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27話 結界と落下




「ちっ!」



キリルによって連れ去られたユウリを追ってシリウスは部屋を飛び出そうとしたが、ラーヴァに止められ怒鳴った。


「何故止める⁉そもそもお前らの親子喧嘩が原因だぞっ!早くしないとユウリが樹海に落ちてしまうんだ!俺は行くぞ!……そうかお前もユウリを排除したいんだな⁉」


グルルッと威嚇の唸り声をあげるシリウス。



「まあ待て。ちと落ち着かんか、この駄犬が。心配せずともユウリは下界に落ちる事は無い。結界が張られておるわ」


「結界?どういう事だ?ラーヴァお前が張ったのか?」



「いや妾ではない。今までは結界など無かった。しかしユウリが転生し、土地の所有者だと上つ方から下知があって直ぐに結界が張られたようじゃ。今この場所は入る事も叶わず出る事も出来ぬ閉ざされた土地になっておる。お主は知らなかったのかえ?」


「そんな結界が…俺は知らなかった。まてよ?じゃあ俺らはともかく、お前らドラゴンは不味いんじゃないか⁉出る事が出来ないのも困るが、この里で卵を産もうとして帰ってくる雌ドラゴンは…!」


「そうじゃ。結界が張られてからまだ数日ゆえ帰って来る予定のドラゴンは居なかったのが不幸中の幸いであった。じゃが、このままだと…」


「そうか!だからお前さんは早々にユウリに会いに来たんだな?」


「ああ。何とか丸め…いや、話をして結界を解いて貰おうと思うての。お主らが街へ行きたがっているのを聞いて、ならば直ぐにでも行ってもらおうと里へ招いたのじゃ。金になる物が手に入れば直ぐに結界を解いて街へ行くだろうとな」



「そういう事か。だが多分ユウリも結界の事は知らないと思うがな。俺も転生して直ぐにこの土地をざっと見回ったが、あの家の回り以外ユウリの魔力はかんじなかった。その辺はお前さんの方が敏感だろう?」


「うむ。結界を調べた後でユウリに会いに行ったのだが、結界はユウリの魔力では無かった。波動が違うのと、ユウリよりももっと強く太い波動じゃったわ」



「ユウリよりも強い…こう言っちゃ何だが魔力だけならユウリは俺よりも、いや竜王であるお前さんより強いと思うが、それよりも強いとなると…まさか!」



「そうじゃ。他にはおるまい…さてどうするか。そろそろ産卵の為に戻って来る予定のドラゴンもおるじゃろう。あまり時間はかけられん」



「ちょっと待てよ!雌ドラゴンも大事だが今はユウリを取り戻さないと‼それにユウリなら神さんに近い奴らに連絡する手だてを持っている。ユウリを早く連れ戻して結界の事を聞いて貰えば良いんだ!」


「なんじゃと⁉ばかめ!それを早く言わんか!行くぞ駄犬よ!」


「はあっ?今何と言った?」


「聞こえなんだか?ばかめじゃ」


「は?」「ば、か、め!じゃ」







「ンギャアアアア!」


「うるさいっ黙れっ殺すぞ!」


キリルに連れ去られたユウリは叫びながらも冷静に考えていた。

この子よりもシリウスの方が絶対足が速い。ドラゴンが走るなんてどの小説にも書いてなかった。ドラゴンの姿になって飛ばれては不味いが、ラーヴァも追って来るだろう。それまで何とかこの少年を落ち着かせようと思った。


里のはずれまで来るとキリルはユウリをポイッと地面に投げて、後ろを気にしながらキョロキョロと周りを見回した。


「おいお前!お前は境界の崖がどっちにあるか知っているか?」


「は?境界?崖?知らないけど、ここはテーブルマウンテンなんだから適当にまっすぐ走れば崖があるでしょ?」


こいつ何言ってるんだと見上げれば、キリルも同じ事を思ったのかバカにしたような目で見下ろしていた。


「我が里は中央に位置している訳ではない。つまり方向を誤れば崖まで何倍もの時間がかかる。お前はこの土地の所有者だと言ってるくせにそんな事も知らないのか?」


「だって家の回りしか散歩した事無いし、これが初めての遠出だもん!だいたい3歳児に何を言ってるの?私は確かにこの土地の所有者だけどね、治める気なんて無いしホントにただの地主ってだけなんだから!あなたこそ勢い良く飛び出したくせに迷子なの?」


