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9話: 現れた少年と待ちぼうけのフェンリル


こんなつたない文章にブックマークをつけて下さった皆様、本当にありがとうございます。これからも不定期で遅々として進まないストーリーですがよろしくお願いいたします。






フェンリル


異世界ファンタジー小説において、キング オブ モフモフ!


あの尻尾にしがみ付いてモフモフしたい

あのお腹の毛に包まれて寝てみたい

あの前足の肉球をフニフニしたい

ああ忘れてはいけない、あのピクピク動く両耳!

それにどの小説にも書いて無いけど、森の中を生きる獣だものノミとかダニはいないのだろうか?

僕が毛繕いしてプチプチしてあげるよ!

それにそれに…



「…さん、ユウリさん!戻って来て下さいユウリさん!」


いつの間にかバスルームから戻って来たレインに肩を叩かれ、モフモフの幻想から現実世界に帰還した。


「あ、あれレイン?どうしたの?あっ大丈夫?さっき出血してたよね平気?」


「ええ、僕は大丈夫です。どこもケガしていませんから安心して下さい。それよりユウリさんこそボンヤリして大丈夫ですか?」


「うん大丈夫だよ。そうだ!モフモフだよ!モフモフが来てくれるんだ!」


「フェンリルですね」


「そうなんだフェンリルなんだよ!」


「ああもう!いい加減にしなさい!そのモフモフの話をしなきゃいけないんだから落ち着いてそこにお座り!」


「フェンリルですよ姉さん」


「う、煩いわね!レインも鼻血は止まったの?まったくムッツリなんだから!」


「ムッムッツリって何ですか⁉僕はそんなんじゃありません‼」


「あ~はいはい、もうどうでも良いからレインもそこに座って私の話を聞きなさい」




どうやらフェンリルさんはすでにここに来ているらしい。


「そうなのよ。あんたが来る少し前に私達と一緒に来て、この家の回りと森の中を見回って来ると言って外へ出て行ったのよ」


フェンリルさんはしっかりお仕事を始めているらしい。偉いぞフェンリルさん!


「という事は、まだ外にいるのかな?迎えに行った方が良いよね?」


僕は早く会いたくてソワソワと腰を浮かせてレイラを伺う。


「そうね…早く行った方が良いかもしれないわね」


何故か目を逸らしながらレイラが言った。


「姉さん…はあ、ユウリ詳しい話は後にして、早く外の玄関に行って下さい。さっきから何やら下から音が聞こえているのは気のせいでは無かった様です。多分ドアを叩いているのでしょう。そのうち壊れそうですから」


この家はユウリとユウリが認めた者しか入る事が出来ない仕組みになっているらしく、フェンリルさんは中へ入れずにいるという……


「えっ、もう玄関にいるの⁉大変だ‼」


せっかく僕の為に来てくれたのに!見回りしたり、既にお仕事してくれていたのに!それなのに玄関で待ちぼうけなんて最悪だ!


僕は急いで玄関に向かって走った。


バタンと勢い良くドアを開ければそこには…鼻を押さえた生前の僕と同じくらいの若い男の人が立っていた。



肩より少し長い濃紺の髪を紐でまとめた若いイケメンのおにいさんが少し赤くなった鼻を片手で押さえているのは、僕が勢い良くドアを開けてしまったせいなのは明らかで…!


「わあぁっ!ご、ごめんなたいっ お鼻大丈夫でしゅか⁉血出てましぇんか?」


「ああ」


「それは良かったでしゅ!そ、それであの、おにいさんはどちら様でちゅか?」


フェンリルさんだと思って開けたら、全く見知らぬ男の人だった事に驚いてカミカミだ。人見知りなんだから仕方ないと思う。決して精神が肉体年齢に引っ張られた訳では無い。無いったら無い!無いと思いたい…




