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6話: 懐かしの我が家とドレスの呪い





玄関開ければ2分でご飯


何故だか昔見たチンご飯のCMのフレーズが浮かんだ



「あっ、ああっ 僕ん家だ!帰ってきたんだ!母さんただいま‼」


今までの事は夢だったんだ!

いつも通りの風景、いつも通りの生活、そうさ夢だったに決まってる!



「ンギャ!」


中に入ってリビングに行こうと走り出した僕

いつも通りドレスに躓き鼻を打った

今に僕の鼻はペチャンコになりそうだ。


「そんなに慌てなくても大丈夫ですよ」


転んだ僕をレインが優しく起こしてくれた


そっか夢じゃなかったんだね…僕は死んで若返ってナニかを無くして幼女になったんだ。

ポロポロと涙がフローリングの床に落ちる。家に帰っても父さんにも母さんにも会えない。由理ももういないんだ


「う、うぇぇん」



「何泣いてるのよ!安心なさい鼻はまだ大丈夫よ、少し低くなったくらいでメソメソするんじゃないわよ!それより、出来たじゃない!やっぱり日本人にはドアね!」


日本人にはドア?

いったい何の事だろう。グシグシと涙を拭いてレイラを見上げた。ああ僕はいつの間にこんなに泣き虫になったんだろう。何かというと泣いてばかりで恥ずかしいのをごまかしながら立ち上がった。



「魔法が無い世界の人間がいきなり何も無い空間を開くなんて無茶無理無謀だったのよね。でもドアを開けたら違う場所っていう不思議現象はどこかで見た事あるんじゃない?例えばテレビの中とか?」



得意気に笑いながら僕を見下ろすレイラ。



「あっ!青いデブ猫‼ポケットからドアを出すやつだ‼」


確かに何も無い所だとイメージが浮かばないけど、ドアノブを握るとすんなり出来る気がした。きっと小さい頃から見ていたあの猫のおかげだ。

さっきまで家族に会えない現実に泣いていた事も忘れてレイラの腰に抱きついた。



「ありがとうレイラ!レイラと青い猫のおかげでトイレに行ける‼」



「「そこっ⁉」」


あれ、デジャブ?





慣れ親しんだトイレに入って再び涙が溢れたのは秘密だ。



トイレから出てきた僕にレインがニコニコ微笑みながら、「服を探しましょう」と言うのでリビングの隣にあるウオークインクローゼットへ行ってみた。奥の棚にあった段ボール箱を開けると僕と由理の子供の時の服が入っていた。

良かった、これでヒラヒラドレスともお別れだ。

…そう思った時がありました



「あら可愛い!白地に薄紅色のバラの刺繍にピンクのサッシュリボンなんておしゃれね」


横からレイラが段ボールに入っていた服を手にして広げて、僕にあててくる。

それは僕達が七五三の時に由理が着ていたドレスだ。


「そ、それは由理のだから!僕のも入っているは…ず」



そうだった…僕は羽織袴の和服だったんだ…

和服なんて着方が分からないよ!という事は必然的に由理のドレスしかないのか?

嫌だ!

僕は棚からもう1つ段ボール箱を取って開けてみた。



「な、なにコレ⁉」


段ボールの中には色とりどりのフワフワが詰まっていた。広げてみるとそれは由理が幼い頃から習っていたバレエの衣装だった。

腰からお皿の様に広がったパンケーキスタイル、膝丈のふんわり広がるベルスタイル、確かチュチュとか言ったっけ…



「まあ!それもステキね、ちょっと着てみたら?きっと似合うと思うわ!」


レイラの目がキラキラして怖い…ドレスを持って近づいて来る!やめてあげて!この子のライフはもうゼロよっ



「ええ本当に、どれもみんな悠里に似合いそうですね」


レインまで何故か嬉しそうにチュチュを手に近づいてきた


絶体絶命の危機‼

そ、そうだもう1つ段ボール箱があった!次こそ僕の服が入っているはず!

最後の段ボール箱を開けて…僕は崩れ落ちた


入っていたのは何枚もの浴衣でした。あ、でも浴衣ならドレスよりはマシじゃない?



「ん~ それも金魚の柄がとっても可愛いけど、あんた帯の結び方分かるの?」



…分かりません(泣)



僕の願いは儚く消えて、無駄な足掻きを笑い飛ばされ、結局七五三のドレスを着せられてしまった


「ね、ねぇ下着は?」

恐る恐る聞いてみると

「無いわね」「入っていませんね」

まさかノーパンで過ごせと⁉僕は再び崩れ落ちた


「見る人間がいるわけじゃ無いんだし大丈夫よ」

「何が大丈夫なんだよ⁉パンツ欲しいよ!パンツ大事‼」


「仕方ないわね、後で何とかしてあげるから今はコレでも履いていなさい」


レイラから渡されたのはバレエの練習用のレギンスだ。ノーパンに直履き⁉

無いよりマシか…


どこまで続くドレスの呪い



それでも二人に褒められ何度も「似合うわ」「可愛いですよ」と言われ、自分でもその気になって鏡の前でクルッと回ってみたり…


二人が小さな声で「やっぱりチョロイン」と呟いていたのは聞こえなかった事にした。

でも「やっぱり」って何さ!



何度も脱いだり着たりをしていてお腹が空いた僕は、冷蔵庫にシュークリームが入っていたのを思い出したので3人で食べる事にした。

ソファーに座ってリビングを見回すと何処か違和感がある。こんなに広かっただろうか?家具だって大きくてソファーに座るとテーブルの上のシュークリームに手が届かない。


んん?僕が首を傾げながらシュークリームに手を伸ばしているとレインが取って膝の上に置いてくれた



「クリームをこぼさない様に気をつけて、ああほらギュッと持ったら横からクリームが垂れて!悠里にはシュークリームはハードルが高かったですね。はい、あーん」


「な、なにしてんのレイン⁉止めてよ子供じゃないんだから自分で食べるよ‼」



「子供でしょう?」


「子供よね」


そうだったー‼


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