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妖魔狩り戦記  作者: 岸根 紅華
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人間の砦

「ここの司令官はどこにいる!」


 妖怪を倒しながら進んだ数時間後。

 俺たちは目的の砦の中にいた。


 人間と妖怪の国境を守る一〇を超える防御塔と二つの城門。

 そしてそれらを結ぶ城壁。

 一〇〇〇人近くの人間を収容でき数か月間孤立無援で戦える、人間と妖怪の世界を分ける境界線。

 別名、砦と呼ばれる建築物だ。


 その中心、司令塔と呼ばれる入り口で、化粧もしてないむき出しのコンクリートの通路を足早に抜け、近くにいた自衛官の胸ぐらをつかんだ。

 出来るだけ優しくしているつもりだが、漏れ出す殺気は勘弁して欲しい。

「え? え? 村田中将なら、この奥に……」

 俺は罪のない隊員を放し、作戦本部のドアを勢いよく開けた。

「失礼する。俺は妖魔狩りのアキト。あんたがここの司令官か?」

 部屋の前で見張りをしていた隊員をノリコたちに抑えさせ、俺とキヨシは強引に中に入った。


「なんだお前たちは! ここはお前らみたいな子供が……」

「俺たちは死鬼隊だ。それよりなんだこの布陣は! お前ら全滅したいのか?」

「そ、そんなこと……」

 俺の殺気を受けてもなお、冷静を装うとする司令官の言葉を遮りまくしたてた。

「あんたらが相手にしてるのは妖怪なんだ! 人間相手の戦術、しかも数で押し切ろうなんて意味がないって……教わってないのか?」

 俺たちはここに向かう途中で、苦戦する自衛隊員を助けるため何度も妖怪を撃退した。

 そして、味方の攻撃方法も見てきた。

 だから分かる。


 そう。

 ここの司令官は一〇〇の妖怪に対し、五〇〇の隊員を真正面からぶつけたのだ。


「まったくです! 妖怪と人間の戦術は違うと、士官学校で習わなかったんですか?」

 怒りに声の出ない俺を代行したのは、死鬼隊の作戦参謀。

 っと自負しているキヨシだった。


「集団で襲ってきたとしても、妖怪は個々に動く。そんなことも知らなかったんですか? 私たちが所属する九頭竜学園では、入学してすぐ頭と体に叩きこまれるのですが……もしかして忘れちゃいましたか?」

「うぐっ……それは……」

 村田司令官の顔色が悪い。

 まあ、キヨシが逃げ場のないように追いつめているのだが。

「とにかく、これからは俺がここの指揮を執る。文句は受け付けない。妖魔狩り特例を発令する」

 かなり強引な言い草だが妖怪に関しては、俺たち妖魔狩りには特例処置が認められている。

 それを知っている村田司令官は、不満を隠そうともしないで視線を逸らした。


「では状況の確認をします。村田司令官。攻撃してきている妖怪の姿などの詳細な資料はありますか?」

「え? 妖怪は妖怪だろ?」

 その一言で俺とキヨシは、こいつが無能だと俺に向かって匙を投げた。

 いや、これはさすがに……。

 頭を抱え、うずくまりたい感情を抑え、俺が宣言した。


「伝令! 全ての通信機器を使って全軍撤退!」

「お、おい、そんなことすれば、妖怪がこちらに……」

「いいからさっさと撤退させろ! 敵の正体も分からないのに、有効な戦術がとれるか! 味方を退却させた後、今後の方針を決める。キヨシ!」

「ああ。現在味方はそれほど分散してない。ケツを誰かが持てば退却可能だ」

 俺の意図を察し戦況を把握したキヨシが頷く。


「よし、死鬼隊出撃。味方の撤退を援護する!」

「いくら妖魔狩りだからと言ってなにを……勝手に……」

 俺は背後で聞こえる司令官の怒号を黙殺。

 伝令に撤退を徹底しろと念を押して、作戦本部から退出すると、

「出撃準備、完了です!」

 ノリコが敬礼して迎えてくれた。

 すでに他のメンバーも準備万端のようだ。

 しかも完全武装のC装備でだ。

 彼女の手際の良さに思わず口の端が上がるが、時間が惜しい。

「よし、死鬼隊出撃!」


「「「「「ヤー!」」」」」


 魑魅魍魎ちみもうりょう跋扈ばっこする戦場へ、俺たちは飛び込んで行った。


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