第一章:妖魔狩り《イエーガー》
連続投稿です!
『目標地点まで五分。死鬼隊のメンバーは降下準備をお願いします』
今にもプロペラが今にも止まりそうなおんぼろ輸送機の、かろうじてシートと呼ばれるだろう場所に腰かけ、俺は小窓から見える夕日を見て苦笑した。
機内放送は言葉だけ聞けば丁寧なのだが、態度は『厄介者はさっさと出てげ!』と言った感じ満々なのだ。
そりゃあ、笑したくもなるだろ?
「まったく、そんなに邪険にしなくても、ちゃんと指定の場所に連れて来てくれれば降りるって~の!」
背中に背負う大太刀と、腰のホルダーに刺さる銃の具合を確かめつつ俺が皮肉げに口の端を上げると、
「アキト隊長に無礼な口を……殺す?」
北の鬼族特有の真っ赤な瞳を鈍く光らせるノリコが、両腰の双剣にサッと手を添えた。
「待て待て。もしかしたら、また乗るかもしれないだろ?」
俺は軽く手を上げ彼女を制すと、
「そうそう。どうせ僕たちは嫌われ者。おんぼろだけど輸送機に乗せて貰っただけ、ありがたいと思いますよ。なあ。ミーナちゃん」
そう言ったのは、俺の隣でうっとりと対戦車ライフルを撫でるタクミだ。
タクミはうっとりしながらライフルの銃身を、人よりちょっと長い舌でなめ愛でる。
ライフルを見つめる瞳があまりにも熱っぽいので、さりげなく座る位置をずらしたのは内緒だ。
「まったく、皆殺気立ってるんだから、俺たちにみたいにラブ&ピースで行かないとね、ユウナ!」
「そうだよ皆! 私とコウジみたいにしないと、皆ハッピイーになれないよ?」
ユウナのお気楽な声に、無言で呆れかえる隊員たち。
突如人間の前に姿を現した妖怪との争いが始まって、すでに一〇年が経過しようとしていた。
昔から人知れぬ小競り合いは多々あったものの、人間の歴史に表立って出てこなかった妖怪が大挙して現れたのだ。
理由はいまだに不明。
学者は、戦後の高度成長で人間が森や山を削ったのが原因だと共存を叫び。
宗教家は、裁きの日が来たと人間の終焉を謳う。
そして多くの政治家は、最古からいる侵略者。と彼らを名指しで『外敵』認定した。
三者三様の答えは、どれが正解かなんて明確な答え無い。
だが、人間の大半が彼らを『外敵』と認識した。
理由は簡単。
妖怪が自分たちの生活を脅かすからだ。
それに、彼らの数が人間より圧倒的に少なかったのも原因かもしれない。
国民の同意を得られた政府は、少数の反対派の意見を無視し妖怪を外敵と認定。
特別法案として、自衛隊に敵対する妖怪に対しての攻撃を許可した。
さらに寺や神社に協力を要請、妖怪が少ない他国の支援も受け『妖魔狩り』なる特殊機関を立ち上げた。
数億という国家予算を費やし立ち上げた特殊部隊は、数年で妖怪を駆逐する予定だった。
だが、実際は……。
数こそ少ない妖怪だが彼らは人外の力、妖力を持ち、しかも神出鬼没。
人間の理屈に合わない、未知の攻撃に妖魔狩りは翻弄された。
そして、わずか一年で妖魔狩りに入った陰陽師の約四割が死亡。
自衛隊特殊部隊は六割を失った。
妖魔狩りの機能がほぼ停止したのだ。
それに勢いづき、ジワジワと人間の住処を奪っていく妖怪。
絶望的な状況に、政府はある男の提案を飲んでしまう。
それは神の領域を土足で踏みにじる行為。
それは天に唾吐く禁忌の行為。
人間に妖怪の血、もしくは細胞を移植すると言う人体実験だった。
そんな悪魔の実験に付き合わされたのが、俺たち孤児だった。
理由としては、サンタや妖精の存在を信じているような柔軟な脳であること。
志願者を募って、実験が失敗した場合の国民の批判を防ぐためだ。
そんな渦中に俺たちはいた。
当時六歳だった俺は、家族の愛に飢えていた。
だから、優しくしてくれたお姉さんの説明もろくに聞かず、彼女に喜んでもらえと思って実験の同意書にサインした。
誇らしげにサインした俺に、少し寂しそうな笑顔を向けたお姉さんは、次の日から来なくなった。
後で知ったことなのだが、彼女は罪の意識に耐えられなくなったらしい。
あの時の俺に他の選択肢なんて無かったのだから、気にしなくても良いのに……。
そんなこんなで俺たちは政府の、妖怪を狩るために強化された極秘実験体。
『妖魔狩り』になった。
極秘と言われているが、実は関係者なら誰でも知っている。
妖怪と戦うことに長けた、いわば異端者なのだ。
俺たちは訳の分からん実験で、人ならざる力を手に入れ妖怪と戦っている。
まっとうな人間なら怖がって当然だろ?
中途半端なので、出来れば今日中にもう一話アップします。