22話: マメシバフェンリルとドラゴンの背中
いつも拙作を読んで頂き、本当にありがとうございます。
息子の引っ越しと入学式のため、日本海側へ行かねばならず、週末まで更新出来そうにありません。
この小説にブックマークを付けて下さった皆さま。ちょっとだけ読んで見ようかと覗いて下さった皆さま、どうか広い心で見守って下さいませ。
シリウスの青春やら純情やら初恋w?はスルーして、ユウリ達は火山のふもとにあるというドラゴンの里へ行く事になった。
金目のモノがゴロゴロ落ちているという黄金郷の様な場所に行くのと、初めての遠出にユウリのテンションはMAXだ。
「ユウリの足では何日かかるか判らんからの。駄犬に乗っても朝になってしまうゆえ妾が乗せて行ってやろうかの?」
「キャアッ!ほんと⁉良い子にならないと乗しぇてくれないって言ってたよ?良いの?」
「ユウリは良い子であろ?」
「あいっ!ユウリは良い子でしゅ‼乗しぇて下しゃい!」
「おいおいッちょっと待てよ!いきなり竜の里へ行くのか⁉ユウリはまだ家の回りも見てないんだぞ?おいユウリっ おまえドラゴンに乗れるからって調子良すぎだぞ!」
「え~?ドラゴンに乗れるんだよ?異世界に転生してやりたい事ベスト3に入るイベントだよ⁉断る理由ある?無いよね‼絶対ドラゴンに乗せて貰うんだからねっ‼」
「あ~ユウリ?ちなみに後の2つを聞いても良いか?」
「えっとね、一般的にはハーレムとか、ダンジョン攻略とかだね。私は違うよ!ハーレムなんて興味ないからね!あ、でもモフモフハーレムなら有りかな。私はフェンリルをモフリたい、ドラゴンに乗りたい、妖精に会いたい、の三つかな。あれ?もう二つも夢が叶ってる⁉ 凄いッ!私って幸せ者だよね~!」
シリウスは頭を抱えているが、そんなに変な事を言ったつもりの無いユウリはキョトンとしている。
「ほほ ユウリはそんなにドラゴンに乗りたかったのかえ?妾の背中に人間を乗せるのはユウリが初めてじゃ。誇るが良いぞ。それにしてもハーレムとな?人間とは相変わらず汚らわしい生き物じゃ!ユウリの言うモフモフハーレムとは何じゃ?駄犬をたくさん侍らせたいのかえ?良い趣味とは言えぬの…それより竜の子はどうじゃ?我が里には可愛らしいのがたんと居るぞ?」
「やめろっ!そうやってユウリを誘惑するのはっ ユウリも!ラーヴァにふらふら近づくんじゃない‼おまえは街へ行ったらすぐに誘拐されるタイプだな!」
ユウリを囲い込みたいラーヴァの思惑にホイホイ乗ってしまいそうなユウリに不安が募るシリウス。
「えっそんな事無いよ?知らない人からお菓子あげるって言われてもついて行ってはいけませんって我が家の家訓だもん」
「それは家訓とは言わねえ…一般常識だ。じゃあユウリ、もし知らない人が可愛い子犬をあげると言われたら?」
「是非ともお邪魔しますっ!」
「違うだろっっ‼」
「もういいかえ?お主らの話を聞いていては日が暮れてしまうわ。そろそろ行くとしよう。駄犬は走ってついて来やれ」
「えっそんな!ねえラーヴァしゃんお願い!シリューも乗しぇてあげて下しゃいっ」
「妾がこの駄犬を乗せる?それは出来ぬな。妾の矜持が許さぬ。だが……そうじゃな、そこの駄犬が生まれたての子犬程に小さくなれるのならばユウリが抱いて行くが良い。どうじゃ?」
ドラゴンの里まで走って行けというラーヴァの言葉に、ユウリは泣きながらラーヴァにすがり付いて頼んだ。確かにドラゴンがフェンリルを背中に乗せるというのはラーヴァの自尊心は傷つくだろう。だけど、どうしてもシリウスだけを走らせるのは嫌だった。シリウスと一緒にドラゴンの里へ行きたい。
だがシリウスは今以上に小さくなれるのだろうか。あまり魔力制御が得意そうではないシリウスは小型化に苦労していた。それにシリウスは小さい子犬になってまでドラゴンに乗りたがるだろうか。ましてや3歳幼女のユウリに抱っこされてまで…
