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妖魔狩り戦記  作者: 岸根 紅華
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妖魔戦

 彼女に教えてもらった方向はあっていた。


 だが山一つ越える距離とは思わなかった。


 予想外以上に時間を取られたが、途中で死鬼隊のメンバーに合流出来たから良しとしておこう。


「アキト隊長! 前方約二〇〇〇の距離で自衛隊員が妖怪と交戦中!」

 偵察に出ていたユウナが雪を掻き分け戻ってきた。

「よし、すぐに応援に向かう。戦闘準備!」

 即座に部隊が展開した。

 狙撃手であるタクミが、新人のトシアキを連れて狙撃ポイントへ。

 俺とノリコ、コウジとユウナに分かれ、敵を左右から挟撃しようと足場の悪い雪野を避け木々を伝い移動を始めた。


 当然、勘のいい妖怪にすぐに見つかるが、

「ギギッ! アタラシイ、ニンゲ……グギャ!」

 警戒の声を上げようとした妖怪に、タクミのヘッドショットが決まった。

 それが戦闘の合図になった。


「撃ち方初め!」


 タクミの一撃をに、コウジとユウナが援護射撃を開始。

 幸い自衛隊が妖怪と距離を取っていたため、同士討ちは気にしなくて済むからやりたい放題だ。

 俺たちはほどよい大木の前に立つと、

「ノリコ!」

「はい!」

 俺とノリコは掛け声とともに大木の幹にへばりつき、


「「いけぇぇぇぇぇぇ!」」


 気合共に大木の幹を蹴る。

「はあぁぁぁぁぁ!」

 弾丸と化した俺とノリコが、妖怪の群れに突っ込む。

 さすがの妖怪も、状況の理解に一瞬以上を有した。


 それが命取りだ。

「一つ、二つ!」

 文字通り飛んできた俺の大太刀が黒い軌跡左右に生むと、通り過ぎた妖怪二人の喉下から鮮血が舞う。

「三つ! 四つ!」

 同じくノリコが通り過ぎた妖怪を切り刻み、最後に多々良を踏んで逃げ遅れた妖怪の腹を蹴り倒すように着地。

「五つ!」

 そのままマウントを取り、双剣を胸に突き刺した。

 ほんの数瞬で約半数の妖怪を撃破した俺たちは、ホッと一息つこうと思ったが……。


「グオォォォォ!」


 甘かった。


 ノリコの頭上を大きな影が覆う。

 視線を向ければ三メートルを超える大男。

 巨木を思わせる筋肉質な手足と、顔のある大きな一つ目がぎょろりっと獲物ノリコを狙う。


 入道系の妖怪だ。

 名前は……思い出してる暇が無い。


「援護射撃!」

 背後からタクミの声と複数の銃声。

 だがその弾丸も硬い筋肉に弾かれる。

 弱点の一つ目もちゃんと手の平で防いでいた。

「脳筋のくせに!」

 タクミの悪態を聞き流し、俺が振り上げる大太刀に力をこめるのと、筋肉入道が大木のような棍棒を振り上げるのはほぼ同時。


「させるかよ!」

 走って向かったのでは間に合わない。

 俺は渾身の力を込めて大太刀を、筋肉入道へ投げた。


「グッ……グギャ!」


 大太刀は狙いたがわず庇っていた手を貫き、弱点の目玉に突き刺さった。


 ドウンッ!


 巨体が倒れて舞う白銀の粉が、場違いに綺麗に見えた。

 だがまだ終わっていない。

「気を抜くな! まだ残りの妖怪が……」

「掃討完了!」

「半径一キロ以内に敵兵なし!」

 確認する前に、コウジとユウナがニコリと近寄って来た。

 確かにこの場所に、俺たち以外の妖力を感じない。

 フッと自然に口の端が吊り上った。

 どうやら二人が後始末をしてくれたようだ。

 何とも頼もしい仲間である。


「あ、あんたらいったい何者なんだ!?」


 助かったと安堵した自衛隊員が、当然の疑問を口にした。

 その問いに、ニヤニヤとした部隊の視線が俺に集まる。

 どうやらアレを言えと言っているようだ。

 俺は恥ずかしさを隠し、コホンと軽い咳払いの後に宣言する。


「俺たちは九頭竜学園所属の妖魔狩り部隊。政府公認の妖怪退治屋、死鬼隊だ!」


 バッと手を突き出し、ポーズを決めた。


 問う自衛隊員が呆然とする中、


「ドンドンドン! パフパフパフ!」


「うわぁぁぁ。本当に言ったよ隊長!」


「まあ、予定通りだよねユウナ」


「うんコウジ。我らが隊長は真面目だよね?」


 俺の部隊の隊員たちが、ペチペチとささやかな拍手をくれた。

 真面目に皆が俺のために考えたと言う台詞を、真面目に言った俺がバカだった。

 こいつら後で説教してやる!


 なんともいえない空気の中。

「よ、よし、撤収準備。生き残った自衛隊員と共に砦に向かう!」


「「「「ヤッー!」」」」


 真っ赤なのを悟られぬよう、顔を背けたまま声を上げて撤収命令を出した。


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