21話: 鳥の頭と駄犬の純情
ラーヴァがユウリのペット?であるフェンリルの躾をしてやると言い、更に劇美味フルーツのアプチェを採って来てやろうと二人?で森の中へ消えた後、ユウリは恥辱にうち震えていた。
「あああっ!何で⁉何でラーヴァさんと話すとカミカミ幼児言葉になっちゃうのー!それに頭の中まで3歳児に‼あーっ恥ずかしい!ラーヴァしゃん!『しゃん』てナニ⁉確かにシャンだったけれども‼どうしよう…ラーヴァさんが帰って来たらまた幼児退行しちゃうの⁉痛っ‼」
ゴロゴロと転げ回ってテーブルの脚に頭をぶつけて悶絶するユウリ。
「ううっ痛いよぉ。と、こんな事してる暇は無い!とにかく落ち着いて考えなきゃっ絶対ラーヴァさんが何か魔法を…ううん呪いかも!相手が幼児化する呪い…無いか。冷静に、そう冷静にビークールだ!ラーヴァさんが美人だからいけないのかも。ラーヴァさんをあまり見ない様にして会話をすればきっと大丈夫だよね!でも、そんな事してたら仲良くなれない…ラーヴァさんと仲良くなって絶対ドラゴンに触らせて貰うんだ!そしていつかは背中に乗せて貰って夢の遊覧飛行 を体験したいっ‼」
夢想、妄想、願望。
欲望に忠実なユウリはドラゴンに乗った自分を想像しながら、いつの間にか夢の中に旅立って行った。
3歳児にはお昼寝が必須です。
「り…ユウリっ これユウリ起きぬか!こんな床で寝おってっ、風邪をひ…く?クククッ!ユウリその顔は何じゃ⁉」
森から帰って来たラーヴァに起こされたユウリの顔は、ウッドテラスの床板の木目ラインが頬っぺたにくっきり付いていた。まるでラーメンに入っているナルトが頬に貼り付いているようだ。
バ〇ボン?
「ん、もっと飛んでいたいよ……ラーバ…しゃ… あれ?ラーヴァさん⁉」
「ほほっ ユウリは妾に乗っていたのかえ?豪気な子じゃ。ユウリが良い子でおったらいつか乗せてやろうかの?」
「えっラーヴァしゃんほんと⁉」
「そうさの、今度火山にある妾達の里へ来るか?先ずは竜に慣れないとな。それにユウリが良い子でおったら、と言ったであろ?」
「あいっ!良い子でいましゅ‼」
お昼寝前に悩んでいた事などキレイサッパリ忘れたユウリは舌足らずな幼児言葉で返事をして上機嫌である。
「おいッ俺の事忘れてないか⁉はあぁ疲れた~」
寝ボケていたのとラーヴァの言葉に有頂天になっていたユウリは、ラーヴァの後ろで倒れ込んでいるシリウスに気が付かなかった。
シリウスは小枝や枯葉を体にくっつけて足元の毛も泥が跳ねている。
「ど、どうしたのそんなに汚れちゃって!ああ足が泥だらけだね。そのまま家に入らないでよ」
「お前なあ…何気に俺の扱いひどくなってねえか?ラー婆に夢中ってかぁ」
「ほほほ 妬くな拗ねるな。駄犬よ、もう一度小石を投げてやろうかの?」
「い、いやもう十分ですラーヴァさん。それよりほらっアプチェだ!ユウリに食わせてやるんだろっ」
一瞬ラーヴァの目が光ったがシリウスが差し出したアプチェを見てニコリと微笑み「次は無いぞえ」と言いながら真赤に熟れたアプチェを受け取った。
皮を剥いて貰って食べたアプチェは凄く甘かった。テニスボールほどの大きさで皮も果肉も真っ赤だった。バナナの様にねっとりして白桃の様に香り高く瑞々しい甘さ。
シリウスは8個も採って来てくれたので、シリウスにもあげようとしたが採りながら食べたと言う。それならとラーヴァに半分渡そうとしたが笑って受け取らなかったので二人に感謝をして幼稚園かばんに入れた。後で冷蔵庫にしまってまた明日食べようとユウリはニンマリした。
「ところでユウリ、近いうちに街へ行く予定はあるかえ?」
「街?うん、行きたいでしゅがシリューがまだシリューになれないから行けましぇん。シリューがシリューになるのは1ヶ月かかりゅみたいだから、そしたらお買い物に行きましゅ!あっ…でも私もシリューもお金無いでしゅ、一文無しでした…」