「…レイラはいるか」


不機嫌そうな声で僕を見下ろすイケメンさん。恐いよ


「レイラでしゅか?い、居ますけどあの…」


「すまないが呼んで来てくれないか。ああ、シリウスが呼んでいると言ってくれれば判る」


「シリウスさんでしゅね。すぐに呼んで来ますから中でお待ちくだしゃい」


シリウスさんを中へ招き入れて僕はレイラを呼ぼうと2階に目を向けると、ちょうどレインが下りて来る所だった。


「レイン!あれ?レイラは?今シリウスさんて言う人がね」


「ああ、すみませんレイラは急用が出来て戻ったので、僕がお会いしますよ」


はあ…と深いため息をつくとレインはシリウスさんの所へ行った。




「お待たせしました。レイラは急用が出来て戻ってしまったので、僕が説明をさせて頂きます」


そう言いながらシリウスさんの前まで行くとレインは頭を下げた。

そんなレインを黙って見ていたシリウスさん2階の方を見上げた。


「…逃げたな」


「…はい、逃げられました。長らくお待たせして本当に申し訳ありませんでした」


二人は何だか疲れた様子でソファーに座った。レインが手招きしたので僕も恐る恐る座った。

テーブルを挟んで向かい側に座るシリウスさんとの間には沈黙というコミュニケーションの大敵が横たわっていた。

ソワソワとと落ち着かない僕をシリウスさんは観察するようにじっと見ている。


いったいこの人は何なの?ここには誰もいない筈だよね?そもそも僕のモフモフさん、いやフェンリルさんはどこに行ったのさ?




「ここの主はお前か?」


不意に目の前のシリウスさんが僕に話しかけてきた。


「た、多分そうだと思います。この土地の所有権が僕にあるらしいので」


びくびくしながらも答えてレインを見る。


「ええ、こちらの神様より認可を頂きましたので、このテーブルマウンテンは彼、いえ彼女の物です」



「さあ改めて紹介しましょう。こちらはユウリです。色々ありまして主にレイラのせいですが、ここでは無い異界で死亡しこちらに転生を許された魂の持ち主です。お待たせしてしまったのも実は、彼女には複雑な事情がありまして、その説明と服を探していたのですよ」


「ふむ、良く似合っている。古来よりとかく女性の着替えには時間がかかるものと承知している。そう怯え無くても良い。怒ってはいないからな」


似合ってる⁉似合ってるって言った?ちょっと嬉しくて顔を上げたらシリウスさんの目が柔らかくなっていて笑っている様な気がして、僕は恥ずかしくて俯いてしまった。


「ユウリ?聞いてますか?こちらはシリウスさんです。シリウスさんはこの世界で最強と言われ【剣聖】の称号を持つ方です。亡くなった後、英霊として神の1柱として招かれたのですが何故かお断りになったので、それではとユウリの守護をお願いしたのですよ」


レインがニコニコとシリウスさんを紹介してくれているけれど、僕の頭の中は??のオンパレードだ。シリウスさんが僕の守護役?じゃあモフモフは⁉レイラはフェンリルさんが守ってくれるって言ってたのに‼


「あ、あのレイン?シリウスさんが守護って、フェンリルさんは⁉レイラは嘘ついたの⁉」


僕が焦ってレインの腕にしがみつくと、レインは困った様に苦笑しながらしがみ付いていた僕の手を優しく撫でた。


「大丈夫、いくらレイラでもこんな大事な事で嘘はつきませんよ。心配しないで。フェンリルはユウリの目の前にいますよ」



………裸の王様の童話が頭をよぎった。ああ神様!僕には見えません!正直者でないとフェンリルさんは見えないのでしょうか⁉



「俺だ」 「は?」


「だから、フェンリルは俺だ」


な、なんですってー⁉⁉



このような場所でこのような駄文の後に不適切、不謹慎かもしれませんが……


私は3.11を忘れません

お亡くなりになった方、今もなお行方不明の方々が心安らかでありますように。

東北の復興を心より応援しています。

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