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出会いは突然、展開は急に

まぁ、こんな流れで同居中

姉さんと出会ったのは両親の葬式の場でだった。

良い両親か?と問われれば、そうでもない両親だったが悪くない普通の両親。


何かと他人の為に動く両親に、俺はいつも面倒な生き方をしていると思っていた。

かと言って、俺を蔑ろにする訳でもなく普通の家庭で喧嘩もあり温かみもありの家族。俺からすれば、本当に誰かのために生きた親。


そして、結局他人の為に何かをしにいった時に事故で亡くなりやがった。

何をしにいったのかは、葬式に参列した人達は誰も知らず、結果俺も知らないままで…一人になった訳だ。


いつかは来る両親との別れが、こんなに早く来るとは思っていなかったが…いつか誰かの為に死ぬんじゃねぇか?と謎の心構えもあった。

そのせいか不思議と悲しさよりも、親戚や知り合いが集まるこの空間に億劫な感じ強い。


葬式場の人に手伝ってもらいつつ、顔も覚えていない親戚が言い方悪いがしゃしゃり出て指揮をとり進む葬式。

それだけならいいんだが…本当に多いんだ。集まってくる人の数が。

バカバカしいとは言わないけれど、羨ましいとは言えない両親の生き方は、呆れる程の人脈を作り上げていた。


見返りなんて求めちゃいけないし、見返りがある方が珍しいとすら自傷気味に話していた両親。

その両親の葬式は、俺の知らない人達が集まり泣いている。俺の両親がやった事を自慢げに両親以外が語り合う様は何とも言えない感情になる。


両親は一切自慢なんてしなかった。さも当然かのように何をしてきたとだけ話して終わり。

過去に両親から聞いた話しで、嘘だろ…?と思う事もあったけど、来てくださった人達の話しを聞くと…今更ながら俺の両親はハイスペック超人だったのでは?と思えてしまう。


まぁ、両親的には俺を褒めるだろうが、周りから見れば少しだけ冷めた視線を送られる泣きもしない葬式。

億劫なまま、次々と来る両親の知り合いに喪主としての挨拶をしていると…一人の女性が来た。


装飾もアクセサリーも少なく、シンプル喪服を纏ったその女性が受付へと足を運ぶ。


また俺の知らない人だ。

バリバリのキャリアウーマンの様な雰囲気と合わせて人当たりの良さそうな空気を持ち、姿勢も良くて、周りのように悲壮感を纏っている事も無く作業の様に受付を終えた女性が周りを見渡している。


そして受付の人の言葉と手での案内に従って俺と目が合うと、女性は俺の方へと歩いてきた。


今日何度もした挨拶の言葉を浮かべながら俺も女性へと近づく。


「この度は、ご愁傷様でございます。急なことで慰めの言葉もございません。心よりご冥福をお祈り申し上げます…どうぞ、お気を強くお持ちください」


「ありがとうございます。こちらこそお忙しい中、来ていただいてありがとうございます」


互いに頭を下げて、もはや聞き飽きてしまったやり取りをした後に俺は顔を上げた。

当たり前の様に視線が合う。

一瞬だけ、倦怠感MAXな女性が視界に映る。ただ本当に一瞬で、この時の俺は自分の見間違えだと思った。


女性は、すぐに悲しみ含んだ様な笑みを見せ一礼した後、俺の親戚集団へと向かい挨拶をしにいってしまった。


「…俺の両親は、どういう経緯で知り合ったんだよ」


素朴な疑問だ。

参列している人達は、年齢幅が広い。今の女性も俺と年齢がそんなに変わらなそうだ…。


なんだかんだと両親の人脈に驚き疲れつつ、通夜、葬儀告別式と済ませて火葬が終わるのを待っている時だった。


俺をどうするか。


その話しが聞こえてきた。

今日が初めてではない。ここ三日、親戚集団の近くを通れば聞こえたりした内容だ。


今年で俺は高校二年。別に一人暮らしをさせてくれるなら、そのままさせてくれても構わなかったのに、俺の意見を聞くこともなく親戚集団はまだ早いだの何だのと言い合っている。にも関わらず、自分の所で引き取ろうとはしない。


まぁ、俺的にも遠くの親戚に拾われて転校するハメになったりしても面倒だから、それは回避したいが…俺の事なのに今まで聞いてこなかった事を考えると、俺の意見なんて関係なさそうだ。


ごちゃごちゃと話していた割には、結局結論が出ることは無く黙り合ってしまった親戚集団。その時だ…何故か去っていく両親の知り合いの中で火葬まで着いてきたあの女性が口を開いた。


「彼の件ですが、彼のご両親と母が幾つかやり取りがあったようで、色々とありまして私が彼を引き取ります」


「な、突然なんだ君は」


親戚のおじさんが驚いて何か焦っている。

いや、まぁ…俺も驚いている。いきなり何を言っているんだあの人は…。


「なんだもなにも、彼の引取人ですよ。

自己紹介は先日させて頂いたと思いますが?」


「違うそうじゃない!いきなり身内の話しに入ってきてなんだと言っているんだ」


「誤解されて腹を立てるぐらいなら初めからしっかり言えばいいじゃないですか。

それに、本人をそっちのけで身内の話とは…笑わせますね。彼も、もう自分で考えて判断できる歳でしょうに」


「だ、だったら彼も交えて話をしようじゃないか!

