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4話: 無くしたモノと貰ったちーと




目が覚めたらそこは異世界だった。

何度となく使われ、ある意味お約束のフレーズ

まさか実体験するとは。


草の上に倒れていた僕は、回りを確認するために立ち上がろうとしたのだが、着ていたお姫様ドレス(忘れてたよっ)の裾を踏んづけてコケてしまった。


「ギャンッ」


鼻打ったー!


んん?このドレスこんなに長かったかな?確か膝下くらいのアリスドレスだったはず。気付けば肩もずり落ちてしまっている。


…あれぇー



何じゃこりゃぁぁ!

手のひらに血は付いてないけどさ!




まさかの死亡、まさかの異世界、そしてお約束の若返り転生ですかぁぁ!


はっ まさか…まさか…

嫌な予感に震える指で長すぎるドレスを捲り上げて…見た



…無い

前屈みになってドレスの中を覗いて見る


やっぱり無い…!

僕は崩れ落ちるように草むらに手をついた



あいつか!

さんざん汚らわしいとか毛虫とか罵っていながらガン見していたあの痴女レイラの仕業か⁉

そうだ!「何で付いてるのよ!」とか叫んでいたし絶対あいつだ‼



「違うわよっっ!」



後頭部を叩かれ僕は再び草むらに沈んだ。



「と、に、か、く!家の中に入りなさい。詳しい事は中で話すわ」


突然現れるのが仕様なのか⁉

レイラはずんずん勝手に家の中に入って行った。


そういえば家…目の前にはスイスのアルプス地方によくあるロッジ風の2階建ての建物があった。かまぼこ形をした観音開きの窓がなんか可愛い

玄関前の階段を上がるとウッドデッキテラスにテーブルセットに揺り椅子まである!

おおログハウスだあ~建物全てが太い丸太で組まれている。

ん?何かどこかで見た事あるような…無いか


恐る恐るドアを開けると、そこは20畳程のリビングルーム なのか、大きなテーブルと木の椅子が並んでいて、壁側の窓下にはソファーが置いてある。あ、暖炉もある!良いなあこういう感じ、ちょっと憧れてたんだよな。


「突っ立ってないで早くこっちへ来て座りなさい」


キョロキョロと室内を見回しテンションが上がり気味の僕はレイラに言われて、足元にまとわりつくドレスを捲し上げながらトテトテ走り出す。




「…可愛いですね」



「くっ 可愛いわね!」



部屋の奥にあるキッチンからティーポットとカップを乗せたワゴンを押しながらレインが笑っていた。



「可愛いってなにさ⁉いったいどういう事なのさ!こんなの聞いてないよぉぉ

僕の…僕のが…!」



僕は泣きそうに、いや実際に涙が溢れてきて止まらなくなってしまってグズグズと鼻声になっている


「だんでこんだごとにぃ ズッびどいよ~」



「ま、まあ落ち着きなさい、今説明するから プッ」


レイラが最後に耐えられなくなって吹き出した。それを見てまた涙が溢れる

テーブルにティーセットを置いたレインがすかさずよしよしと頭を撫でて鼻をかんでくれた。


「はいチーン」



僕はおかしい

人前でこんなに泣くなんて、さらに鼻までかんでもらうなんてあり得ない

もしかして肉体に精神が引っ張られているのだろうか でも涙が止まらないんだ



「ぜつめいじで」


えぐえぐと泣きながらレイラの向かい側の椅子に座る、レインがタオルを持って来てくれたので顔をゴシゴシしてからレイラを睨み付けてやる。



「そうね、まず小さくなっているのは私のせいでも神様のせいでもないわ。もともとあんたの魂は他の人に比べても小さいのよ、多分由理の魂が生まれてからずっとあんたの魂を取り込み続けていたのね。強すぎる魂の側にずっといた弊害とでも言うのかしら。まあそれは今さらね。それでね、今のあんたの魂はこの世界ではそれくらいの年齢の子の大きさしかないのよ。だから肉体も魂の大きさに合わせて認証されたんでしょうね。まあ転生して赤ん坊からのスタートよりはマシでしょ」


