Nobody else but you.
「どうしてここにいるの?」
目覚めると、みずきが聞いた。
点滴でアルコールが抜けた状態だから、多分みずきの頭ははっきりしている。
「ここにいたいから」
「答えになってない」
「・・・もう一回、俺とやり直さない?」
「やり直すって何を?」
「人生を」
みずきは癇癪を起こしそうになって、急にガクンと力を落とし、わあわあ泣き出した。
子どもみたいに大声あげて、手放し状態だった。
俺がみずきを抱き締めると、最初抵抗して、ひるんで、怯えて、俺の胸に顔を押し当てて泣きじゃくった。
「みずきちゃん~どうしたよ?昔みたいに俺のことバカバカ言わんのか?」
「なんでいまさら私に構うのよ?」
「なんでかなぁ」
「バカ」
「昔はさぁ、何だって新鮮で興奮できただろ?またあんな人生にしようよ」
「もう無理だもん」
「無理じゃないよ。生きてる限り何度だってやり直せる。俺と生きよう」
「ほんとに本物?」
「いてててつねるな」
看護師さんたちがいつのまにか気をきかせて退出してくれていた。
「あの時のこと覚えてる?あれは・・・」
いろんな想い出話しをした。
確かに時間は刻々と過ぎて行くけれど、忘れさえしなければ過去へ飛べる。
すぐに依存症から抜け出すことはむずかしいだろう。それでも、確かに過去「僕」はみずきを好きだったし、現在「俺」はここでみずきとこうしてる。
諦めなければ、未来も手に入れられるだろう。
「どうしたの?大人のおとこの人みたいになっちゃって」
「なっちゃったのかもな」
ははは、と俺は笑った。