は悪くないね!誰かが俺のボー ルに呪いをかけたんだ!」

双子の弟が会話に混ざる。

「お前はもうちょっと努力して練習すれば上手くなるのに、、」

私はひねくれているので、努 力が嫌いだった。シュートを蹴るのが苦手だったのでDFをやる事が多かった。でも、私はDFが気に入っていた。シュートを決めに来る奴からボー ルを奪いさり、相手の攻めを妨害したりするのはとても楽しかった。何よりもチームに貢献しているのが誇らしかった。私が頑張っていれば皆私を 褒めてくれ私の存在を認めてもらえるから私は頑張って取組んだ。でも、練習はあまり真面目にやった覚えがないが、でもそれでまかなり通ったん だから良かったと思う。


この時期が1番精神的に落ちついていた。確かに支離滅裂なのは変わりないが、度が過ぎたりせず問題を起こしたりせず周 りとの協調を計っていた。子供達のルール、いや社会のルールを学んだのかもしれない、、


私は一度だけフリーキックでゴールを決めた、事がある。夜隣町のクラブチームと練習試合をした時だった。同点でロスタイムの時だった。ゴール との距離はそんなに離れていなかったが。初めて蹴る私からしてみれば結構な距離だった。普段なら私のチームのエースが蹴るのだが、途中怪我を して控えになっていた。監督は何故だかわからないが私を指名し蹴るよう指示をだす。私は緊張したが拒否はせず、思いっきりボールを蹴った。双 子のYの助言通り、足の甲で蹴って。ボールは右斜め上に飛んでいきネットを揺らした。相手のキーパーは外れると思い動かなかった。一瞬の出来 事。相手のチームは呆然とし、チームメイトが駆け寄ってきて私達は歓声を上げた。監督も喜び私の両親も喜んでいた。私は調子に乗りすぎて、ふざけた言葉を吐きまくった。


「ざまあみやがれ、アホ共め!お前達は能無しのカカシだ!」


相手のチームは何も言ってこない。

「やったぜ!クソ共め!俺の名前を忘れるなよ!」

チームメイトは笑っている、喜びを共有しているのだ。

「お前達のママのオッパイを噛みちぎってやる。」

監督も爆笑していた。とても気持ちが良かった。自分を皆が認めてくれて褒め称えてもらえる。そうだ、これがヒーローになるって事なのか、、 「やっぱりKの言ってた事は正しかったなぁ、、」彼女の姿が一瞬頭をよぎる。笑った時に口元から少し尖った八重歯を思いだす。今頃どうしてん だろう、、少しの間彼女の事を思い返していたが、すぐに仲間達と勝利の余韻に浸り彼女の事は忘れてしまった。それで良いのだろう。今はそれ で、、


死は生に勝るのかめしれない。そんな事私はまだ知らなかった。


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