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うちにひそむおそれ  作者: 半信半疑
2/5

2 一番手、おれ 【深夜の鳴き声】

 おれ、あんまり話すのとか得意じゃないから、そこは大目に見てくれよ?

 そうだな…。最初だから、軽い話にするよ。


 三日前のことなんだけどな?

 おれは二階の自分の部屋で寝てたんだ。

 いやーあの日は暑かったなー。この時期はいつも暑いけど、あの日は格別だった。おれんとこ、エアコンがないから一日中暑いんだよ。まぁ、夜は昼に比べたら多少はマシなんだけどな?


 それで扇風機を付けて寝てたんだけど、やっぱり暑くてさー。夜中に目が醒めちゃったんだ。時計見たら三時過ぎだった。

 寝苦しいってのはすごく不快なんだ。分かるだろう?

 え? そうか、皆のとこはエアコンがあるからおやすみ設定を使って、快適な睡眠生活を送ってるんだな…。羨ましい…。


 …と、話の続きだな。

 おれは、喉が渇いてたから一階に下りたんだ。親は寝てるから、静かにな。時間帯が真夜中なせいか、家ん中はすごく静かだった。階段の軋みがいやに大きく聞こえた気がしたな。


 で、台所に着いたおれは、棚からコップを一つ取り出して、冷蔵庫の麦茶を一杯、飲んだんだ。

 いやー、良く冷えた麦茶は美味かった。身体に染みたよ。喉が渇いていたから余計にな。


 それで、麦茶を飲んだら妙に感覚が鋭くなった。

 と言っても、半分寝ていた頭がちゃんと起きたってだけの話なんだけどな?


 でも、そのせいか、耳が変な音を拾っちまってな…。 

 初めは小さな音だった。「何か聞こえるな…」ってくらいの音だ。それがだんだん、大きくなっていく。音は確実に、おれの耳に入ってきたんだ。


 何の音だろうと思ってよく聞くと、それは何かの唸り声みたいだった。

 おれは猫か犬かが、暑さに悶えて唸っているんじゃないかって思った。うちの家の近くには、野良のやつがよくいるんだよ。そばに空き地があるからな。それで特に気にはならなかったんだ。


 問題はその後だ。


 おれは、コップを置いて居間に行こうと思った。どうせ眠れないだろうから、テレビでも見てようって思ってな。

 その時、親父が台所に来た。


「おぅ、眠れないのか?」

「いや、暑くて目が覚めたんだ。もう一度眠れそうにないから、居間でテレビでも見ようと思う」

「そろそろ、お前のとこにもエアコンを付けるべきか」

「もし付けるなら、早めにお願いするよ」


 確か、親父とはそんなことを話した気がする。

 それで、エアコンの話をした後だ。おれは唸り声について、親父に聞きたくなった。


「なぁ、親父。何か、唸り声みたいなの聞こえないか?」

「唸り声?」


 親父は耳を澄ました。


「…いや、何も聞こえんな」

「えぇ? いや、聞こえてるじゃないか。猫か犬みたいな、獣の唸り声が…」


 おかしかったなぁ。おれは唸り声が聞こえているのに、親父は聞こえていなかったんだ。


「特に聞こえんが…。まぁ、どうせ野良の鳴き声だろう。気にするな」


 親父はそう言うと、おれと同じように麦茶を飲んで部屋に戻っていった。

 それからおれは、釈然としない思いをしながら、居間でテレビを見ていたってわけ。


 気づくと朝で、唸り声は消えていた。代わりに、蝉の喧しい声が聞こえるようになっていた。

 でもおれは、耳を澄ませるたびに、まだあの唸り声が聞こえているような気になるんだ。


 自分にだけ聞こえる音って、怖くないですか?

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