「シリュー?ああこの犬が人間に変化出来る様になるまでは街へ行けないのじゃな?そしてお主らは金が無いと言うのじゃな?」
「俺は前世の物を何も持たされずに転生したし、ユウリは前世の異世界の物が少しある様だが、こっちの人間に見せたり売り捌くのは許されていないからな。まあ森で獣を狩ったり、貴重な薬草なんかも採って街へ持って行けば金になるだろうから、少しづつ集めていくさ」
「ふむ。駄犬の頭は鳥じゃったか。お主本当に人間だったのかえ?街へ行くにも途中で宿をとらねばなるまい?さらに街に入るにも金は必要だと思ったが違ったかえ?」
「うぐっ…なら夜にでも街の壁を飛び越えるさ。フェンリルになれば造作も無いからな」
「はあ… のうユウリ、今からでも遅くは無い。この鳥頭の駄犬を捨ててきやれ。代わりに妾が主を守ってやるぞ」
「何だとッ⁉俺のどこが鳥頭だっ‼」
「シリュー鳥さんに変身するの?鳥も良いけど私はやっぱりモフモフのフェンリルが良いなあ」
「この鳥犬!子供を乗せたフェンリルが街に入るのを誰かに見られたら如何する?ユウリは目立ってはいかぬのでは無いか?お主は本当に幻獣フェンリルなのかえ?フェンリルとはもっと賢いと思っていたが…ああ中身が残念なのじゃな」
ラーヴァにバカにされてシリウスは唸り声をあげたが、顔を上げた瞬間ラーヴァに鼻先を扇子で叩かれて悶絶した。
それを見て痛そうだな、とは思ったがラーヴァの言う通りだったので 見て見ぬ振りをするユウリなのであった。
「その駄犬は放っておいて、ユウリどうじゃ妾の里へ来てはみないかえ?人間どもには妾達の鱗や爪が喉から手が出る程に大層なお宝なのだそうだ。里へ来ればそんなモノはそこらじゅうに落ちているゆえ、いくらでも持って行くが良い。なに、街へ行き金に替える時には妾も付いていってやるから心配せずとも良いぞ」
貴重なドラゴン素材がゴロゴロ落ちてる?拾い放題ですって奥さん聞きました?
潮干狩りならぬ竜鱗狩りですか‼
「あいっ!ユウリはラーヴァしゃんのお里に行きましゅ!いつ行きましゅか?今からでしゅか?シリュー行くでしゅよっ‼」
可愛らしい幼女の目がキラキラ輝いているのを誰が責められようか。
異世界において、レアな素材と言えばドラゴン‼
ああ!やっと異世界ファンタジーぽくなってきた!とユウリは内心ワクワクが止まらない。
「待て待て!竜の鱗に爪だと⁉そんなモンいったい何処へ売ろうと言うんだ⁉さっきの話じゃないが目立ちまくりだぞっ‼」
「冒険者ギルドに売れば良かろう?」
「冒険者ギルドだとっ⁉よけい目立つわっ‼こんな子供が竜の素材なんて持って行ったら大変な事になるぞっ」
「誰がユウリに売らせると言ったかえ?妾がギルドで売ってやろう」
「何だって?まああんたなら…いやいやダメだ!ドラゴンと言えばS級でもキツイ相手だ。そのドラゴンの素材をあんたみたいな、パッと見若い女が持ち込んだら…」
「そのパッと見若いとは何じゃっ!どうやら躾が足りなかったと見えるの。後で躾直してくれるわっ」
「か、勘弁してくれ…って、そんな事よりもだなっ」
「大丈夫じゃ」
「だからっ!冒険者登録もしていない女がいきなりドラゴンの素材を持ち込んだって買っちゃくれないし、それどころか出所を追求されて下手すりゃ捕まるぞ!」
「冒険者登録ならしておるゆえ、大丈夫じゃ」
「誰が?」
「妾じゃ。だから何の問題も無い」
「いやいやちょっと待て!あんたが冒険者だと⁉ドラゴンのあんたがギルドに登録してるって言うのか⁉」
「だからさっきからそう言っておろうが」
「はあ……ちなみに等級は?」
「SSSじゃが?」
「………もしかしてあんた【深紅のラヴィ】か?」
「良く知っておるの。人間どもには昔そう呼ばれておったな」
「…ずっと憧れていた【深紅のラヴィ】があんただったなんて……!バカヤロウッッ!俺の青春を返せええぇっ‼」




