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32話 脱皮した?フェンリルと理不尽な幼女




エスカ達を助けて、ラーヴァからは「ぜひ屋敷へ」と言われたけれど、初めての大仕事の後で疲れ果てていたユウリは「眠いから帰りゅ」と断った。また改めて礼に行くと言うラーヴァに頷くのが精一杯のユウリはシリウスの背中で夢の中へ旅立って行った。


「こいつも今日は疲れたんだろう。何しろ誘拐されるわ、結界騒ぎでレイラと会うわ、ドラゴン達の命を救わなきゃならないわ、怒涛の1日だったしな。

…なあラーヴァよ、こいつはまだ転生して日も浅いし見た目通り子供なんだ。あまり大きな荷物を背負わさないでくれ。俺はこいつにこの世界を楽しんで貰いたいし好きになって欲しいんだよ」



「判っておる。だが、これから結界を出入りするにはユウリ殿の力が必要じゃ。妾達ドラゴンの命を握っているのも同義なのじゃ。何とか良好な関係を築かねば…」



「そんなに気負うなよ。ユウリは喜んで協力すると思うぜ。こいつはドラゴンに憧れていてお前に会えて、すげえ喜んでいたしな。とにかくこれからの事はまた考えようぜ。今日はもうユウリも限界だしな。

ただ、あのキリルとかいうヤツの事は許さねえからな!お前の息子だか何だか知らないがキッチリ落し前はつけてもらうぜ」



「判っておる……あやつの事は必ずや厳しく処断すると約束する。どうするか決まったら報告に行く…」


「そうしてくれ。いい加減な処罰だったら俺が行くからな。それじゃあな」


シリウスはユウリを背負ったままフェンリルに変化すると踵を反して帰って行った。






「ラーヴァ様…」


「ああ、これからが正念場じゃ。幸い我が主殿はドラゴンに好意的じゃ。主殿の手を煩わせる事は申し訳無いが、出入りは問題無く出来るじゃろう。だが、ユウリ殿を主と仰ぐ事に反対する者も居るだろう。三候を呼びたいが結界がのう…仕方無い。妾が出向くしか無いであろうな。その前に…キリルは何処じゃ?」


「申し訳ありません!エスカが帰って来たのを見て、ついキリル様の側を離れてしまいました。気がついた時にはもうお姿が…本当に申し訳ありませんでした」


「そうか…良い。どうせ外へは行けぬのだ。里へ戻ったら皆に捜索させよ。必ず妾の前に連れて来るのじゃ。良いな!」


「畏まりました!」



「怒涛の1日か…確かにな。だが妾の1日はまだ終りそうにないわえ、長い1日になりそうじゃ…」







「ユウリ家に着いたぞ。起きているんだろ?」


「…うん。シリュー知ってたの?」


「ああ お前本当に寝てる時は寝息が聞こえるんだ。クピークピーって」


「うそっ⁉やだもう!じゃあラーヴァさんにもバレてたかな?」


「いや、いつもなら気付くだろうが、今のラーヴァはそれどころじゃ無いからな」


「そっか…」


疲れているのは本当だったが、あれ以上ラーヴァにお礼を言われるのも、主と言われるのも何となく嫌だった。自分はただ出来る事をしただけだしラーヴァ達ドラゴンの為に何とかしたかっただけだ。そもそも神様が結界を張ったのは自分がここにいたからだ。神様が安全の為なのか、閉じ込めようとして張ったのかは判らないが、何れにしても自分が原因なのは変わらない。


「はあ…神様結界解いてくれないかなあ。ドラゴンさん達の為にできるだけ頑張るけど、これじゃあ私いつまで経ってもこの世界を見に行けないよ」


「確かにな。お前が居ないとラーヴァ達は出る事も入る事も出来ないんだからな。下手をしたらラーヴァ達はお前をここから出ない様にあの手この手で言って来るだろうな」


「私もそれが怖い。結界の出入りの為にだけ私に忠誠を誓うなんて…私はドラゴンさん達と仲良くしたいだけなのに。こんなの嫌だよ」


「まあ一人で悩んでいても仕方無い。面倒臭いがまたレイラに相談してみろよ。神サンに頼んでもらうか、他に手が無いか聞いてみるのが最善だな」


「そうする…」





結論としては、結界は解かれる事は無かった。


レイラに相談すると、既にレイラから神様にお願いしたらしいのだが、ただ一言「ならぬ」と言ってそれ以上何を言っても駄目だったらしい。

ただ、竜王にも結界を通す事が出来る力を付与してやっても良いと。

ある条件を飲むならば…だけど。


いったいこの世界の神様は何を考えているのだろうか。頭が痛くなるユウリだった。




「ねえシリュー、ここの神様って私をどうしたいのかな?静かに目立たず生きていけって言うくせに、こんな面倒事に巻き込んで来るなんてさ」



「んん…それについては俺も判らないんだよなあ。言ってる事とやってる事がちぐはぐだしな。まあ、お偉い方の考える事は俺らには判らないさ。何かあったらレイラがまた連絡してくるだろうよ。それよりどうするんだ?その条件…」