「ふんっ俺は走って行く。本気で走ればお前らより早く里へ着くさ!」
ラーヴァのニヤニヤと試す様な笑いにムカついてシリウスは案の定ドラゴンに乗る事を断った。
「いやっ!シリューお願い小さくなってよお!一緒にラーヴァさんに乗ってよおっ!私がしっかりギュッて抱いて行くからシリューお願い!」
しがみ付いていたラーヴァから離れて今度はシリウスにすがり付くユウリ。シリウスが若い頃憧れていた【深紅のラヴィ】が実はドラゴンで、目の前のラーヴァだと知った彼の胸中なんて今のユウリには判る筈も無い。ただただシリウスと離れたくない一心だった。
「ねえシリューお願いだよ…グスッ」
「……ああもうっ‼判ったよ。小さくなりゃ良いんだろ‼その代わりユウリ、しっかり俺を抱いていろよっ 」
「うん判ってる!ちゃんとギュッてしてるから安心して。絶対シリュー落とさないからね!」
「……縁起でも無い事言うなよ…」
「…では駄犬は出来る限り小さくなるのだ。…違うっそうではない!ヘソの下に力を籠めよ。ヘソの下に玉を造る様にじゃ。玉が出来たら小さく小さく握り潰す様に力を入れよ」
………ラーヴァの指導を聞いていたユウリは無くしたモノを思いだし、ちょっと前屈みになってしまった…
「そうじゃ。…それくらいならユウリが抱いて行けるであろ。さあユウリ駄犬を抱いて、後ろへ下がれ」
言われたユウリは急いでマメ柴サイズになったシリウスを抱き上げてラーヴァから離れて行った。
「ちょっと重いね。もう少し小さくなれない?」
「後だ後ッ!ほらもっと離れるんだ!」
ヨロヨロしながらシリューを抱えて走るユウリの背後では、眩い光が放たれてドシンッバサッという音が聞こえる。
「ユウリ後ろを見てみろ」
シリューに言われて振り向いたユウリが見たものは…
午後の光を反射して輝く、巨大な深紅のドラゴンが佇んでいた。
「ふえええぇぇー!しゅごいしゅごい‼真っ赤なイチゴのドラゴンしゃんでしゅぅぅっ!」
「イチゴって…おまえ…」
「私の一番しゅきな果物だもん!ラーヴァしゃんがイチゴのドラゴンしゃんになった‼しゅごいきれいで美味しそう」
『ほほほ ユウリは妾を食べたいのかえ?』
ブンブンと首を振り、ラーヴァの足下に駆けよった。
『ラーヴァしゃん大しゅきでしゅ!きれいでしゅねえ~格好いいでしゅ!でもあれ?近くに来たらイチゴの色じゃ無いでしゅね?もっと濃いザクロ?ううんブドウ…あっ赤ワインの色だっ‼」
足下でひとり興奮しているユウリを前足でペチペチ叩いているマメシバシリュー。
『さあ翼から背中に上がっておいで。エアバリアを張っておくから大丈夫だとは思うが動かずに大人しく座っている様にな」
ユウリがよつん這いになってソロソロ上って行くのをマメシバシリウスが後ろからお尻を押して行く。
何とか背中の中央に座り込んだのを確認したラーヴァはゆっくりと上体を上げ翼を大きく広げた。
『では、行くぞ!』
深紅のドラゴンはその巨体にもかかわらず、フワリと優雅に大地から浮き上がった。1度2度翼をはためかせると徐々に高度を上げていく。そしてテーブルマウンテンの地平線が見える程の高さになると頭を下げて体を水平にした。
『さあユウリ、今から空の旅路じゃ。この妾の背に乗った事を孫子の代まで誇るが良いぞ!魔風を纏うでな、しっかり掴まっておれよっ』
「キャーッ!シリュー飛んでる!私たち飛んでるよッ!凄いねっ ああホントに異世界にいるんだね!シリュー、シリュー⁉」
どうにかマメシバの子犬程の大きさまで変化出来たシリウスは、ドラゴンの背中にぺチャリと張り付いて息も絶え絶えだ。
「ど、どうしたのシリュー⁉しっかりしてよシリュー‼」
「…こ、こんなに高いとは思わなかった。落ちたら死ぬオチタラシヌ…」
マメシバシリウス、いや幻獣フェンリルは高所恐怖症だった