「だいたい3~4才くらいですかね。あ、服あるかな、後で用意しますね」


冷静だなレイン。 何だか楽しそうなのは気のせいか?なあ…




「それと!僕の大切なモノはどこ行ったの⁉レイラが消しちゃったんじゃないの⁉口では汚らわしいとか毛虫とか言ってたくせにずっとガン見してたじゃん‼」


「違うわよ‼失礼ねっあんなモノガン見する訳無いでしょ!それにあんたさっき私の事『痴女』って言ってたわよね。良い度胸ね、もぐわよ!」


「もうもげてるよ‼うわ~んっっ」



「姉さんっ悠里の気持ち僕には良く分かるよ!アレは本当に大切なモノなんだ。安易にもいで良いモノじゃ無いんですよ!」


「だから、私がもいだ訳じゃないわよ!ここの神様が由理の双子の片割れだから当然女だと思ったみたいなのよ。そんな格好しているコイツも悪いのよ!」



「姉さん、

神様に悠里が男だって言わなかったんですか?」


レインが責めるようにレイラを睨む。



「し、仕方ないでしょ。由理の事でもの凄くお怒りだったのを何とか宥めてコイツの魂を受け入れて下さる様にお願いするの本当に大変だったのよ!

どんな子なんだって聞くから、管理官室にいたコイツの姿を見せたら由理とそっくりで可愛いドレス姿もお気に召したみたいで、これは良い魂だと納得されて、ようやく転生を許して貰えたんだからね!」



やっぱりレイラのせいじゃん!何で覗き見の片棒担ぐんだよ…


「姉さん…それはやっぱり不味かったと思います」



「わ、悪かったわよ!ちょっと軽率だったわ。でもあの時双子の片割れは男ですなんて言ったら、きっと受け入れて貰えなかったわ。悠里のせいで由理の魂が輪廻の輪の中に取り込まれてしまったと思いこんでたから」


「姉さんちゃんと説明したんですか?自分のミスを隠すためにいい加減な事言ったんじゃないんですか?」


「…してないわ…よ」


目がキョドってるぞレイラさんよ~



「もうこうなっちゃたんだから男らしく諦めて新しい自分と向き合いなさい!そしてこの世界を楽しみなさい‼」


うわ~んっっレイラが開き直った!レイラのバカバカ!

もう僕は男じゃ無いんだよおぉぉ バカレイラ‼



「じゃあ本当に僕はこのまま女の子で生きていかなきゃならないって事?」


「ええ、もう今さら性は変えられないし、今言った様に男だったら生き返る事も出来なかったのよ。諦めなさい」


「こんな事になるんだったら僕も輪廻の輪の中に入って生まれ直したかったよ」



「それはお薦めしません。あの時管理官室に悠里さんが連れてこられた時点ですでに魂は変質してしまっています。なぜなら死んでいるのに自我があって僕達と会話もしているのですよ?そのまま、つまり自我があるまま輪廻の輪の中で何年も、もしかしたら何百年もぐるぐる回っていても耐えられますか?」


レインが怖い話をぶっこんできた。そうか、僕は僕と認識したまま次の転生まで一人ぼっちで何年も漂う事になるのか…それはやっぱり嫌だなあ。


「それにね、たとえ輪廻の輪で浄化されて次の生を受けてもまた男に生まれるとは限らないのよ、もっと言えば人間として生まれるかも不確定だわ。だからね、今回の事は考え様によってはラッキーな事なのよ」



「そうですよ悠里さんにはたくさんチートも付けましたし、誰でも体験出来るという訳では無い異世界転生なんですから、開き直って人生を楽しんでみませんか?」


いつの間にか隣に座っていたレインが僕の頭を撫でながら慰めてくれた。



「そ、そうかな?そう言われれば結構欲張った自覚があるチートもあるし、ラノベ作家さんだって体験した事の無いリアル異世界だもんね。前世の記憶も知識もある、何よりバス、トイレ、家だってある。うん、僕は幸運だったんだね!

分かったよレイン、レイラありがとう。まだこの身体には違和感あるし色々思う事はあるけど、僕頑張ってみるよ!」



二人が目を見合せて何か呟いていたのは気付かなかった。




「「チョロイン⁉」」

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