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31話 結界通過と最強幼女





「エスカ『いらっしゃい』」


………………あれ?



気合い十分でユウリがエスカを招いたのだが、崖の際でホバリングしていたエスカは動かない。正確にはユウリの招きに答える事なく、疑い深い目でユウリを見つめていた。


「あれ?何で来ないの?」


首を傾げたユウリが後ろを振り返ってラーヴァを見た。


「それは…」


「ブッ!ハハハハッ 当たり前だ!我が誇り高きドラゴンが貴様みたいな人間の子供の言う事など聞くものか‼大きな口を叩いても所詮はガキの戯言よ!」



「そんな……じゃあどうしたら良いの」



キリルがバカにしたように大笑いする中、ユウリはキリルに言われた事を反芻していた。

確かに、まかり間違えれば結界に激突して最悪2000m以上の高さから真っ逆さまに落下してしまう。見ず知らずの人間の子供が手を広げて招いたって、はい判りました、とは言えないだろう。そんな危険な賭けは出来ないよねえ。


うんうんとキリルの言葉につい頷いてしまったユウリだった。




「ユウリ殿、妾を外に出す事は出来るか?」


「ん?ラーヴァさんを?多分出来るよ。ラーヴァさんが私を信じてくれているならね。私はラーヴァさんの為に力になりたいと思っているし、ラーヴァさんの事お友だちって言ったら怒るかもしれないけど…私ラーヴァさんの事好きだから」



「…そうか、友と言ってくれるか。ならばユウリ殿、妾を外に出しておくれ。妾がエスカ達に話をしよう。そして再び妾をこの大地に呼び戻して欲しい。さすればエスカ達も後に続くであろうから」


「なっ⁉母上何を言っているのですか!竜王たる母上がそんな子供を信じるなどと!私はそんなふざけた事は認めない‼」


「黙れ。結界を何とか出来るのはユウリ殿だけじゃ。外にいる雌ドラゴンが里に入れないという事はドラゴンが滅ぶという事なのじゃ!」


「母上‼」


「サラ!こやつを黙らせておけ。力づくでもかまわん」


後ろに控えていたサラがキリルの手を引こうとしたが、乱暴に振り払われてしまったが、すかさず足払いをかけてキリルが倒れたところを押さえ付けた。


「サラ貴様‼」


「お静かに。私も女ですから彼女達の焦りは理解出来ます。ユウリ様にしか彼女達を助ける事が出来ないとラーヴァ様が仰るのですから、私はユウリ様を信じます。それにエスカは私の妹なのですよ」





「ユウリ殿頼む!」


ラーヴァは翼を広げ舞い上がった。



「判った!【ラーヴァ!行ってらっしゃい!】」


見えない結界にがある大地と空の境界へラーヴァは躊躇無く飛んで行く。

一瞬空間が歪んだ様な気がしたがラーヴァは真っ直ぐにエスカ達の元へとたどり着く事が出来た。


「抜けた!やったなユウリ!」


シリウスも内心不安だったのだろう、尻尾がブンブン振られている。


「バカな!こんな子供になぜっ⁉」



「はあ~ 何とか出来たね。でも問題はこれからよね。ラーヴァさんが彼女達を上手く説得してくれると良いんだけど」





空中で4頭のドラゴンがホバリングしながら丸くなって相談している様子はとてもシュールで、不謹慎だけどちょっぴり笑える姿だった。




『ユウリ殿!話はついた。妾が最初に抜ける。その後一頭ずつ行くから頼む!』


「判りました!ラーヴァさん以外のドラゴンさんは、自分の名前を私に向かって念話を飛ばしてから来て下さい!絶対に里に帰しますから私を信じて下さい!」



さっきは【いらっしゃい】とイメージしたけれど違う気がした。レイラはここを自分の家だと思えと言ったが、ドラゴン達にとってはずっと昔から懐かしい故郷なのだ?上から目線で、【いらっしゃい】では駄目だと思った。


(そうだよね、ドラゴンさん達はここに帰って来たんだもの。迎える言葉を間違ってたよ)



「ラーヴァさんいきますよ!」


【ラーヴァおかえりなさい‼】


グウオオッと一声叫んで、ラーヴァは一直線にこちらへ戻って来た。もちろん何の障害も無く、崖っぷちの大地に降り立った。


それを見つめていた3頭のドラゴン達は顔を見合わせて、グウオオッと一斉に空に向かって吠えた。そして翼に傷のあるエスカがこちらに向かう体制になり、2度3度と翼を揺らしてからユウリに向かって叫んだ。


『私はエスカです!ユウリ様よろしくお願いいたします!』


「任せて!エスカさんいきますよ!」


【エスカおかえりなさい‼】



「姉さん!」


「エスカ!怪我は⁉」


サラとエスカの姉妹が再会を喜びあっているなか、次々と残ったドラゴン達が名乗りを上げていく。


『カルディナです!よろしくお願いいたします!』


【カルディナおかえりなさい!】


『セ、セレッサですう。あの本当に大丈夫でしょうかぁ』


「大丈夫よ!ラーヴァさんもカルディナさんも無事に通り抜けたでしょう?」


『で、でもお…』


「ええい!グズグズしとらんで早くこちらへ来やれ!」


「セレッサさん、私の事が信じられ無くてもラーヴァさんの事は信じられるでしょう?ラーヴァさんが信じた私を信じて下さい!」


『わ、判りましたよお。よろしくお願いしますよお!』


【セレッサ!おかえりなさい!】




「はあ~ 良かった。疲れたよシリュー、モフモフさせてえ」


雌ドラゴン達を無事にこちらへ入れる事が出来て、少し自分に自信がついたユウリだったが、半端無い集中力と緊張を強いられてくたくただった。


シリウスのお腹にポスンと倒れ込みフェンリルの毛並みを堪能していると、ラーヴァ達が近づいて来た。エスカ達はサラから【石】を受け取って人化していた。エスカはサラと同じ茜色の髪で左手に酷い傷痕があった。カルディナは濃いオレンジ色のショートカット、セレッサは長いピンク色の巻き毛がふわふわと揺れていた。着ている服は少しずつ濃淡が違うが赤いアオザイ風。