「う~ん どうしようか?この条件ラーヴァさんには厳し過ぎるよね。私も望んで無いし…でも正直に言うとラーヴァさんにこの力が付与されたら、私いつでも街へ行ったり世界中観光出来るんだよねえ。だけど、そんな我が儘な理由じゃきっとラーヴァさんは怒るよね」


「怒るかどうか本人に聞いてみるしか無いだろ。もともとラーヴァもそのつもりみたいだしな」


「でも…難題だよ?ホントにそんな事可能なのかな?」


「ここでグチグチ言っていても始まらないだろ?少し間を置いてラーヴァに会いに行ってみようぜ。それよりユウリ今日は色々あったんだ。風呂入って寝ちまえよ」


「そうだね。明日は明日の風が吹くってやつだね!ありがとうシリュー!」


「おっユウリにしては良い事言うな!その通りだ。じゃあな早く寝ろよ」


「うん!お休みなさい!」



……「あ、ご飯は?」




疲れ過ぎていて、そうたいしてお腹が空いてなかった事もあり、夕飯を食べずに寝てしまったユウリは朝方まだ陽が昇る前に空腹で目が覚めてしまった。

何気無くカーテンのすき間から窓の外を覗くと庭に何か動く姿が見えた。


「何だろ?鹿か猪かな。森へ帰らないとシリューの朝ゴハンになっちゃうよ」


少し物音を立てれば驚いて森へ帰るだろうと、ユウリは窓を開けようとカーテンに手をかけたところで庭にいたモノと目が合った。


「っ‼」


思わずしゃがみ込んでしまったユウリは口元を押さえて声を出すのを堪えた。


(何であの子がここにいるの⁉まさかまだ私を殺そうとしてるの⁉やめてよもう…)


庭にいたのは昨日いつの間にか居なくなっていたキリルだった。あれからどこにいたのだろう。ラーヴァ達が手分けして探すと言っていたが捕まらなかったのだろうか。


とにかくシリウスに知らせなければと、ユウリはそろそろと屈みながら部屋を出るとシリウスの部屋へ向かった。


「シリュー!シリュー起きて!大変な……の?」



鍵のかかっていない部屋へ入りベッドに潜り込んだところで違和感に気が付いた。

いつもなら極上のモフモフの中へ潜り込んでいる筈なのだが、そこには何も無かった。いやモフモフが無かっただけでシリウスはちゃんとそこに寝ていた。


ただフェンリルの姿では無く、裸の少年シリウスが寝ていただけだ。


「何だ?どうしたユウリ?怖い夢でも見たのか?それとも…夜這いか?ユウリにはまだ早いと思うぞ?」


潜り込んで来てペタペタと体を触って、パクパクと口を動かしているが声にならないユウリにシリウスはニヤリと笑うと上半身を起こした。


「毛、毛が、モフモフが無い!は、はだ、はだか!シリュー脱皮しちゃったの⁉


「はあ⁉お前何言ってるんだ?脱皮なんてするわけ無いだろ!て言うか出来ねえよっ‼」


「だ、だってシリュー毛が無い!」


「昨夜から俺は人間の姿でいただろ……寝ボケてるのか?」


「…そうだった。でも何で裸なの⁉」


顔を真っ赤にしながら目を逸らすユウリ。


「俺はいつも寝る時は裸だが?」


「もう!は、早く何か着てよ!シリューは夜人間禁止!」


「何だよそれ…はあ。それよりどうしたんだ?何かあったのか?」


「あ!そうだった大変なの!庭にね、あの子がキリルがいるの‼どうしよう⁉まだ私を狙ってるのかな?怖いよ…」


「アイツが?……ああ居るな。だが殺意は無さそうだ。放っておけば良いさ。どうせこの家には入って来れないんだ。朝になればば消えてるだろ」


「良いの?シリューはキリルの事怒っていたじゃない」


「まあな今でもぶん殴りたいと思っているが、アイツの事はラーヴァに任せたんだ。ラーヴァがどうするのか判らないが一度はラーヴァの顔を立ててやらないとな。まだ夜が明けるまで間があるからユウリも部屋へ戻って寝ろよ」


「でも外にキリルが居ると思うと怖いよ」


「じゃあここで寝るか?」


「………うん。でもシリューは人化を解いてマメシバフェンリルになってね」


「…理不尽過ぎだろ…」

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