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百合香ちゃんは不遇

 さて。問題をあげるとしたらきりがないが、まず大前提正しておかなくてはいけないことはある。それは、今僕の膝の上でふて腐れている朱里(あかり)と、その朱里の手によって気絶してしまった百合香(ゆりか)ちゃんの服装についてだ。


 すでに街は目と鼻の先のあるぐらい近づいて来た。もし街に入るのに検問かなんかあった場合は、僕の刑務所行きは確定したと言ってもいいだろう。

 とりあえず服を調達したいところなんだが、どうしたものか……。


「朱里さん」

「なんですかお兄ちゃん?」


 先程の事が尾を引いているのか、少しだけ素っ気ない態度を取られる。別に僕は悪くないのに。


「その姿をどうにかできないんですか?」

「また何無茶を言ってるんですか? 無理に決まってるでしょう」


 わかってはいるが、そうもはっきり言われると頭を抱えたくなってしまう。

 どうしよう。僕の服装だってかなりの軽装だ。いままで触れては来ていないが、元々こちらに来る前は夏だった。そして僕は制服を着用していたので、夏服で比較的薄着だったのだ。なので、僕の服を着せてあげるということができない。


「萩野さん。検問なんかないですよね?」

「……たぶんな」


 不穏になる間の開けかただった。


「本当に大丈夫ですよね?」

「男なんだから腹括りな」


 既に手遅れなんですか!?


 萩野さんは既に無心になって車を運転している。僕はと言うと、街の方向を見定め、警察などがいないかを心配することしかできなかった。

 どうかいませんように、と何度願ったかはわからない。しかし僕の願いは届かなかった。


 街の入り口っぽいところにパトカーを停めた警察が立っていた。寒いからダウンコートを羽織っている。そして見た目は、もちろん幼女だ。


 やばい!


 本能的に隠れようと車内であたふたとするが、あいにくと狭い車内に身を隠すスペースなんてない。そうこうしている間にも検問に近づいていく。


「萩野さん! いっそのこと下ろしてーー」

「もう遅い」


 目の前で警察棒で止まるよう指示を出され。トラックは停止する。


 終わった。僕の人生はこんなところでロリコンの疑惑をかけられたまま終わるのか……思えばさんざんな人生だった……。

 もはや走馬灯のように記憶が思い出される。まだまだやり残したことがいっぱいあったんだけどな。


「萩野さん。サイドガラス下ろしてください」

「はいよ」


 朱里の唐突なお願いによって、僕側のサイドガラスが下り、外の冷たい空気が流れ込んでくる。


「百合香ちゃん起きてくださ~い」


 今度はペチペチと百合香ちゃんの頬を叩き始めた。気絶していた百合香ちゃんは、寝起きのような眠気眼で目を覚ました。


「朱里ちゃんに殺された夢を見た」


 まあ間違ってはいない。


「今から社会的にも殺しますよ~っと」


 僕はこの日の光景を生涯忘れることはできないだろう。あそこまで残忍なことは、僕には絶対に無理だ。


 朱里は百合香ちゃん腕を引っ張って、そのまま外に放り投げた。


「ちべた!」


 顔面から雪原に突っ込んだ百合香ちゃん。


「何をすんですか朱里ちゃん!」


 がばりと起き上がり朱里に物申すが、とうの朱里は僕の足元に避難している。これなら外からは見えない。


「百合香ちゃん。あとは頑張ってくだせ~」

「何を?」


 朱里の言葉にキョトンとしていた百合香ちゃんだったので、僕が指差しで示してあげる。指先にはもちろん、唖然と百合香ちゃんを見ている警察幼女がいる。

 百合香ちゃんの顔が真っ青になっていた。


「公然猥褻行為者発見!直ちに捕縛ぅぅ!!」

「朱里ちゃんのば~~~かぁぁぁぁ!!!」


 泣きながら逃げていく百合香ちゃんに、それを走って追いかける警察。検問場には僕たちだけが取り残された。


「さあ参りましょう!」


 こいつ。露骨に元気になりやがった。

 百合香ちゃんがいなくなったことで、僕の膝の上はまた朱里の特等席となった。それが嬉しいのか、たんに百合香ちゃんを追い出したのが嬉しいのかわからなかったが、その後の朱里は上機嫌だった。

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