表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
うちにひそむおそれ  作者: 半信半疑
4/5

4 三番手、オレ 【トンネルの中】

 ちょっと下世話な要素が入ります。

 次はオレだな。獣、人形ときて、オレからは幽霊について話そう。

 幽霊と言えば、そう、肝試しだ。


 つい昨日のことなんだが…。オレは、彼女と肝試しに行ったんだ。

 あぁ、うるさい。オレに彼女がいるのがそんなに悪いのか? モテない僻みは止して、現実を受け入れろ。オレには彼女がいて、お前らには彼女がいない。それだけのことだろう?


 とにかく、俺は肝試しに行ったんだ。

 場所はあの、有名なトンネルだ。そう、幽霊が出ると噂の、あそこだ。聞いたことあるだろう? 歩いていた奴がいきなり肩を叩かれて、振り返っても誰もいなかったーとか、車を走らせている時に髪の長い女が白い服を着て立っていたーとかさ。

 オレも話には聞いてたんだが、通るのは初めてだった。ほら、あのトンネルって街の中心に向かうにはやや遠回りになるから、使う奴があんまりいないだろう? しかも、夜中になると特に雰囲気出るし。

 彼女に聞くと、オレと同じで向こうも初めてらしかった。ちょっと興奮気味だったなぁ。彼女、オカルト好きなんだ。心霊体験は一度もないらしいんだけどな。


 オレ達二人は車でそのトンネルを通ることにした。歩行者用の道もあったんだけどさ、あのトンネル長いからな、そこまで歩きたくなかったんだよ。それにほら、夜中でも外は暑いしさ。彼女も車で通るくらいがお手軽で丁度良いって言うから、オレ達は車でその場所に向かったんだ。


 時間は、午前一時くらいだったかな。うん、そのくらいだった。ラジオを流しながら走らせていたから、その時に時間を聞いた覚えがある。


 ホテルから出発して、二十分もするとそのトンネルに着いた。え? 何でホテルかって? おいおい、言わせんなよ。


 まっ、とにかくだ。オレ達はトンネルに着いたんだよ。

 そのまま車でトンネルの中を車で走った。少しゆっくりな。あんまり速度出したら、怖さが出ないだろう? 他に車も通ってなかったし、誰かの迷惑になるわけでもないからな。


 彼女、テンション上がってたな。凄いしゃべってるんだよ。


「何か出るかな? 出るかな?」

「もし出たらどうする? ねぇ、どうする? どうしよっか?」


 始終そんな感じだった。でもな、一回目に通った時は何も無かったんだ。本当に何も無くて、トンネルを抜けた後は正直、期待外れな気分だった。オレも彼女もな。


 で、もう一度走ることにしたんだ。今度は逆側からトンネルに入っていった。適当にUターンしてな。

 二度目の彼女は落ち着いていた。さっきははしゃいでたから幽霊が出なかったんだって言ってたな。今度は静かに、目を凝らしてトンネルの中を見ていたよ。オレも運転しながらそれとなく探してた。幽霊の姿をな。

 そのまま車を走らせて、丁度半分くらい過ぎた時だ。


「いたっ!」


 彼女が突然声を上げて、前の一点を指差したんだ。

 オレはちらりと見た。驚いたよ。本当にいたんだ。

 真っ黒な髪をだらりと前に流して、顔が見えなくなっている、白い服を着た女が。


 え? 人間なんじゃないかって?


 いいや、それはないね。だって、一度目に通過した時は誰もいなかったんだぜ? 車も走っていなかったし、人だって歩いちゃあいなかった。車はいつもより遅く走らせていたから、隅々まで確認できたし、それは確実だ。


 しかもだな、その女の足が、なかったんだよ。幽霊以外の何者でもなかったんだ。やっぱり幽霊ってのは足が無いものなのかってことをオレは考えた。


 そうこうしているうちに、その女の横をオレ達の車が通過したんだ。オレも彼女も思わず黙って、息を止めてたな。正直言うと、怖かったんだ。あの場にいたのなら誰だってそうしたと思うぜ。


 それで、オレは口を閉じたままサイドミラーを確認したんだ。もう結構離れてしまったし、見えないことは分かってたんだけど、確認せずにはいられなかったんだよ。

 サイドミラーには、女の姿はなかった。オレは安心したよ。心の底からな。

 でもな、その後、彼女が言ったんだ。


「あの女の人、後ろを付いてきてる!」


 オレはバックミラーを確認した。

 薄暗がりの中に、女の姿があった。こっちに手を伸ばして、まるでオレ達を捕まえようとしてるみたいだった。


 オレはアクセルを全開にした。あの女から一刻も早く、少しでも遠くに行きたかったからだ。彼女も同じ気持ちだったみたいで、オレの腕を掴みながら言うんだ。「早く! 早く!」って。


 オレ達はすぐさまそのトンネルを後にした。幽霊の女はトンネルを出たところで消えたよ。あの時は本当にほっとした。彼女も溜まった息をゆっくり吐き出していた。


 車をそのまま走らせて、オレは近くのホテルに入った。さっき感じた恐怖を払拭したかったんだ。彼女も黙ったまま首を縦に振った。


 彼女は先に車を降りて、すたすたと受付の方に行った。オレも後に続いて車を降りたんだが、そこでふと、車の後ろの方が気になったんだ。

 オレは運転席のとこから後ろに回った。そして、後悔した。

 何故かって、そこには無数の赤い手形が付いてたんだ。


 オレは逃げるように彼女の後を追った。


 次回、最終話、「大トリ、俺 【五人目】」。

 2018/07/28 23:00 更新予定。

 お楽しみに。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