どこの誰とも知らぬ君に、彼を任せるなんて」


興奮しはじめて声が大きくなっているおじさんを他所に、女性は俺の方を見て近付いてくる。


「なら、彼も交えて話しましょうか。


今は、私に賛同しなさい。後で、どうとでもしてあげるから」


少し張った声で不機嫌な目で女性を見る親戚集団に告げ、最後は俺にしか聞こえない様に言った女性。

正直、親戚集団もこの女性も信用ならないけど、きっと親戚集団に任せると一層面倒になりそうな気しかしない。


「交えて話すのは構わない。だが、君は混ざる必要はないだろう」


「はぁ…話し合いの前に私から一つだけお伝えする事があるとすれば、本来ここに来るのは母の予定でした。ですが、現在海外に居るため代理として私が来ています。

そして、彼のご両親と私の両親は生前に約束を交わしてあります。


ご両親に何かあった場合は、私達が引き取ると」


「口約束だろ?」


「皆様には、大変申し訳ありませんが…弁護士を通して遺言書という形で約束させて頂いております。

どうぞ確認して頂いて構いません。後日、裁判所にて調べて貰っても構いません」


女性は鞄から取り出した封筒を親戚集団へと渡す。

俺を交えてと言う割には、勝手に話は進むし、弁護士とか使って作った遺書があるなら俺に拒否権はないのでは…。


困惑している俺を無視して封筒から取り出した紙を読んでいる親戚集団。


「もちろん、それは事前に用意してもらった写しなので現物は私の母と弁護士が保管しています」


何やら歯を噛みしめる音が聞こえるが、一体何が書かれているのだろうか。

…というか、それは俺にも読む権利があるんじゃないのか?


「だが、これには息子の意思を尊重すると書いてある。

君が引き取るのはお門違いだろ」


「だから、彼を交えて話しましょうと言ったはずですが?

それに遺言書を作成したのは、まだ彼が小さい頃ですので、本人に判断能力が無い場合は私の両親が必ず引き取ると言うもの。

もし彼に判断能力がある場合は、彼の意思を尊重した後に決めると言うもの。なので私がそのお話に混ざってもなんら問題はないですよ?


私達も、彼を引き取る事に関して現在も拒否をする事はないので」


「……なら、話し合おうじゃないか」


何やら面倒な事になった気がする。

引き取り手が見つかったなら素直に任せればいいはずの親戚集団と、俺の両親とどういう関係だったのかすら分からん女性家族。

どちらかを選ばないと、この話は終わらないんだろうな。


…もうすぐ火葬が終わる時間だ。


-


「本日は、両親の為にありがとうございました」


一通り納骨まで終えて、一礼をした所でやっと終わった。

親戚集団は不満げな様子で帰っていくが、どうせ今後会う機会もそんなに無いから、どんな風に思ってくれても構わない。


「はぁ…」


「お疲れ様、少年」


「どうも」


車中、女性の隣に座る俺に労いの言葉が掛けられる。

あの後の話し合い…なんてものはせずに、この女性の元に行くという意思を伝えた。


「お腹は減ってない?」


「少し」


「なら、コンビニでも寄ろう」


立ち寄ったコンビニで適当におにぎりを選んでいると、女性は電話をしに店と出ていた。

昆布とおかかを二つずつ買い外へ出て女性を探す。

日照りが暑かったのか、女性は車内まで戻っていた。


「車内で食べていいからね」


戻ってきた俺に気づいた女性は、そう俺に言って電話を続ける。


「あーごめん、うん戻ってきた。

え?別に私は構わないけど、それでいいの?

うん…うん…まぁ、とりあえずはそうなるよね。後は本人に任せることにするよ。

うん、分かった。帰ってきた時はまた連絡してよ。うん。はいはい、分かったから大丈夫だって。


なっ!うるさいなー…。はいはい、水入らずで楽しんできてください」


電話を切った女性は、あの時に一瞬だけ見た気がした倦怠感MAXの表情を浮かべてハンドルに項垂れた。


「…おかか、おいしい?」


「え、あ…はい」


横目で食べているおにぎり見てくる。


「食べますか?」


「え、ホント?ありがとう!」


袋から取り出したおかかを女性に渡すと、嬉しそうに受け取り食べ始めた。


なんだろうか、最初に見た時のキリッとピリッとサバサバとした印象が皆無だ。

オン・オフの差というやつか…。


腹も多少満たした俺と女性は、移動を再開する。


…というか、どこに向かってるんだ?


その疑問を俺が口にする前に、'あぁそういえば…'と女性が口を開いて…俺の疑問への答えが続いた。


「今日から少年は私が預かる事になったらしい」


「あ、はい…えっと」


「あぁ、名前とかはいいや。とりあえずは気が済むまで家に居てくれて構わないけど、適当に家事は頼むよ」


「え…あ、わかりました」


「それじゃ、好きなだけよろしくね少年」


突然の展開に頭が停止した。

俺は、この女性のご両親の家に行くのだろうとばかり思った。

だけどこの言い方…どうやら俺はこの女性の家へと行くようだ。


今年で高校二年。俺とあまり変わらないであろう女性の家へ向かい住む。

過ぎった一人暮らしの案は、まぁ…即消え去り妄想が膨らみ埋めていく。


年頃の男子高校生。そりゃ、そういう考えも浮かぶもので…。


「私のことはお姉さんと呼んでくれて構わないよ、少年」


「…よろしくお願いします。姉さん」


「ふふっ、よろしい。よろしくお願いされようではないか」


子供の様な笑みを見せる姉さん(・・・)に、一目惚れしたのは言うまでもない。

適当に思いついただけで、今後この設定を使うかは不明。

ただのこじつけの為だったりもする。


この作品は、恋愛モノであったりなかったり…。ただ、姉さんのぐーたらを見たりするだけだったり…。

私もあんまり分かってないです。


メインコンビのこの二人には、できるだけ名前を付けない方針でいこうかなーと思っています。

ただ浮かばなかっただけもします。

姉さんの名前ぐらいは…考えなきゃいけないかもしれない…。


こんな私の作品ですが、よかったら長くお付き合いください。

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