8話: 手に入れた大事なモノと忘れていた大切なコト
別れ際にレインから貰ったペンダントに彫ってあったアドレスに最重要単語を簡潔に打ち込んだ
『パンツ‼』
しばらく待っても返信が来ないので、アドレス間違えたのかともう一度打ち直そうかと思ったり、そもそも半分神様みたいな存在で魂の管理官たるレインにメールが届くのか今更ながらの疑問に頭を抱えてみたりとイライラ悶々とソファに座り込んでいると、突然バスルームに続くドアが開きレインと何故かレイラまで現れた。
「お待たせしましたユウリ。すっかり忘れていまして、すみませんでした」
気のせいかほんのり顔を赤らめながらレインが頭を下げた。
「無くたっていいじゃない、誰もいないんだし。こんなに急がせて騒ぐ程の事じゃないわ」
ブツブツとんでもない事を言ってるのはレイラだ。
「パンツ持って来てくれたの⁉」
レイラを無視してレインに聞くと、綺麗にラッピングされリボンまでかかっている包みを僕におずおずと差し出した。
お礼を言いながら早速包みを開けようとしている僕はレインがボソボソと何か説明をしているのを聞き流しながらリボンをほどき包みを開けた。
「な、何コレ⁉」
包みから取り出し、目の前に広げたソレは…ピンク色のレースのフリルが幾重にも施され腰の両側はワインレッドのリボンで結ばれていた。
「こ、これはですね、レイラお薦めのお店で買ったモノでして、伸縮自在、形状記憶、常時浄化の魔法がかかっている洗濯不要で劣化もしないという最高級品だそうです…デザインはお店の人が選んだもので決して僕の趣味では、いえ、とても素敵でユウリに似合うとは思いますが、その…僕としてはもう少しまともな白とか形も子供らしいものが良いと思ったのですが…店員さんが何か勘違いをしてソレを勧めて来てですね、プレゼント用のラッピングまで…」
耳まで真っ赤に染まったレインがワタワタと両手を振っていたがレイラに頭を叩かれて俯いてしまった。
「何言ってるのよ!嬉しそうに買いに行ったくせに。そうよ私も穿いているのよ。すっごく高かったんだから感謝しなさい!」
「なっ 姉さん!僕は決して嬉しそうになんて!それに払ったのは僕で姉さんは出してないじゃないですか!」
ハイハイ姉弟喧嘩はお外でね
それにしても…コレ穿くのかあ…
犯罪臭というか変態だよなあ、由理だって持ってなかったぞ…いや多分だけど。
い、いや別に姉の下着なんて興味無いからね!毎日お風呂から出ると下着姿でウロウロしていた由理を見慣れてただけだからね!
ともかく、これで素股にタイツとはおさらばだ。デザインは置いておいて、ちゃんとしたパンツだからね。
「ありがとう二人とも。いくら一人暮らしだと言ってもノーパンは嫌だし、外へ出られないとこだったよ。レイン高い買い物させちゃってごめんね」
早速バスルームに行って着替えた僕は何も考えずにスカートを捲った
「ねぇねえ似合うかな?ピッタリフィットですっごく穿き心地が良いし穿いてみたら結構可愛いよねこのパンツ!」
「‼」
レインは何も言わずにバスルームに駆け込んで行った。床にポタリと赤いモノを残して。
「あら可愛いわね。だけどあんたも大分その身体とに馴染んだのは良いけれど、少し恥じらいってモノを…いえ面白いから良いわ」
レインはどうしたんだろうと首を傾げていたらレイラが呆れた様な声で『面白い』って言ったけど…解せぬ
「あの子はしばらく放って置いておいて良いわ。実はね、下着を届けに来ただけじゃなくてあんたにとって大事な話をする為に急いで来てあげたのよ」
さっきはパンツなんて急がなくても、とか言ってたくせにずいぶんだね。
それにしても大事な話?そう言えば僕も何か忘れている気がしてパンツを思い出したんだっけ。ん?パンツの他に大事な話?あったかなあ…パンツ以外に?
「あんたも忘れている様じゃ、私だけが悪いとは言われ無いわね良かったわ。ここへ来る前にあんたに守護をつけるという話を覚えているかしら?」
「! モフモフだ‼」
「フェンリルよっ‼」