「う、うるさいっ!迷子では無い!どちらへ行くのが最短かと考えただけだっ。それよりもお前!さっきと大分態度が違うな?」


「え?そ、そんな事無いでしゅよ?それよりラーヴァさんに謝った方がいいでしゅよ?樹海行ったら二人ともしゅぐに死んでしまいましゅ」


「何故謝らねばならん⁉この世界最強のドラゴンの里がお前みたいな人間の子供に治められるなど我慢ならぬ!それに私は竜王の息子だぞ?樹海の魔物など恐れるに足らん!」


「じゃあ一人で行ってくだしゃい。私が樹海に行ったら瞬殺されましゅ」


「そうだな。その為に連れて来たのだからな。お前さえいなければここは我々ドラゴンの物だ。さあ行こうか、空からなら地形が良く見えるだろうからな」


そう言うとキリルは人化を解きドラゴンに戻った。足でユウリを掴むと空に向かって飛び立った。


「ンギャアアアアッ」



またか!

早くシリウスが来ないかと、下を見渡すと里の方から巨大な白い獣が疾走してくるのが見えた。


「シリューッ‼」


シリウスが見上げユウリと目が合った、ような気がした。

大丈夫。シリューが来てくれたんだから、きっともう大丈夫だ。


「チッさすがフェンリルというところか!だがこの森さえ抜ければ!」


強気に言うキリルだったが、だんだん高度が下がって行く。ユウリの足に森の木々が当たる程に低い所を飛んでいる。ドラゴンとは言え成体になっていないキリルでは長く高度を保ちながら飛ぶ事は出来ないのだろう。ましてやユウリを掴んだまま飛んでいるのだ。



「痛いっ 痛いよ!もっと高く飛べないの⁉」


「うるさいっ!お前が重いからだっ落とされたくなければ黙ってろ!」


「重いって⁉3歳児の私が重い⁉違うでしょ!あんたの力が弱いからよ‼」


「何だと⁉…そうだな樹海まで連れて行かなくても今落としてしまえば良いのだ!お前さえ居なくなれば全て丸く収まる。母上も内心は望んでいるはずなのだから!きっと私を褒めて下さる!」


そう叫ぶとユウリを掴んでいた足を開いた。


「キャアアアアッ‼」


ガサガサッバサッボキッと音を立て枝を折りながら落ちていくユウリ。必死で枝を掴もうとするが空を掴むばかりで落下は止まらない。



転生してからまだ10日も経って無いのにまた死ぬのか…もう一度シリューの尻尾触りたかったなあ~


「後でいくらでも触らせてやるからしっかりしろっ‼」


ボフンッ

ユウリが落ちたのは固い地面ではなくモフモフの巨大なフェンリルの背中だった。落ちた勢いで跳ね上がったユウリを再度背中で受け止めたシリウスの毛を掴み、顔を埋めて叫んだ。


「遅いよっ 怖かったんだからあ~っ!あ~モフモフ!生きてる!私生きてるよ!良かったあ~」


「大丈夫か?血の匂いがするぞ、怪我してるのか?」


「え?あ、ほんとだ!あちこち切れて血だらけだ!痛いっ見たら痛くなったよ!」


「あの小僧!許さねえ!」


シリウスは叫んでユウリを乗せたままキリルを追いかけようと木々の間を走り抜ける。


「イタタッ痛いから止まってシリュー‼枝が当たって痛いのっ!あんな奴の事より私の事心配してよっ」


落ちた時に枝で切った傷に更にシリウスが森を走る為に傷が増えていく。それにもうあのキリルとか言う我が儘ドラゴンに会いたくない。勝手に樹海でも何処へでも行って欲しい。それに…


走るシリウスと背中にいるユウリの上に巨大な影が差した。

全長30m以上はあるだろう巨大な深紅のドラゴンがユウリ達の上を飛んでいた。



「子供の躾は親の責任だよ。後は任せてちょっと休ませ…て」


「ユウリ?おいっ しっかりしろユウリ‼」



今日はホントにいろんな事が有り過ぎた。

子供にはハード過ぎる1日だた。お昼寝してもバチは当たらないよ、ね?

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