39話 フラグな子供と登場しない主人公
ユウリ出てこない回
スコットに何度も言われてモートンも四つん這いになって草をかき分け始めたが、やはり不安が拭えなかった為ロロに空を見ている様に言いつけた。足を挫いているロロは四つん這いになって探し回るのが困難だったのと、最初にドラゴンの鱗を見つけたのがロロだった為にスコットも渋々許したのだった。
「おいモートン!こりゃあ半分に割れているが確かにドラゴンの鱗だ!探せばまだあるかもしれねえな!」
だがモートンは新たにドラゴンの鱗が見つかった事で余計に不安が募ったようだ。
「な、なあスコット、変だと思わないか?滅多に見つからない鱗がもう2枚と半分だ。やっぱり3日前の声はドラゴンで、ここに降りて来たに違いねえ。いつまた来るか分かったもんじゃねえ。なあスコットもう充分だろ?さっさとここから離れようぜ?」
実際のところ、里帰りするためにエスカ達がここに寄ったのは間違いない。ケガをしていたエスカから鱗が何枚か剥がれたのだろう。
「何だよモートン臆病風か?大丈夫だって!まあモートンの言う通り3日前にドラゴンがここに居たのは確かだろうが、一休みして樹海の奥へ飛び去って行ったに違いねえ。だがまあ食糧もそんなに無いしな、今日1日探して明日は帰る事にしよう。それで良いな?」
ロロは二人の話をぼんやりと聞いていた。明日帰る…多分自分はここに置いて行かれるのだ。足を挫いてまともに歩けない自分をこの二人が背負って行ってくれる訳も無い。
ロロは街のスラムで母と暮らしていた。スリ、かっぱらい、空巣狙いなど生きて行く為に何でもやった。持って生まれた【危険察知】スキル。練度は低かったがそのスキルのおかげで今まで捕まらずに上手くやってこれた。しかし、そのスキルに目を付けたのがスコットだった。いつもいつも間一髪のところで官兵やならず者、カモにされた冒険者達から逃げ切るロロを見てスコットは声をかけたのだ。
「俺達とパーティーを組まないか?冒険者になれば金も稼げる。何より真っ当に生きてきれいな金が手に入る。こんな追いかけ回される生活も終るぞ。お前の能力を活かすのは冒険者になるのが1番良いぜ。お前も守らなきゃいけねえ者がいるんじゃねえのか?そろそろ真面目に働いて安心させてやれよ」
冒険者が真面目で真っ当などと誰かが聞いていたら噴飯ものだろうが、ロロはスコットの言葉巧みな誘いに乗った。乗ってしまった。
実際しばらくは上手くやれていた。樹海の浅いところで薬草採取や弱い魔物狩り。ロロが回りを見張り、手強そうな魔物が近づいているとスコット達に知らせて逃げる。スコット達はロロのおかげでケガもせず順調に依頼を達成していった。
そんな生活を半年程しているうちに段々おかしな事が起こる様になった。ロロの感覚では危険な魔物が近づいているのだが、スコット達によると雑魚なのだと言う。
「あんな弱い魔物まで察知するな!昨日は魔物ですら無かっただろっ!ただの大猪に逃げ出すなんて他のやつらに知られたら笑いもんだぜ!」
そうなのだ。この半年スコット達はロロのおかげで安全に身の丈にあった獲物を狩り続けた事でレベルが上がっていたが、ロロは相変わらず見張りが主な仕事で狩りなどしなかった為にレベルが上がらずにスコット達と差が開いていたのだ。
皮肉なのは毎回【危険察知】を使っていたので【察知】スキルが上がり、ある程度の大きさの生物全てを察知してしまう。ロロには魔物も獣も区別は付かないし危険レベルもわからないのだから仕方がない。何度もスコットに「ヤバそうな奴だけ教えろ」と言われるのだが、ロロには全てがヤバそうな奴に感じてしまうのだ。
段々イライラが募っていくスコットにロロは俯くしかなかった。
そんな時に「何時もより奥へ行くぞ。往復で10日くらいだな。準備しておけ」と言われて来たのがここ【竜の寝床】だった。
到着する寸前にロロは今まで感じた事の無い程の強い生き物の存在を察知した。
こんなに近くまで気が付かないのがおかしいと後から思えば納得した。
「グウォオオオオオッ」
それは突然だった。信じられない程の大きな何かが吼えていた。全身の毛が逆立ち足がガクガクした。
いきなりスコットに突き飛ばされて木の株に躓いたロロを見向きもせずにスコットとモートンはものすごい勢いで走り去って行った。
逃げ足が速いのは一流の冒険者の証だと誰かが酒場で言っていたのを、こんな時にもかかわらず思い出した自分が可笑しくなった。
結局、大声で吼えていたナニかの姿は見る事無くその日は終わった。恐る恐る戻って来たスコットに足を挫いた事を言うと殴られた。モートンは何も言わなかったが、何だか怯えているようだった。
あれから3日、ここにいれば魔物は襲って来ない様で、スコット達は稀少な茸や薬草を採取しホクホクしていた。日に日にモートンは落ち着かなくなり、しきりに帰りたがっていたがスコットが許さなかった。ロロの足は良くなるどころか腫れが酷くなるばかりで歩いて樹海から出るなんて出来そうも無い。スコットは無理でもモートンは肩を貸してはくれないだろうか、だがモートンは一刻も早く帰りたそうだから足手まといを助けてはくれないだろう。ならばせめてドラゴンの鱗を売ったお金を少しでも良いから母に渡してくれるように頼んでみようか…
つらつらとそんな事を考えていたロロは突然全身の毛が逆立った。
(あの時と同じだ‼)
ロロは思わず辺りを見回したが、どの方向からもロロの【危険察知】に触れる生き物を感じ取れない。
スコット達に知らせ様としたが声も出ない。それ程の恐怖か、威圧を発するナニかが近くにいる!
……(上か⁉)
高い木々が生い茂る樹海の中にポッカリと空いた空間から見える青空がいきなりグニャリとよじれた様に見えた。
(来る‼)
何も無い空間から現れたのは
陽の光を浴びてキラキラと輝く毛並みを持ち、威風堂々とした巨大な狼だった。
「キャアア!待って待って待ってえぇぇ‼ずり落ちちゃううぅ~!」
………台無しだよ…




