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序
シライア大陸において、長らく争い続けていた二つの国があった。
他国のとりなしで休戦するも、それは幾度も破られた。
つかの間の平和、そして緊張感をはらんだ対立の期間を経て二百年。もういい加減、争うのは止めようと思い至った両国は、周辺諸国の働きかけで会談、歩みよりを決意。
そして、五十年ほどして双方の国を行き交う人々も増えてきた近年……。
シライア大陸きっての二大不仲国、西のイグニスと東のノーゼリア。両国の王は、争いの歴史に終止符を打つための、和平の証として両王族の婚姻を発表した。
《至宝》とまでうたわれるノーゼリアの第二王女と、側室の子でありながらもイグニスの次代王と目される第一王子……――この二人の、婚姻だった。
そのはずだった。