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18話: 美しすぎるお姉さんと番犬





ユ…リ…ユウリ…

『ユウリ起きろっ!』


モフモフがいない、いやフェンリルがいない寂しいベッドで爆睡していた頭の中にシリウスの声が響いてもユウリは毛布を抱えて羊の国から戻って来ない。


(モフモフメエメエモフモフ~羊しゃんもモフモフ~こっちへおいで~良いではないか良いではないか愛い奴じゃの~♪)


『ユウリ!ドラゴンが来たぞ‼早く起きて出てこいっ!』


パチッと音が聴こえるくらいの勢いでユウリの意識は覚醒した。夢の国の羊さんとのモフモフ天国は綺麗さっぱり断ち切って起き上がった。


「ヤバッ寝坊した!今何時?9時⁉どうしよう!と、とにかく着替えなきゃっ!ドラゴンさんにすぐ行きますって伝えてシリュー‼」


慌てて由理の七五三ドレスに着替えようとアタフタしていると、再び頭の中に声が響いた。



『慌てなくとも良い。少し早く来すぎたのは妾の方ゆえ、ゆっくり支度をするが良いぞ』


シリウスだと思ったら賓客のドラゴンさんの声だった。そんな事言われてもゆっくり支度なんて出来る筈もなく急いで顔を洗い、ドレスの後ろのボタンを留めようとするのたが焦れば焦る程上手く行かない。

それでも何とかボタンを留め終えて髪を結うのは諦めて後ろに流した。


「よしっ!」


気合いを入れてから急いで外へ向かった。



勢い良く玄関を開けて庭先へ走り出したユウリはもはや持ち芸とも言える階段落ちをやらか…さなかった。


「大丈夫かえ?ゆっくりで良いと言うたであろう?女子の支度には時間がかかるのは知っておるでな、妾もそこな犬と『犬じゃねえ!フェンリルだ!』話をしていたからの」



転げ落ちそうになったユウリを抱き上げたのは、深紅の髪を緩やかに纏め上げた年の頃22~3の超絶美女だった。風に揺れるほつれ毛がユウリの頬を擽っている



「あ、ありがちょうごじゃいましゅ…あの、どちや様でしか?」


生前、死後含めてこんな美女にお目にかかった事はない。更には抱き上げられて超至近距離で密着しているなんて…死んで良かった生きてて良かった!

ポーッとなって目を逸らす事も出来ず、言葉が幼児退行している事にも気付かない。



「うふふ これそんなに眼を開いていては目玉がこぼれ落ちてしまうぞ?ほんに可愛い童よの」


言われてユウリは慌てて両手で目を押さえてパチパチと瞬きをした。それをまた「可愛いの」と頬ずりされて硬直したユウリを抱いたまま、テラスの椅子に座ろうとしたが小型化したフェンリルに唸られて苦笑しながら向かいの椅子にユウリを下ろした。


「ホホッ 悋気かえ?『違うッ』そんなに警戒せずとも良い。妾は犬の主に挨拶しに来ただけじゃ。ただあまりに幼く可愛らしいのでな妾の子にしたくなったくらいかの?」



「グウオオッ」


シリウスが人語ではなくフェンリルの唸り声で威嚇している事にびっくりして美女の呪いゲフン魅惑から覚醒したユウリは、椅子から飛び降りてフェンリルにしがみついた。



「どうちたのシリュー?お客しゃまに怒ったらメッでしゅよ?」


シリウスはユウリの言葉に何とも言えない顔をして、自分の後ろにユウリを押しやった。


「なあ、お前は興奮したり緊張するとお子様言葉になるのは知ってるが、脳ミソまでお子様になったのか?こいつは今お前を自分の子にしたいっていったんだぞ?ユウリはドラゴンの子供になりたいのか?」


ん?今シリウスは何て言った?


「ドラゴンの子供になりゅ?誰が?」


「お前が!」


「何で?」


「だーっもう!だからこいつの子供になりたいのか?」


「えっ?こんな綺麗な人がお母しゃんになりゅの?お母しゃんはかわいしょうでしゅよ。お姉しゃんです‼」


「じゃあお前はドラゴンの妹になる気か⁉」


「何で?」


「だからな…はあユウリ、こいつが誰か知ってるのか?」


そうだった‼ここには自分以外人間は居ないと言ってたけど、この綺麗な人は誰?人間と関わってはいけないと言われていたのを想い出してユウリは青くなった。

チラッと椅子に座って微笑んでいる美女を見て、おずおずと今更ながらの質問をした。



「あ、あのシリュー?このお姉しゃんはどちら様でしか?」



「…ンだ」


「聞こえないでしゅよシリュー。もっとおっきい声で教えて下しゃい」


「ドラゴンだ」


「だりぇが?」


「こいつが」


「お姉しゃんが何でしゅか?」



「ああっもう‼だから、ここに座ってニヤニヤ俺達の事をバカにする様に笑っているハデな女がドラゴンなんだよ‼」


「…シリューお熱ありましゅか?この綺麗なお姉しゃんがドリャゴンなんてお目目大丈夫でしゅか?そんな冗談言ってる場合じゃないでしゅ!人間しゃんと関わっちゃメッってレイラに言われてたでしゅ!どうちましょ……」


こっちに向かって笑いながらヒラヒラと手を振る、謎の美女をチラ見したユウリは、ん?ともう一度今度はしっかりと見つめた。

にこやかに手を振るその白い腕にはキラキラと光るスパンコールの様な鱗が…


「ウリョコッ⁉」


美女の白く細い腕には確かに鱗が何枚か張り付いているのが見えた。


「ウショッ⁉ましゃかホントにお姉しゃんはドラゴンしゃんでしゅか?」



「ほほっ ほんに可愛い地主殿じゃ。お初、では無いな。先日は失礼した。改めてご挨拶申し上げる妾は当代竜王ラーヴァと申す炎竜じゃ。この地にある火山は一族が代々産卵をし、そして永き眠りにつく場所でもある。今までは妾と泉に住む精霊王がこの土地を守ってきたのだが、この度この土地の所有者つまり地主が決まったと上の方から知らせがあったのでな。こうして訪ねて来たのじゃが、地主殿がこんなに可愛らしい童女とはのう。番犬もおるようじゃし心配なさそうだが、何かあれば妾に言うが良い。妾は地主殿が大層気にいったゆえな」


「だから俺は犬じゃねえって言ってるだろっ」

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