ラーヴァを筆頭にサラ、エスカ、カルディナ、セレッサと続き、ユウリの前に来ると一斉に跪き頭を垂れた。



「ユウリ殿、此度は我等一族の危機を救って頂き感謝する。この者達もユウリ殿のおかげで無事に里にて出産出来よう。キリルの無礼な仕打ちにも拘らず妾達を助けて頂いた。この恩にどのように報いれば良いのか判らぬ。妾に出来る事ならば何でもしよう、どうか教えて欲しい」



「えっ?私はたいした事してないよ。ただドラゴンさん達が安心して卵を産む事が出来れば良いなって思っただけなの。お礼ならレイラに言って。レイラが神様に殴りこ…ゲフン、説得しに行ってくれたし結界を通るヒントもくれたんだし。私からレイラに伝えておくからそんなに気にしないで良いと思うんだけど。だいたい元はと言えば神様の…ううん何でも無い!」


「だがそれでは妾達ドラゴンは恩知らずになってしまう!先程上つ方から加護を頂いた。それも【安産】の加護じゃ。妾達ドラゴンはなかなか孕まぬゆえ、この加護は本当にありがたいのじゃ。これもみなユウリ殿のおかげなのじゃ。妾にはレイラ殿や上つ方にお願いをする術も無いのだからな」



「う~ん、そう言われても。近くに引っ越して来たご挨拶代りにちょっと頑張りました! で良くない?ね?私もドラゴンさん達と仲良くなりたいし、そうだ!里で宝探しをさせてくれれば良いな」


「そんな事しか妾にさせてくれないのかえ…」


「ラーヴァ様、いえ竜王様。私達は竜王様の決定に従います!」


後ろに控えていた四人が突然声をあげた。



決定?何を決めたの?ヤな予感…



「そうか。そなた達も納得したのじゃな?」


「「「「はい!」」」」



「ユウリ殿、いや主殿よ。我等一族は竜王ラーヴァの名の下にユウリ殿に忠誠を誓う。この地の主であるユウリ殿に従うのは当然の事ではあるのだが、今こそ絶対なる誠を捧げよう」


「いやいやちょっと待って‼私は単なる地主であって、ラーヴァさん達を従えるつもりも、偉そうにこの地を治めようとか考えて無いって言ったじゃない!だいたい私は人間でこんな子供なの!ラーヴァさんの爪の先で簡単にプチッよ!プチッ‼そんな私に従うとか、ドラゴンの誇りはどこ行っちゃったのよ⁉」



「だがなあユウリよ。これからもドラゴン達が出入りするにはお前の力が必要なんだぜ。ドラゴンを生かすも殺すもユウリ次第って事だな。ユウリにお願いしなきゃ竜王様のラーヴァだってここから一歩も出る事は出来ないんだ。ユウリを殺したりしたら二度と出れないどころかアイツらの怒りでドラゴン達は滅亡しちまうだろうな」


「その通りじゃ。上つ方からも下知があった。【ユウリを害する事許さず】とな。妾達ドラゴンの命運は主殿の手のひらの上にあるのじゃ。だが妾が主殿に従うのはそれだけが理由では無いがなフフッ」


最後のフフッが怖いですラーヴァさん!




「そういう事だからなユウリ、いや我が主よ。諦めてこのテーブルマウンテンの頂の主になっちまえよ。いや、王様か?良いんじゃないか?3歳の王様!なあ」


笑いながらそう言うとシリウスはサラの方を見た。



「おい、まだ【石】持ってるか?」


「あ、はいございます」


サラから【変化の石】を受け取り、シリウスは16、7の少年の姿になった。


「何じゃお主そんなに若かったのかえ?口振りが爺臭かったゆえ、小憎らしい年寄りじゃと思うておったわ」


「うるせー!ある程度ユウリと近い年頃が良いだろってアイツらが言うからだ!少し黙ってろよ」



「我フェンリルにして【剣聖】と呼ばれしシリウス・カレンベルクはユウリ・シノノメを主として忠誠を誓う。我が命と剣…は今無いが、全てを賭けて主を護るとここに誓う!」


急に真面目になって跪くシリウス。


シリウスがシリアス…面白く無い



「シリューまで何なの⁉もうやめてよ!私は静かに目立たずひっそりと生きていかなきゃならないのに!ドラゴンにフェンリルが私に忠誠⁉やめて~!」


「別にかまわぬのでは無いか?下界の人間どもに知られなければ良いのであろ?わざわざ広める事もない。主殿はこの地で暮らすのじゃ。我等が忠誠はそれぞれの魂に刻んでおけば良い事であるからの」



「ううっ 私何にもしないし出来ないよ?この世界をひっそりこっそり楽しみながら生きて行きたいの。だから誰にも言わないって約束してね。それから、主殿と呼ぶのは止めて。今まで通りユウリって呼んでよね?」



「凄いなユウリ、幻獣フェンリルとドラゴンの王炎竜王がユウリに下るんだ。世界最強の3歳児だな!」


「ほんにその通りじゃ。最強の幼女様じゃな!ククク幼女様よ、これから良しなに頼むぞ」



「イヤアアアアッ‼」









無事に全員が結界を通り抜けたのを黙って見ていたキリルは、唇を噛みしめ何かにじっと耐えている様だったが、サラがエスカとの再会に夢中になっている隙にいつの間にか居なくなっていた。

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